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異世界転移の融合者  作者: ミジンコ
幼馴染を救出
38/59

37話 そして帝都に侵入を

「さて、一体どうしたものか……」


 門から少し離れた所に丁度いい茂みが見つかったので俺はそこに身を隠し一晩門の様子を窺っていた。結果分かったことが一つ、あの門を守る兵士達は食事もトイレも寝ることもしないということ。

 あの完全に表情が抜け落ちた顔といい、実はあの兵士達死体なんじゃないかと考えてしまう。

 いろいろ考えに考えた結果、門を突破し帝都に侵入するために俺が考えたプランは四つ。


 一つ:空を飛んで高高度から落下。

    これは落下しているところを兵士や帝都の一般人に見られる可能性が大。たとえ地上まで【スラッシャーホーク】の姿で降りようにも周囲は間違いなくパニックになるだろうから却下。


 二つ:門を守る兵士を倒して無理矢理突破。

    門を守っている兵士が死体だったならいいけどもし生きているのなら正直後味が悪い。彼らは職務に忠実なだけなのだから。


 三つ:【シャドウバイパー】に変身して影から影に移動する。

    そもそも兵士に近づくための影が無い。


 四つ:【オーガスパイダー】や【パラライズクロウラー】に変身して動けなくしてから門を突破。

    一度に全員の動きを封じない限り仲間を呼ばれる可能性大。兵士は門だけではなく壁の上にもいるし。


 「はぁ~どうしたものか……。この際兵士達には悪いけど倒されてもらうか? 適当な魔物に変身して……とはいえ俺が変身できる魔物は殺傷能力が高いのがほとんどだからな~……って待てよ? そうか、他の魔物に変身しなければいいのか!」


 そうだよ俺の体は今スライムで出来てるんだ! だったらあの門のほんの僅かな隙間でも潜り込める筈! そうと決まればさっそく……夜を待とう。

 そう決めるや否や俺は夜までの時間潰しに魔物狩りを始めた。特に目新しい魔物は見つからずオークとゴブリンが数匹いたぐらいだった。それでもオークの肉は食べて美味しいからストックを持っていて損は無い。それに【無限増殖】を使うためには食料が必要だしな。

 日が落ち辺りもすっかり暗くなった頃、俺は再び門から少し離れた茂みに隠れ様子を窺っていた。

 門を守る兵士は今朝とまったく変わらず同じ人間が守っている。

 俺は頃合を見計らって全身をスライムへと変化させると、薄く伸ばした体をゆっくり慎重に門へと進んでいく。夜だというのに門の周囲に明かりは無く、そのおかげか兵士も近くを這って進むスライム()の存在には気がつかなかったようだ。

 そして門までたどり着いた俺は、門と壁の間の僅かな隙間にスライム状の体を滑り込ませ、ついに帝都の中へと進入することに成功した。


「ふい~、侵入成功っと。いやーこれで入れなかったらどうしようかと思った――ってなんだ? やけに静かだな……」


 辺りを見回してみるが周囲には一切の人影が無い。まあそれだけなら可能性はゼロじゃないんだろうけど、街の街灯の明かりは点いているのに周囲の家々全ての明かりがついていないのははっきり言って異常だろう。いわゆる飯時と言えるこの時間に家の明かりがついていないなんてことはありえない。

