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第36話  探しものを探して


 レイラは安めのワンピースに袖を通しカツラをかぶり売買所へと向かった。目的は柊心が何かを探そうとしていた事を探すこと……


 用途も効果もわからない白い粉についてだ。



 レイラにとって売買所逃げ向かうのはとてつもない勇気がいる。なにせ昨晩柊心が幽霊によって腕を食べられてしまったのだ。

 しかしそんな事では簡単には引き下がれない。

 そして今は昼時、幽霊は出ないと八重にお墨付きをいただいている。



 入り口から入るとレイラにとってはさして珍しくもない商品が並んでいた。

 店主はレイラを見るなり素っ気ない態度のまま商品を磨いている。


「あの……白い粉について聞きたいですわ」

「白い粉ぁ〜?小麦粉か?私物でない事もないが道具屋で買えよ。そっちのが安いぜ」


 直球勝負のレイラに対して店主の答えは淡白だった。見た目が馬鹿そうな子供だ。お使いに来たが道具屋の場所と間違えた……店主はそう思っていた。


「地下室の大金庫にもありませんの?そこを見せていただける?」

「あ——なんで知っている」


 店主から冷や汗が流れ落ちた。おおっぴらに飾れない商品は地下室にある金庫にしまわれている。

 勿論違法な物も置かれているが幸いな事に違法な商品はアイシャが帰還した時に全て処分している。


 それよりも目の前の少女が何者なのか……国政の関係者か、容姿で騙すつもりならば店主は完全に術に嵌っている。

 間抜けな顔で大金庫のありかを伝えてしまったのだから。




「泥棒さんが昨日の今日で今度は真正面からとか……ちょっと警備なんとかした方がいいんじゃないのぉ?」


「あ……リドヴィアさ——リドヴィアさん」


 裏手から商品を運んできた女性に店主は一度言い淀んだ。


「あ、わたくしと心ちゃんを捕まえた悪い人」

「嘘でしょお?誤解はあったかも知らないけどねぇ、リドヴィアちゃんはお天道様に顔向け出来る事しかしてないの!」


 店主を奥に行けと目で合図したリドヴィアはレイラの側に近寄った。


「リドヴィアちゃんが代わりに聞いてあげよう。どうしてあの粉を調べてるのかなぁ?」

「知りませんわ」


 レイラの嘘偽りのない言葉にリドヴィアはたじろいだ。

 嘘をつく理由がない。つくにしても嘘とわからないように嘘を吐く。これは嘘をつく前提のはず。


 しかしレイラは意味のない嘘をついているとリドヴィアは感じとった。

 感が冴えていればこの時点でレイラの真意に気付く。


『わたくしの嘘を貴女は見抜けない』


 そのような挑発をされている幻覚に陥いる。



「ま、まぁいいよ。でもここは売買所。何も買わずに情報だけ掠め盗るってのはいただけないよねぇ?」

「なにか買えばよろしいんですの?……でもわたくしお金をあんまり持ってきてませんわよ」


「知ってるよぉ。お嬢ちゃんの身なりと態度に書いてあるよ。『近所の食事屋でほんのちょっぴし飲み食いする程度』

ってね。リドヴィアちゃんはこう見えても金の匂いには敏感だから……絶対に外さないよ」


 リドヴィアの言った言葉は事実だ。レイラはポケットには小銭が数枚だけ。


「あ、えと、今あるお金でなんとか教えて欲しいですわ。パパとママにお願いすると心配されちゃいますのよ」

「その顔からして小銭が数枚……ん〜リドヴィアちゃんの感だと銅貨が10枚ってとこかな?答えは一昨日来やがれ。かなぁ。残念だけどねぇ」


 リドヴィアの冷たい態度にプクーっと顔を膨らませながらレイラは手持ちの金貨を10枚テーブルに置いた。


「お小遣いを貰ってからまた来ますわ」

「小銭持って帰ってよぉ。ちっちゃな額でもお金ちゃんなんだから大事に——?  あぇえ!?これ金貨……あいえぇえ!?これ——これ……ちょっと失礼」


 リドヴィアが恐る恐るといった表情で白手袋を身につけて金貨を丁寧に調べ始めた。金貨の中に一目見て理解できる異質な貨幣が混じっていた。

 偽金貨を疑っているわけではない。

 目の前に出された金貨は——他に流通している金貨に比べて重く綺麗すぎた。


「純金貨……久しぶりに見た」

「え!!純金貨!?俺にも見せてください!」


 奥に引っ込んでいたはずの店主が慌てて顔を出した。リドヴィア同様に手袋をはめて形や重さ、匂いなどを確認していく。


「……リドヴィアさん……どうしましょう?」

「どうしょうもこうしようもないよぉ〜。お金を払ってくれるならそれは立派なお客様だよぉ。大事に扱わないとぉ」


 

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