55話 そしていざダンジョンへ 4
だいぶ間が空いてしまいましたがなんとか更新できました。
俺達は【フルアーマーセンチピード】から助けた冒険者パーティ“誓いの剣”を第七階層の転送陣へと送り届けた。
当初彼等は魔物から助けてもらった上に護衛までしてもらう訳にはいかないと言っていたのだが、大百足との戦いで彼等の装備はボロボロ、ポーション等の薬品も底を尽き、ウィオの回復魔法で傷は癒えたといっても流れ出た血液までは戻っていない満身創痍と言ってもいい状態であった。そんな状態ではいそうですかと彼等を送り出しても転送陣に辿りつくまでに魔物に殺されるのがおちだろう。
それに気付いていたウィオと愛梨が頑なに送り届けると主張し、俺としても折角助けた人たちが死んだら寝覚めが悪いので賛成した。
転送陣までの道中、襲い掛かってくる魔物達を俺達が片っ端から始末していき、捕食していない魔物の魔石は“誓いの剣”のメンバーに気付かれないように喰わせてもらった。おかげで先ほど倒した【フルアーマーセンチピード】に加え、新たに【ストーカーカメレオン】と【スナイプビー】、【トレント】の4種の魔物に変身できるようになった。
そしてようやく転送陣まで辿り着くと“誓いの剣”のメンバーはリーダーを残して地上へと戻っていく。
「今回は本当に助かった、ありがとう」
「気にする必要は無い! 民が困っているのをこのギュスターヴ・フォン・ゲオルギウスが見捨てるはずが無い!」
「と言うことらしい、あなたも早く地上に戻って休んだほうがいい。仲間が待ってるぞ」
ポーズをキメながら言うギュスターヴに若干苦笑しながら「そう言って助けてくれるのは貴方ぐらいですよ」と言って俺達に一つの青空色の石を差し出してきた。
「これはスキル石か?」
「ああ、助けてもらった礼だ」
「別に礼が欲しくて助けたわけじゃないんだが……」
「そう言うな。俺は助けてもらって本当に感謝してるんだ。あんた達のおかげで俺は自分の命ばかりか仲間を喪わずに済んだんだ。スキル石一つで礼になるとは思ってないが今はこれしか持ち合わせが無くてな、受け取ってくれ」
そう言って俺の手にスキル石を握らせる。
「そのスキル石は今回の探索で手に入れたばかりでな。どんなスキルが入っているかは分からないんだ。いいスキルが入ってるといいな」
“誓いの剣”のリーダーはそういい残すと転送陣を使って地上へと戻っていった。
「愛梨、悪いんだけどこのスキル石を鑑定してくれるか?」
「おっけー。まかせて」
俺からスキル石を受け取った愛梨が【鑑定】を発動させる。見た目の変化は一切無いが、きちんと【鑑定】はスキル石の中身を愛梨へと教えてくれた。
「どうやらこれの中身は【火魔法】みたいだね。どうするのこれ。融ちゃん使う?」
「いや、俺は魔力が一切ないからスキル石は使えないし」
魔力のない俺は論外として、選択肢は3つなのだが……。
1.ギュスターヴ。基本的に物理主体の前衛型で【身体強化魔法】が使える。刹那の判断を要する前衛なので攻撃系の魔法の必要性は低めだろう。
2.愛梨。【勇者】スキルに含まれる【身体強化魔法】【光魔法】【雷魔法】等の魔法があり、【剣聖】【聖剣使い】等の前衛向きのスキルもある前衛後衛どちらもこなせる万能型。すでに2種類の攻撃系魔法があるので新しい攻撃魔法の必要性はこちらも低いだろう。
3.ウィオ。【治癒魔法】【風魔法】が使える後衛型。現在使用できる攻撃魔法は【風魔法】のみなので風が効かない敵と相対したときのため新たな攻撃魔法の必要性は高いだろう。
「ウィオがいいんじゃないか? 風が効かない敵もいるだろうし、この辺の敵なら火の方が有効だろうし」
「私もそれがいいと思うぞ」
「いいんですか?」
「私もウィオちゃんが使ったほうがいいと思うよ!」
申し訳なさそうな表情を浮かべるウィオに力強く断言する愛梨がスキル石を手渡し、その小さな手に握らせる。
「ありがとうございます。使わせてもらいますね」
申し訳なさそうにしながらウィオは手に握ったスキル石に魔力を流して中のスキルを習得する。空になって透明となったスキル石をウィオは大事そうに【秘密のポシェット】へと仕舞い込む。
「よし、それじゃあ先に進むか」
「はい! 立ち塞がる敵は新しく覚えた【火魔法】で焼き払ってやりますね!」
「おう、よろしく頼むぞ」
フンス、と力強く言うウィオに自然と笑みがこぼれる。愛梨もギュスターヴも同じ様に微笑みながらウィオを見ていた。
