52話 そしていざダンジョンへ 1
更新が遅れて申し訳ありません。この季節クーラーの無い部屋は地獄ですね。執筆作業がまったくといっていいほど進みません。
自宅で熱中症になりそうです。
ここはトレイズの街にあるダンジョンの第1階層。現在俺と愛梨、ウィオとギュスターヴの4人はこのダンジョンの第20階層を目指して進んでいる。
――ザシュッ!!
ギュスターヴの振るう剣の一閃でダンジョンの魔物であるラージラットが抵抗する間も無く真っ二つに斬り裂かれる。
「フハハハハ! どうだモンスター、このゲオルギウス家の長男であるこのギュスターヴの敵ではないな!」
高いテンションと共に振るわれる鋭い剣技はとても弟に豚呼ばわりされていた兄とは思えない。それもそうだろう、つい先程までギュスターヴは呪われていたのだから。
ダンジョンに入る前、昨晩の俺達のやり取りを衣装棚の中で聞いていた(聞かせていたとも言う)ギュスターヴはシャルロットの心の内を聞き、テンションがフルスロットルになっていた。
まあ嫌われていたと思ってた幼馴染が今も自分を好いてくれていると知ったんだからしょうがないだろう。そりゃあ取り戻す為に本気にもなる。
そしてダンジョンに入って初めて遭遇した魔物、ビッグスパイダーというオーガスパイダーの下位種と遭遇してギュスターヴのあまりの弱さに驚いた。
振るう剣は弱々しく、剣が当たっても敵を切り裂く事無く跳ね返される。流石にそれで子供の頃神童と呼ばれていたのか本気で疑問に思っていたのだが、愛梨の【鑑定】によって原因が判明した。
ギュスターヴ・フォン・ゲオルギウス 種族:ヒューマン 男 レベル10
物理戦闘力E(S) 魔法戦闘力E(C)
称号
【剣聖(封印中)】
スキル
【剣聖(封印中)】【身体強化魔法(封印中)】
武技
【剣技:ヘヴィースラッシュ(封印中)】【剣技:ダブルスラッシュ(封印中)】【剣技:オンスロート(封印中)】【剣技:エアスラッシュ(封印中)】【剣技:ファントムエッジ(封印中)】
状態異常
【肥豚の呪い】
そう、呪われていたのだ。
愛梨によると状態異常の欄に【肥豚の呪い】というのがあったと言う。その所為かは知らないが物理戦闘力等や称号にスキル、武技にいたるまでが弱体、もしくは封印されているという状態だった。
これじゃあ弱いのも無理は無い。
そんなギュスターヴに掛かっていた【肥豚の呪い】だが、現在は綺麗さっぱり消え去っている。なんで消えたのかって? それは愛梨が解呪したから。
愛梨の持つ【勇者】というスキルは【魔王】や【大賢者】と同じ様に様々なスキルが合わさって出来ているようなのだ。
【勇者】の中には異世界ものの主人公が持つような【鑑定】に始まり【剣聖】【聖剣使い】【身体強化魔法】【光魔法】【雷魔法】【光反膜】等強力なスキルのオンパレードだ。
この中の【光魔法】のなかに解呪の魔法があり、ギュスターヴの呪いを解くことが出来たのだ。
呪いを解呪してからのギュスターヴは、出会う魔物を片っ端から一刀両断にしていき正直俺達の出番はない。
そしてギュスターヴ本人は自身が呪われていたことなど露知らず、「愛が私を覚醒させたのだ!」と高笑いしながらダンジョンを突き進んでいた。実に羨ましい性格をしている。
「それにしても街の中にダンジョンがあるなんて驚きだね融ちゃん」
「ああ、こんな街中にダンジョンがあって魔物が溢れたりとかしないのかね」
自分でも至極当然な疑問だと思う。いろんな異世界ものの作品でもダンジョンから魔物が溢れ出てくる事なんて珍しくもないのだから。
