46話 そして今日もいざクエストへ
真章突入です
春の日差しが麗らかな今日この頃。いつもの通り俺こと融は最愛の幼馴染である愛梨とマイエンジェルであるウィオと共に冒険者ギルドへとやってきていた。
Eランクの冒険者である俺とウィオ、それと最近冒険者になりたてのGランク冒険者の愛梨の三人でパーティを組み、今日ものんびりギルドのクエストボードの依頼を物色している。
パーティのランクはパーティ内の一番高い者に依存する。そして依頼は一つ上のランクまで受けられるのだ。
安倉の手によって深い眠りについていた愛梨も今ではFランク昇格間近だ。
愛梨が目覚めた後、俺はウィオと愛梨に互いの事を紹介した。最初は不安げだったウィオも、積極的に話しかけてくる愛梨に心を徐々に開いていき、今では愛梨をお姉ちゃんと呼び実の姉妹なのではないかと言うぐらい仲が良い。
「さて、今日はどんな依頼があるのかなっと」
「この【ゴブリン十体討伐(E)】はどうですか? 私も【風魔法】を覚えましたし、そろそろ実戦で試してみたいです」
確かにウィオは【スラッシャーホーク】から手に入れたスキル石で【風魔法】のスキルを習得している。ここ最近の依頼でも援護で使ってきて魔法による攻撃にもだいぶ慣れたみたいだし、ここはゴブリンで試してみるのもいいのかな? 俺と愛梨もいるし、ゴブリンなんぞには指一本触れさせん。
「私も賛成かな。私も融ちゃんもいるからゴブリン程度なら安全に試せるしね」
「そうだな。それじゃ今日は元気にゴブリン狩りと洒落込みますか」
「はいっ!」
両手を握り締めてやる気一杯のウィオの姿に俺と愛梨だけではなく、冒険者ギルドにいる人間のほとんどが微笑ましそうにその姿を見つめている。
可愛らしいウィオは危険は事の多い冒険者達の癒しになっているのだ。
俺のそんな天使なウィオをほっこりした目で見ながらもクエストボードに張ってある一つの依頼を思い返す。
【ケルドミナンド帝国の帝都に発生した怪物の掃討(C)】という依頼だ。募集人数に限りがなく、報酬も参加するだけで金貨三枚と破格だ。それに討伐した怪物一体につき銀貨が一枚もでる。
ちなみに怪物とは安倉の【寄生感染する軍隊】によって変異した住民や兵士達だ。
こっそりとリコレットさんに教えてもらったのだが、依頼主は【ケルドミナンド】の貴族だ。帝都は安倉によって悲惨な状態だが、帝都に滞在していなかったおかげで難を逃れた貴族や住民も大勢いた。
貴族達は挙って帝都を取り戻し、自分の権力を強めようと思ったのだろうが、【寄生感染する軍隊】は安倉が死んだ後も残っており、最後の命令に従ったままである。
つまり、帝国の人間である貴族やその兵士達が帝都を奪還しようと攻め込むも、感染者を増やすだけで被害が増えるばかりなのだ。
そこで帝国以外の国の人間を雇って戦わせればいいという考えに至るのは当然だろう。実際奴等は俺を排除する方向で襲ってきたのだから。
ただ、冒険者は情報が命を左右する仕事だ。それに依頼のランクがCだと言うのに破格の報酬。何かあると思わない冒険者はいなかった。
実際、この依頼は俺が愛梨を救出し戻ってきた三日後、つまり一週間前に張り出されたのだが今現在以来を受けている冒険者は一人もいない。死んだら元も子もないと言うことをみんな分かっているのだろう。
ま、そんな塩漬け一直線の依頼なんぞ放って置いてゴブリン狩りにでも行くとしよう。
「それじゃあ受付で依頼受けてくるから、二人は待っていてくれ」
そう言って俺はクエストボードから依頼票を剥ぎ取るとリコレットさんのいる受付へと歩いていく。
まだ午前中ということもあって受付には大勢の冒険者が列を成して自分の順番を待っている。結構待ち時間がある中、お約束の割り込み者が出ない辺りこの街の冒険者達はマナーが良い。単に美人のギルドマスターに嫌われたくないのだろう。まああくまでもこの街の冒険者は、ではあるが。
「おはようございますリコレットさん」