その後も俺たちは第7階層を歩いていく。【標の光】のおかげで階段までは一直線に進める上、ビートル種は接近してくる際に大きな羽音がするのですぐに存在に気がつくことが出来る。
後はスラッシュビートルやアーマービートルは最初の攻撃を俺がアイアンゴーレム化することによって防ぎ、出来た隙を愛梨やウィオが魔法によって始末していく。
やはり昆虫は火に弱いのか愛梨の光や雷の魔法を受けたときよりもウィオの火の魔法を受けたときのほうが苦しみ方が激しい気がする。
キャノンビートルに関しては俺の体では盾にもならないので若干の注意が必要だが、それでも【火魔法】を覚えたことによって戦闘の幅が広がった俺たちの敵ではなかった。
そして俺たちは第7階層を踏破し、第8、第9と順調に進み、ようやく第10階層までたどり着いた。
第10階層、第6~第9階層と同じく森林型のフィールドだ。鬱蒼と生い茂る木々に視界を遮られながら進まなくてはならず、【標の光】がなければ慣れていない俺たちなんか速攻で迷子の遭難者だろう。
魔物も相変わらずアーマービートルとスラッシュビートル、キャノンビートルばかりで、稀にフルアーマーセンチピードと出会うだけで目新しい魔物はいないようだ。まあそれだけでも普通の冒険者からしたら十分すぎる脅威なんだろうが。
「にしても甲殻やら角やらかなり集まったな。こんなのいったいどうやって武器や防具にしてるんだろうな」
俺は【無限胃袋】の中に収納されたビートルたちから手に入れた素材へと意識を向けて呟く。どう見ても均一の大きさとは言いがたく、それぞれ大きさにばらつきがある。
アーマービートルの甲殻は分厚い上に重くとても硬い、角もがっしりとしている。
スラッシュビートルの甲殻はアーマービートル程の厚みも重量も硬さもないが、角はとても鋭利な刃になっている。正直【フライングブレイド】といい勝負かもしれない。
キャノンビートルは甲殻に関してはスラッシュビートルとほぼ同じだが、砲身となっている角は結構重く硬い。このまま鈍器として使ってもいいぐらいだ。
フルアーマーセンチピードの甲殻はアーマービートル程の厚さはないが非常に硬い。そして血液や唾液に含まれていた毒を作り出していたと思われる毒腺もある。触れたものを溶かす毒なんかどうやって使うんだか。
「それは簡単だ友よ。鍛冶師には普通の鍛冶師と魔法鍛冶師の2種類がある。普通の鍛冶師は鎚を振るい素材を打ち武具を作っていくが、魔法鍛冶師は鎚を振るいながらも【鍛冶魔法】と呼ばれる特殊なスキルを持っている。鎚を振るい素材に魔力を通し武具を作り上げていく。普通の鍛冶師でも魔物の素材を使って武具を作り上げることは出来るがやはり使える素材は限られるし、武具に魔力が宿らない。しかし魔法鍛冶師は魔力を通した素材を自由に加工し、更に魔力を宿らせることで特殊な力を武具に付与することも出来るのだよ。まあ技量によって差異は出るがね。ドボルザク師は魔法鍛冶師の中でも最高峰の実力を持っているといわれているのさ」
「なるほどなー。あのおっさんそんなに凄い鍛冶師だったのか。ただの孫バカ爺かと思ってた。そんで、毒腺は? こんな触ったら溶かす毒とか武器に使えるのか?」
「ユウお兄さん、それは薬品の調合に必要になってくるんですよ」
「そうなのか?」
「溶解性を持つ毒は薬品を作る際に素材を溶かし込むのに良く使われますからね」
得意気に小さい胸を張って説明してくれるウィオ。とても可愛い。
敵もあまり出てこないので会話に花を咲かせる俺達。時たま現れてももう戦い慣れた敵は脅威になり得ない。
順調に進んで行くと俺たちの前に聳え立つ扉が現れた。
森の中に扉? とも思うが左右を見渡してみると扉からずっと先まで一直線に木が隙間なく聳え立っており、どうやら部屋を形成しているようだ。
この第10階層に限って言えば恐らくだが【標の光】がなくてもこの木の壁へと辿り着けさえすれば何とかなるんじゃないだろうか。
「さて、それじゃあ中に入るか。その前にウィオ、ここの階層主はなんて魔物なんだ?」
「ここの階層主はスケレオンですね。透明になって周囲に溶け込んで襲い掛かってくる魔物みたいです」
「よし、それじゃあウィオを中心にして進もう。3人で周囲を常に警戒して進むぞ。ウィオはいつでも魔法を撃てるように準備しておいてくれ」
物理戦闘力が低いウィオを守るように陣形を組む。俺を先頭にしてウィオの左後ろを愛梨、右後ろをギュスターヴが固めると俺たちは扉を開いて階層主のいる部屋へと入っていった。