 何かこの帝都で異常事態が発生しているのは火を見るよりも明らかだ。

 俺は周囲の警戒をより一層強めながら通りを歩く。頼りになる街灯の明かりは正直この状況では恐怖心を煽るだけにしかならない。


「なんとなくゾンビでも出てきそうな雰囲気だよな~……。パニックホラー系のゲームの中にでも入った気分だ……」


 歩きながらそんな事を一人呟いていると、不意にすぐ目の前の家の扉が開き一人の女性が姿を現した。

 女性は扉を開け放ったままゆっくりと俺の方へと歩みを進めてくる。


「なんだ人がいるじゃないか。すいません、なんで周りの家には明かりがついて――!?」


 帝都の話を聞こうと出てきた女性に声を掛けるが、女性が街灯の下にやってきてその顔が明かりに晒された瞬間俺は息を呑んだ。

 表情が抜け落ちているのだ。門を守っていた兵士達と同じようにこの中年女性の顔からは一切の表情が抜け落ち、まるで死人でも見ているかのようだ。

 極めつけはその手に持っているもの。買い物に行くから財布を持って出てきましただったらどれだけよかったか。

 街灯の明かりを反射して鈍く輝くそれは見紛う事なき……包丁だった。


「ちょ、ちょっと冗談ですよね? そんな物持って外に出たら捕まっちゃいますよー?」


 ゆっくりと歩み寄ってくる女性に対し俺は同じ速度で後ずさりしながら距離を保ち声を掛ける。

 しかし俺の声が女性に届いている様子は無く、女性の歩みが止まることもなかった。

 どうする……、さすがに包丁を持っているとはいえ相手は一般人。盗賊とか相手にするときみたいに殴って解決とはいかないだろうし……。けどこのままじゃ埒があかないし……、いっそ走って逃げるか? なんか走って追いかけてきそうだけど……。

 後ずさりしながら考えていると不意にドン、という音がして俺の背中が何かにぶつかった。

 なんだ壁? いや、壁がこんな所にあるわけが……。


「なっ!?」


 後ろを振り返ろうとした瞬間俺の両脇の下から何かが伸びて俺の肩を押さえつけた。よく見ればそれは人の腕で、何とか首だけ動かして後ろを見るとそこには案の定顔から表情の一切抜けた中年男性がおり、俺を取り押さえていたのだ。

 どう見ても冒険者等の戦闘を生業とする人には見えない。なのにも拘らず脇の下から俺の肩を抑える腕は万力のような力を発揮している。


「くそっ! 離しやがれ!」


 しかし俺の声が背後の中年男性に届いている気配は無い。それに加え俺の眼前には包丁を握り締めゆっくりと中年女性が近づいてくる。

 くそっ、なるべく一般人に危害は加えたくなかったんだが仕方ないか……!

 両肩から先を【変幻自在】でぐにゃぐにゃの軟体状へと変化させ高速から抜け出すと、俺は中年男性の腕を掴み眼前へと迫る中年女性へ向けて投げ飛ばした。

 投げられた中年男性は中年女性へと激突するときりもみしながら転がっていく。

 回転が止まり地面には仰向けに倒れた中年男性とその上に覆いかぶさるように倒れている中年女性の姿があった。ただし、中年男性の右の目には中年女性の持っていた包丁が深々と突き刺さっており、その刃は脳にまで到達しているのが遠目からでも分かる。そして中年女性の首は本来曲がってはいけない方向に曲がっていた。

 この世界に来て人を殺したことは前にもあった。あの時は殺しても心が痛まないようなクズだったからなんとも思わなかったが、不可抗力とはいえ一般人を死なせてしまった事実は俺の心に重くのしかかる。


「せめて手だけでも合わせていくか……ん?」


 せめて冥福を祈ろうと倒れる中年男性、女性に近づいていくと俺は目を疑うような光景を目にした。

 ピクリと動いたのだ。目の前の二つの死体が。

 よしウェイトちょっと待て。死体は動かない。動くわけが無い。よしOK理論武装は完ぺ――ハッ! ここは異世界、日本の常識が通用しない世界だったーー!

 俺がそんなアホな事を考えているうちに二つの死体は立ち上がり、こちらへと向き直る。

 正直眼下に包丁がぶっ刺さった死体と首がおかしな方向に捻じ曲がってる死体が立ってこちらを向いている姿はある意味ゾンビ映画なんかよりも精神的にクルものがある。

 俺は両手に【フライングブレイド】の刀身を作り出すと二つの死体と対峙する。

 武器を構えて相手の様子を窺うが、二つの死体は一向に動く気配が無い。このままでは埒が明かないので立ち上がったまま動かない死体に向かって慎重に一歩を踏み出した瞬間、死体が急激に痙攣を始めた。

 時間が経つにつれて痙攣は酷くなり、正直なんで立っていられるのか不思議なぐらいだ。

 やがて狂気を感じさせる死体の痙攣がピタリと止んだ。目の前の光景にだいぶSAN値が削られていた俺がホッとしたのも束の間、ドパンッ! という音と共に目の前の二つの死体の頭が弾け飛んだ。

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