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第35話  新たなる道


 35.36話。掲載順を間違えました。









「そんな訳であたしは強いレディにならないといけないのよね〜」


「強さか……ニーチェ姉様と イズヴィ姉様を見習えば いい」


 ここはデグネの研究室。陰鬱とした雰囲気だけど無駄に煌びやかな部屋よりも心地よい。

 だから用が済んだはずのロクシィとイズヴィも未だにここに居座っている。


「へぇ〜イズヴィって強いの?」

「あっしはもう強くないっすよ。……ニーチェは……あいつはどうなんすかね?最近はかなり制限かけられてるし、なにより基本がアホで構成されてるっすからね」


「そんな事ありません イズヴィ姉様と ニーチェ姉様に 魔法で右に出る者は いませ——アタシしかいません! アタシ達は三身一体です! それとニーチェ姉様は 賢いです」


「んー、でもニーチェはアホっすよ?アホ過ぎて簡単な仕事しか与えられてないんすよ?こないだも定時連絡の時アサシンバグに『お前の半分はどうなっている?』って小言を言われたんすから、それに『まぁ姉のお前が二倍働けば済む事だから多くは言わんがな』とかぁ!ほんっ……とにアホなんすよ!」



 何だろうか?ニーチェってタウロスと一緒にいたイズヴィそっくりの女の子よね?イズヴィとあまり仲良くないのかしら?

 



「強さを求めるなら才能の塊でもある俺を見習うのはどうだ?」


 横からお茶汲みのデグネが顔を出してきたけど……見習うべき場所が見当たらないわね。



「……ねぇイズヴィ、あたし魔法を使いたいんだけどどうやってたら使えるか教えてくれない?」


「あー、お前歳いくつっすか?」

「立派なレディに見えちゃうでしょうけど13……もうすぐ14歳よ。意外でしょ?」


「まんま年相応っすよ。それと十三年間生活してて魔法を使えないなら使わない方がいいっすよ」

「どうして?」


「お前には魔法が必要ないとみなされてる。今の時代も魔法なしで生活してる人間なんて五万といる。あっしだってそうっすよ。魔法なんて使えない方が幸せなんすよ」


「姉様!? それは つまり アタシとの生活は 何事にも代え難い 甘美なひと時 という訳ですね!」

「え?あーうん。え——ぁああ……うん?」


「いずゔぃでぇざまぁぁあ!!クンカクンカざぜでぐだざぃぃいいい!!」


 ロクシィがイズヴィに抱きつくいつものパターンに入ってしまったから落ち着くまで待つしかない。


……


「……つまり使おうと思えば使えるわけね?」

「今まで必要なかった事をする必要はない。人間なんてたいして寿命もないんすから時間の無駄っすよ」



 む〜、どうやらイズヴィは魔法の使い方を知ってそうだ。でも教える気がない。

 どうにか説得したいけど……


「無駄って言うならイズヴィはいっつも池に石ころ投げてるじゃない。あれこそ無駄よ。何の為にしてるの?」


「あれば《水切り》っすよ。パチャパチャ跳ねて気持ち良いんすよ」

「あ……水切りだったんだ……跳ねてるとこ見た時ないから……池を埋め立ててるのかと——ごめんなさい」



 イズヴィの顔が紅潮していった。なにか悪いこと言った気もするけど……事実しか言ってない気もする。


「あー!?お前今なんて言ったっすか!?表へ出ろッ!」

「表って……庭?」


「そうっすよ!池の前で待ってろ!」




……


 池にいる鯉のような魚を眺め待つ事15分、

 フンス!フンス!と鼻息を鳴らしながらイズヴィがやってきた。


「身の程知らずの 淫魔め 逃げずに来た事だけは 褒めてやる まずは跪け」

「こ、こんなに投げないよね?父様にバレたら俺が叱られるんだから……」


「安心しろっす。全部の石で水を切ってやるっすから」

「安心出来ねぇ!」


 後ろにはオラついたロクシィと……石ころ沢山抱えたデグネ坊ちゃん。



 あたしになにを見せてくれるのかと思いきや、手に収まるぐらいの形の良い平べっこい石を握り精神を統一し


「——シュ!」


 肘を振って手首のしならせ投げられた小石は横回転しながら


 ポチャン……



「デグネ……次……」

「は、はい!こちらはどうでしょうか?」

「んー、悪くないっす。この石ならいけそうな気がするっす」


 なにがあったか知らないけど日に日にデグネはイズヴィに頭が上がらなくなってるわね。



……


 その後もイズヴィの小石が水を跳ねる事はなかった。



「今日は水の妖精さんがご機嫌ナナメだったんすね。どんな石でも水切りをするのは不可能な日。そういう日が多々あるんすよ」


 なに言ってるのかしら?

 でもその話しが本当なら面白そうね。


「あたしも一回挑戦——もう石がないわね。これでいっか」


 池の周りにある拳大の不恰好な石を手に持つ……と、イズヴィとロクシィが笑った。


「姉様 淫魔は本当に 馬鹿のようです あんなの 魔法なしで 跳ねる訳ない です」

「ブレドリパがよく言ってる『笑止っ!』とはこの事なんすね。あっしは笑いを堪えるのに必死っすよ。ドボンといくっすよ。ドボンと」



「別に百回も水切りする訳じゃないからこれで十分よ」

「はっ!水切りを舐めるんじゃねぇっすよ!その石で水切り出来たら魔法の使い方を教えてやるっすよ!その代わり跳ねなかったら二度と水切りを馬鹿にするなっす!」


「えぇ……すっごく怒ってる……でも、言ったわね〜」



 肩をねじり肘を曲げ指先で回転を加えて水面スレスレに投げつける。


 ボシュ ボシュ ボシュ ボシュ ドン


 石は四回跳ねた後、池の向こうに辿りついた。


「どうかしら?」


 あたしがドヤ顔で振り向くと二人とも顔を覆っていた。




「んー、ちょうどなんも見てなかったすけど、なにが『どうかしら?』っすか?ってか……なんかしたんすか?あっしは疲れたからお団子食べて眠るっすよ」

「アタシも お供します!  ……まだいたのか淫魔 もう帰っていいぞ しっ しっ あっち行けっ!」



「二人ともレディのビンタを喰らいたいのかしら?」


「正体見せたな 暴力淫魔 無抵抗な奴に強気に出れる その在り方は さながらジュデッカ  淫魔——お前は女ジュデッカだ!」

「ロクシリーヌ……あんた言っていい事と悪い事があるでしょう!」


 あたしが手のひらに息を吹きかけて温めているとイズヴィがやれやれと言った表情をしだした。


「簡単に出来る魔法を使わせてやってもいいけど、その魔法のせいでお前は本当に不幸になるっすよ。何度でも忠告だけしてやるっすけど魔法は都合の悪い出来事をより悪くする道具っすからね」

「大丈夫よ!それよりどんな魔法!?」




「インフェニティドライブ【時間を巻き戻す】魔法っすよ。誰でも簡単に出来るけどマキナしか完璧には使用出来ない。せっかく——んンッ!……まぁ、魔法使って好きなだけ死んで来いっすよ」

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