挨拶と共に俺は持っている依頼票を受付に座るリコレットさんに渡す。
「はい、おはようございますユウさん。あれ、今日はゴブリン狩りなんですか? ユウさん達の実力ならもっと難易度の高い依頼を受けられると思うんですが……」
「今日はウィオメインでゴブリンを狩ろうと思ってるんですよ。もちろんウィオには指一本触れさせる気は無いですが」
「なるほど。それなら確かに丁度いいかもしれませんね。はい受付は完了です、気をつけて行って来て下さい」
「あい」
ペコリと頭を下げるリコレットさんから依頼票を受け取ると待っている愛梨達と合流し、そのまま冒険者ギルドを後にする。
「さて、それじゃあ今日は東の平原でも行きますか」
「「おー!」」
念の為門を出る前に装備の最終チェックを行い、特に不具合が無いことを改めて確認すると俺達は門を通って街の外へと繰り出した。
のんびりと春の日差しを浴びながら俺達は目的の場所を目指す。東の平原は街の東門から出て街道を少し歩いた先の草原だ。かなりの広さがあり、街道から離れれば離れるほど魔物の数も増えていく。
とはいえ街に近い場所なのでそこまで強力な魔物も出てこない。精々オークがいいところだ。
「ん~良い天気! 絶好の狩り日和だよね!」
「俺的には狩りもいいけど、のんびり昼寝も捨てがたいな」
「それもいいね~。お昼になったらみんなでお昼寝でもしよっか。ウィオちゃんはこんな日は何がしたい?」
「私ですか? 私は~、そうですね、ピクニックがしたいです。融お兄さんと愛梨お姉ちゃんと私の三人でお弁当食べて、たくさん遊ぶんです!」
満面の笑みで自分のしたいことを話すウィオの様子は本当に可愛らしい。俺もその光景を想像するだけで幸せになってしまいそうだ。
「そうだな。今日のクエストはさっさと終わらせてのんびり草原で弁当食べて遊んで昼寝でもするか!」
「はい! すっごく楽しみです!」
よほど楽しみなのかクルクルと回りながら全身で喜びを表しているウィオ。そんな天使を微笑ましそうに眺めている俺に愛梨が顔を寄せてきてウィオに聞こえないように小声で話しかけてきた。
「いいの? 草原って言っても弱いとはいえ魔物は出るでしょ? そんなところでのんびりできるの?」
まあ確かに正論ではある。魔物に「これからピクニックするから寄って来ないでね」と言っても通じるわけが無い。のんびり寝てる姿なんぞ見せようものなら嬉々として襲い掛かってくるだろう。
「問題ないよ。【領域】はきっちり展開しておくし、ウィオが楽しむためなら俺はどんな労力でも苦にならないさ」
【領域】は別にスキルではない。【変幻自在】のスキルによって目に見えないレベルで薄く広範囲に広げられた俺の体の一部である。
極々薄く広げられたとはいえ俺の体の一部。上に何か乗れば分かるし、判別したければそのポイントに目を作ればいい。敵ならそこから剣なり棘なりを生やして串刺しにしてもいいし、ロープ的な物を生やして拘束してもいいと非常に便利なのだ。
そのため使用頻度も非常に高いので俺は薄く広げた俺の体の事を【領域】と命名したのだ。
「ならいいんだけどね。よーしウィオちゃん、クエスト終わったら何して遊ぼうか」
俺の説明に納得した愛梨ははしゃいでるウィオの元へ駆けて行くと、クエスト後の予定を二人で楽しそうに話している。
目の前で繰り広げられる、まるで本物の姉妹のように仲のいい二人の姿に俺は自然と笑みを浮かべてしまう。
「融ちゃーん、早く行こうよー! 今日は目一杯遊ぶんだからねー!」
「そうですよ融お兄さーん! 早く行きましょー!」
「はいよー今行くー!」
目の前の光景に見惚れて立ち止まっていた俺に二人が急かすように声を掛けてくる。そんな二人の下へ駆け寄ると俺を中心に三人仲良く並んで歩き出す。
俺の両脇には大事な二人の女の子の笑顔。俺は絶対に、何があってもこの笑顔だけは守り通したいと密かに誰にでもなく願うのだった。
なんか書いててすっごい打ち切り感溢れてる気がしてなりませんが物語はまだまだ続きます。




