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悪役令嬢の残り六十日、私は牢獄の精神科医でした  作者: 夜凪 蒼


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第三十五話「隣に座るふたり」

残り七日。


二人が揃って来た。


今日は最初から、二人で並んで床に座った。エドモンドが先に座り、ヴィヴィアンが少し離れた位置に——でも以前より近い位置に座った。


「果物の話を聞きました」と遥は言った。


ヴィヴィアンがわずかに赤くなった。「エドモンドが話したんですね」


「すみません」とエドモンドが言った。珍しく、すぐ謝った。「話してよかったか、確認すればよかった」


「……大丈夫です」とヴィヴィアンが答えた。「でも、あとで教えてもらえると助かります、こういうときは」


「わかりました」


遥は二人のやりとりを、黙って見ていた。


ヴィヴィアンが自分の希望を言い、エドモンドがそれを受け取った。すぐ謝り、それ以上の確認はしない。


小さな変化だった。でも確かな変化だった。


二週間前には存在しなかった一往復だ。


「今日は、二人でここに来ることを、どちらが決めましたか」と遥は聞いた。


「——二人で決めました」とエドモンドが答えた。


「どうやって」


「私が今日行こうと言って、ヴィヴィアンに聞きました。ヴィヴィアンが行きたいと言ったので」


「私も行きたかったので」とヴィヴィアンが付け足した。


「そうですか。二人とも行きたいから来た」


「はい」と二人がほぼ同時に言った。少しおかしくて、遥は少し笑った。


エドモンドが遥の笑いを見て、少し驚いた顔をした。「……あなたが笑うのは珍しい」


「そうですか。笑っていなかったですか」


「あまり見なかったです。いつも静かで」


「静かすぎましたか」


「いや——安心できる静かさです」とヴィヴィアンが言った。


エドモンドが少し頷いた。「そうです。静かだから、話せた気がします」


遥はそれを受け取った。


「残り七日です」と遥は言った。「二人はこれから、どうしていきたいですか」


二人が少し黙った。


「……確認の回数を、少し減らしていきたいです」とエドモンドが言った。「ヴィヴィアンに同意を求める回数を」


「それはヴィヴィアンさんへの確認を減らす、ということですか」


「はい。昨日から、一度確認したら止める、ということを試しています」


「やってみてどうですか」


「苦しいです」と彼は正直に言った。「でも、できない感じではないです」


「私は——」とヴィヴィアンが続けた。「意見を言える場面を、一つ増やしていきたいと思っています」


「どんな場面で」


「食事のことから始めようと思っています。何を作るか、自分が決める」


「いいですね」と遥は言った。「どちらも、小さいけど大事な一歩です」


二人が、ほぼ同時に小さく頷いた。


二人が「次に何をするか」を自分で決めた。遥が提案したのではない。二人が話し合って出てきた答えだ。エドモンドの確認行動は、七日で消えることはない。ヴィヴィアンの「消えていく感じ」も、すぐ解決するものではない。ただ、二人が方向を向いている。それが今日一番大事なことだった。


次話:「治らなくていい」

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