「違いますよユウお兄さん、アイリお姉ちゃん。魔物が溢れてもすぐに対処できるようにダンジョンのすぐ上に街ができたんですよ」
「そうなの?」
「昔この地にトレイズの街が無かった頃、このダンジョンから溢れた魔物たちは近隣の村や町を度々襲撃して、その度に甚大な被害が出たそうです。それに対処する為に各国はそれぞれから人員を出し合い、完全に中立の冒険者の街であるトレイズの街を作りました。彼等も人事では無かったですからね。そしてダンジョンの上に建てられたこの街はダンジョンの魔物から採れる素材やダンジョン産の魔道具などを売ることで発展していったそうですよ」
ウィオの説明を聞きながら俺達はのんびりとダンジョンを歩く。何せまだ第1階層だ。出てくる魔物ラージラットやビッグスパイダーと弱いし頻度も低い。少し前でギュスターヴが暴れてるだけで十分すぎるのだ。
それにしてもダンジョンと言うのは不思議なものだと思う。ダンジョンの外の魔物は殺したらちゃんと素材を剥ぎ取って後始末して――といろいろやらなきゃいけないことがあるのにダンジョンの魔物は死んだら素材を落として消えるのだ。
まるでゲームみたいとか思っていたがウィオ曰く、ダンジョン内の魔物はダンジョンコアが己の魔力を凝縮して作った存在だから死んだらダンジョンに吸収されるそうだ。しかしなぜ素材を落として消えるのかは未だに謎なんだと言う。まあ剥ぎ取る手間が省けて非常にありがたいけどね。
俺達は戦闘をほぼギュスターヴに任せてダンジョンを歩き続ける。代わり映えしない風景を歩き続けること5日、俺達は最初の関門である第5階層のボス部屋に辿り着いた。
「さて、最初のボス部屋に辿り着いたわけなんだが出てくるボスってなんだっけ?」
「確かコマンダーラットと取り巻きのアーミーラットかヒュージスパイダーと取り巻きのビッグスパイダーだったはずです。強さだけならネズミ達のほうが強いみたいですけど数は蜘蛛たちのほうが多いみたいですね」
「どちらが来ようと私がすることは変わらん、立ち向かってくる敵は悉くこの剣の錆びにしてくれる!」
気炎を上げるギュスターヴ。まあやる気があるのは大事だよね。
俺達は扉を開いてボス部屋の中へと進入する。伽藍とした部屋は広く、俺達以外には何もいない。
「何もいないね」
「だな。俺達の前に誰かが倒して今いないとか?」
俺と愛梨がそんなやり取りをしていると、俺達の背後の扉が音を立てて閉まっていく。ゆっくりと閉まっていく扉が完全に閉じ、部屋は逃げ場の無い密室へと変わった。
すると部屋の中央で魔方陣が展開される。2つも。
あれ? ボスモンスターって出てくるの1種類じゃ……。
――ヂュゥゥゥゥゥゥゥゥゥー!!
――シュアァァァァァァァァー!!
部屋中央の2つの魔方陣から現れたのはラージラットよりも2回りほど大きな2速歩行のネズミ、コマンダーラットとラージラットよりも1回り大きなアーミーラットが10体、そしてビッグスパイダーよりも大きいヒュージスパイダーとビッグスパイダーが30体の合計42体の魔物が現れた。
「なぁウィオ? ここのボス部屋に出てくるボスは1種類じゃないのか?」
「ええっと……、初めて聞きましたが……もしかしたら出くわした冒険者の方が生きて戻れなくて報告が上がってないのかもしれません」
「ジーザス」
「まあいいではないかユウ、要は魔物全員殺せばいいのだろう?実にシンプルでいいではないか」
なんだろう、ギュスターヴが凄い頼もしく見える。
「まぁぼやいてても始まらないしな。とっとと潰して次の階層に行くぞ!」
「おう!!」
「うん!」
「はい!」
――ヂュゥゥゥゥゥゥゥゥゥー!!
――シュアァァァァァァァァー!!
