6話 そして幼女は愛らしい
「おん……なの子?」
「初めましてお兄さん。ここに何か御用ですか?」
読んでいる最中であっただろう本を持ったまま首を傾げる純白色のワンピースを着た幼女。自分の容姿に無頓着なのか緩いウェーブ状の綺麗な菫色の髪は伸びるままに伸ばされ座っているソファーの上に広がっている。
目元は伸びた前髪でやや隠されていはいるがそれでも彼女の可愛らしさを隠す事は到底不可能だ。神が創り給うたとしか表現できない幼い顔は将来絶世のという枕詞がつく美少女美女になる事間違い無しだろう。
細い手足は彼女の儚さを助長し、何と言っても頭頂部に生えている時折ピクピクと動いている獣耳、あれは反則だろう。世のオタク達が好きだという理由が良く分かる。正直に言おう、天使であると。
もう既に俺の語彙ではこれが限界だ。それだけ彼女の可愛らしさは天元突破していた。もう愛梨といい勝負だろう。おまわりさん俺です。
「あ、ああすまない。いろいろ有ってここに迷い込んだんだ。出口を探していたんだが……」
「出口ですか……すみません、あるにはあるのですが今は使う事が出来ないんです」
申し訳なさそうに首を振る幼女。その仕草だけでロリコンはノックアウトされるに違いない。俺だって愛梨を長い事間近で見続けていなかったらヤバかっただろう。
「因みにその今は使えない出口ってなんなんだ?」
「転移の魔法陣です。これを使えば一瞬で外に行けるのですが、とある理由により今は停止しています」
「その理由を聞いても?」
「……私をここから出さない為です」
衝撃的な言葉に俺は言葉を失った。だってそうだろう? こんな可愛らしい女の子を閉じ込めておくとかどんな鬼畜の所業だよって感じですよ? 日本だったら幼女監禁事件とかで世間を騒がせる事間違い無しだな。
「見て分かる通り私はあなたとは種族が違います。世間では獣人と呼ばれる種族で、私は狼の獣人です」
「獣人だと何かいけない事でもあるのか?」
「いえ、私の場合種族が問題ではないんです」
種族が問題じゃない? それじゃあいったい何が問題なんだ? 可愛すぎる事か? 確かにこんなに可愛い子が街を歩いていたらそれだけで通行人の視線は釘付けになるだろうし悪い奴にも狙われるだろう。んー、確かに可愛すぎる事は問題だな。
「私は【獣】の魔王なんです」
「へぇ~、【獣】の魔王なのか~。……ん? 魔王? 魔王って、あの魔王?」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? こんな可愛い子が魔王!? てことはこの子が監禁されてるのって魔王だからって事? 予想の斜め上飛びすぎだろ!
「驚かないんですね」
「いや、いやいやいや、だいぶ驚いてますよ? てか驚きすぎてどうリアクション取っていいのか分からないくらいには驚いてますよ?」
てことは、この子があの俺達を召喚するように指示した偉そうなおっさんが倒せって言ってた存在なの? え? こんな可愛い子殺せとか馬鹿なんじゃないの?
「君みたいな可愛い子が魔王って言われて驚かない人間はいないと思うよ」
「か、可愛いってそんな……照れますよ……私なんか地味で本を読むくらいしか取り柄がないですから。それに私が魔王になったのはつい最近なんです」
「そうなの?」
「はい、魔王は世襲制なんです。先代の魔王が死亡すると自動的にその子供へと魔王の刻印と位が移譲されます」
「てことは君の両親は……」
「はい、もう亡くなっています……」
両親を思い出したのか顔に影を落とす幼女。それでも彼女の可愛らしさが曇る事はないのだが……。って俺の馬鹿! もうちっとデリカシーってものをだな! そんなんだから小学校の時の通知表に少し考えて発言しましょうなんて書かれるんだよ!
「す、すまん! 嫌な事を思い出させた」
「いえ、確かに悲しい事ですけどもう大丈夫ですから」
上半身を九十度倒して謝る俺の姿に悲しそうに首を振る彼女。それだけで俺の胸は締め付けられるような思いだった。
「だけど……」
「でしたらしばらく私とお話してくれませんか? 誰かと話すのは久しぶりなんですよ」
「けど俺今君の前に出てったら通報されるの待ったなしな姿なんだけど……」
「そうなのですか?」
「ああ、ここに来るまでに俺の服はほとんど無くなっちゃってな。今辛うじてズボンが残ってる程度なんだ」
正直マジでこのかっこで彼女の前に出ろとかかなり恥ずかしいんですけど! 日本だったら即座にピーポー沙汰ですよ。お巡りさんに掴まって牢屋にブチ込まれますよ。もし今の俺と同じかっこの奴が幼女に行かづいてたら迷わず通報する自信があるね。それだけ変質者って事だよ。
「では少し待っていて下さい。お兄さんに合いそうな服持って来ますので」
そう言って本を置くと彼女は部屋にあるクローゼットへと歩いていく。腰の辺りから生えている髪と同じ色をした尻尾がフリフリと振られていてとても可愛らしい。しかし俺は尻尾の愛らしさよりも辛うじて床に着かない程度の髪をいつ踏んで転ばないかとハラハラしていた。
やがて彼女はクローゼットの中から灰色の長袖のシャツとズボンを持って来てくれた。どう見ても彼女の着るサイズではないので恐らくは父親の物だろう。
「すいません、父のしかないのですがこれでいいですか?」
「ありがとう助かるよ」
腕だけ伸ばして彼女からシャツとズボンを受け取るとすぐに扉の陰に隠れて着始める。着なれた服と作りが同じだったので着るのに苦労することはなかった。
俺はズボンを腰回りにある紐で縛ると今まで履いていたズボンから魔石を取り出し、新たに履いたズボンのポケットへと移し替えた。
「サイズは大丈夫でしたか?」
「ああ、特に問題も無かったよ」
「そうですか、それではソファーに座って少しお待ち下さい。今お茶淹れますから」
そう言って尻尾をフリフリさせながらキッチンへと歩いていく。可愛い。
いやね、ほんとに可愛すぎる! 俺ロリコンのつもり無かった……あー、良く考えたら愛梨の容姿はちょっと幼いかなー。胸はともかく。それはともかく今の俺は世のロリコン共の気持ちが分かった気がする。あれはダメだ、可愛すぎる。それしか形容できん。
そんな犯罪者一歩手前の事を考えながら俺はキッチンに立つ彼女の後姿を眺めていた。
はい、主人公が壊れましたw
もう傍から見たら犯罪者一歩手前ですね。