2体のボスが取り巻きの魔物を俺達にけし掛けてくる。個体ごとにバラバラで連携もクソもないビッグスパイダーの群れとは違い、指揮官に率いられた軍隊は数こそクモより少ないが統率の取れた動きで俺達に押し寄せてくる。
「【剣技:エアスラッシュ】!!」
ギュスターヴの力強い声と共に振るわれた剣から真空の刃が放たれ、先頭集団のクモ達を数匹斬り裂いた。
「フハハハ! ユウ、どちらが多くの魔物を狩れるか競争しようではないか!」
それだけ言うとギュスターヴは太っているのが嘘みたいな速度でクモ達に肉薄すると手近な敵から斬り裂いていく。
道中はほぼ全ての敵をギュスターヴに任せていたが流石に今回は量が多いので俺達もそれぞれの得物を手に魔物へと攻撃を始める。
俺は指をブレイドモンキーと同じ鋭い刃に脚をバネへと変化させると、バネの反発力を利用して一気にネズミたちへと迫る。
――ヂュウウ!!
俺がネズミを仕留めるべく爪を振り下ろそうとすると不意にコマンダーラットが鳴き声をあげる。
それに呼応するようにアーミーラットの群れから一匹が前に出て他のネズミたちの盾になって俺の攻撃を一身に受け絶命する。そして俺の攻撃直後の隙を狙いに盾となって死んだネズミの両脇から2体のネズミが飛び出し牙を剥く。
身体を鉄に変化させてなんとか防ごうとした瞬間、2体のネズミは一方は斬り裂かれ、もう一方は風を集めた不可視の弾丸に撃ち抜かれて絶命した。
「悪い助かった!」
「いくらダメージ受けないからって油断しすぎだよ融ちゃん」
「そうですよ、ネズミの換えはいくらでもきくみたいですけどユウお兄さんは1人だけなんですからね」
「悪かったよ」
確かに物理攻撃が効かないからって防御を疎かにする癖はある。危機感が無いんだよな、痛みもないし。
ただ、今はウィオと愛梨がいるからなるべく避けられる攻撃は避けるようにしないとだめか。
にしてもギュスターヴの相手してるクモもそうだけどネズミも数が一向に減らない。一度に出てる量は一定みたいなんだけど、死んだ傍から新しい個体を呼び出してるみたいだな。
「こりゃさっさとボス倒さないと永遠に終わらないな」
「ハッハッハ! 流石に延々と戦い続けるのは辛いものがあるぞユウ! 何とかしてボスを討伐しなければ」
「ああ、愛梨、ウィオの二人はちょっと大技で一気に取り巻きの数を減らしてくれ。後は俺とギュスターヴでボスを殺る」
「うん、任せて! 『集え! 我が力は雷となりて敵を薙ぎ払う! 雷爆!』」
「いきます! 『風よ! 爆ぜる力を解き放て! 風爆!』」
荒れ狂う雷がネズミ達を焼き焦がし、吹き荒ぶ風がクモの取り巻き達を斬り裂いていく。一部効果範囲にいなかった運のいい個体もいるが、大半は効果範囲内で原型を留めないほどに破壊され絶命している。
「とっとと決めるぞギュスターヴ! クモは任せた」
「任せろ! 【剣技:オンスロート】! そして【剣技:ファントムエッジ】!!」
俺はさっきのように脚をバネに変化させると取り巻きが消し飛んだばかりで補充できてないコマンダーラット目掛けて一気に肉薄し、両腕を刃に変化させ交差するように斬りつけ命を奪う。
一方ギュスターヴは武技で一気に加速しヒュージスパイダーへと接近するとその勢いのまま斬りつけ、ついでとばかりにもう1つの武技を発動させた。
発動した武技は振りぬく剣の左右に剣の幻影を生み出し、そのままクモを斬り殺す。斬られたクモの身体にはきっちりと3本の深い斬った後があり、あの幻影にもきっちり威力があることを指し示していた。
ボスの魔物が消滅するとその後取り巻きたちが増えることは無く、すぐに残りの魔物は殺され消滅していった。
ボス達がいなくなった部屋にはドロップアイテムが散乱し、俺達は全員で散らばっている素材や魔石を回収していく。
「何とか終わったな。まだ最初のボスだってのに意外と疲れた」
「まさか取り巻きがボスを倒さないと延々と出続けるとは思わなかったしね」
「だなぁ」
お、スキル石発見。ボスが落としたのかな? 散らばっているアイテムには浅い階層のせいもあって魔石も小さいし素材もあまりいいものは出なかったが1個だけスキル石が出たのは収穫だな。帰ったらギルドで鑑定してもら……いや必要ないか。
「愛梨」
「なぁに融ちゃん」
「このスキル石って鑑定できるか?」
「どれどれ?」
俺の差し出したスキル石をまじまじ眺める愛梨。手に取って青空色の石へと鑑定のスキルを発動させた。
「うん、これの中にはスキル【耐毒】が入ってるみたいだね。かなり毒が効き難くなるみたい」
「なるほどな。これ、ギュスターヴにやってもいいか?」
「融ちゃんが決めたのならいいと思うよ? ギュスターヴも貴族だし、毒に気をつけなきゃいけないしね」
「ウィオも?」
「はい、ギュスターヴさんはこれから大変ですからね」
「さんきゅ。おーいギュスターヴー!」
少し離れたところでアイテムを拾っていたギュスターヴを呼ぶ。両手に素材と魔石を抱えたギュスターヴがのっしのっしと戦闘で見せた速度はなんだったのかというほどゆっくりとこっちに歩いてくる。
「どうしたのだユウ。こっちのアイテムはこれで全部だ」
「ああ、アイテムはダンジョンを出た後で分配するとして、ほれこれやるから使え」
「これはスキル石か? 売ればそれなりの金になるだろう?」
「いいから使えよ。中に入ってるのは【耐毒】、貴族のお前には必須レベルのスキルだろ?」
「いいのかい?」
ギュスターヴの問いに俺達はそろって頷く。
「ありがとう」
スキル石を受け取ったギュスターヴは礼を言うと青空色の石を握り締め魔力を流す。魔力に反応して青空色の光が指の隙間から漏れる。
光はギュスターヴの体へと徐々に流れ込んでいき、やがて光が収まった頃、開かれた掌には無色透明な石が残っていた。
ここまでの主人公達のステータスです。
日嗣 融 種族:ヒューマノイドスライム 男 レベル23
物理戦闘力EX 魔法戦闘力F
称号
【融合者】
スキル
【融合】【捕食】【変幻自在】【無限胃袋】【無限増殖】【物理無効】【状態異常無効】
【変幻自在】リスト
【ブレイドモンキー】【オーガスパイダー】【シャドウバイパー】
【ジャイアントバット】【フライングブレイド】【アシッドトード】
【アイアンゴーレム】【スラッシャーホーク】【オーク】
【パラライズクロウラー】【ピーピングアイ】【コマンダーラット】
ウィオラ・フェンリル 種族:獣人 女 レベル15
物理戦闘力C 魔法戦闘力S+
称号
【魔王】【治癒師】
スキル
【魔王(獣)】【治癒魔法】【風魔法】【魔力消費軽減】【堅牢】
姫島 愛梨 種族:ヒューマン 女 レベル25
物理戦闘力S+ 魔法戦闘力S+
称号
【勇者】
スキル
【勇者】
ギュスターヴ・フォン・ゲオルギウス 種族:ヒューマン 男 レベル13
物理戦闘力S 魔法戦闘力C
称号
【剣聖】
スキル
【剣聖】【身体強化魔法】【耐毒】
武技
【剣技:ヘヴィースラッシュ】【剣技:ダブルスラッシュ】【剣技:オンスロート】【剣技:エアスラッシュ】【剣技:ファントムエッジ】
このような感じです。あの後融は【コマンダーラット】の魔石を取り込んでいます。
それにしても愛梨のスキルの少なさ。いくら【勇者】スキルが万能だからって……。




