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異世界転移の融合者  作者: ミジンコ
幼馴染を救出
31/59

30話 そして闇討ちには制裁を

 銀色に輝く月と満天の星空を十分に満喫した俺とウィオ。少し離れた所にトレイズの街の明かりが見えてきた辺りで俺はゆっくりと地上へと降下する。

 地上へと降り立った俺達の周囲に人影は無く、どうやら誰にも見られる心配はなさそうだ。

 周囲の確認を終えると背中に乗っていたウィオを降ろし、俺は元の人間の姿へと戻る。あんな巨体に変身していたのに服が一切破れている様子が無いのは流石ご都合主義の異世界と言ったところだろう。


「とっても綺麗な星空でした。また一緒に見ましょうね融お兄さん!」


「ああ、また見よう。今度は愛梨も一緒にな」


「愛梨さん……ですか?」


「ああそういえばウィオには言ってなかったかな? 愛梨は俺の幼馴染だよ。優しくてウィオみたいに可愛い子が大好きな奴だからきっとウィオとも仲良くなれる」


 首を傾げるウィオの頭に手を置き優しく撫でながら愛梨の事を話す。


「とっても楽しみです。私にお兄さんだけじゃなくお姉さんも出来るんですね!」


「楽しみにしてなよ。きっとすぐに会えるから」


 ああ、絶対に早く助け出さないとな。

 ウィオに悟られないよう表情には出さないように俺は決意を新たにし、ウィオの手をとってトレイズの街へと歩いていった。


 そして街へと到着した俺達は真っ先にギルドへと向かい討伐の報告と新たに手に入れたスキル石の鑑定を頼んだ。

 受けていたクエスト【オーク五体討伐(D)】の報酬は銀貨二枚。それに加えて倒したオークの肉と魔石が十個で合計銀貨一枚になった。

 そしてクエストを受けていなかったパラライズクロウラーの牙と麻痺袋、それに魔石が二個、ゴブリンとハイゴブリンは特に素材になる部位が無いので魔石が七個と一個だ。これ全部で大銅貨八枚と銅貨七枚になった。ちなみにゴブリンの魔石は銅貨一枚だ。

 そして一番高かったのはやっぱりスラッシャーホークだ。こいつはほぼ全身が何らかの素材になるらしく、こいつ一羽で大銀貨二枚になった。本来はもう少し高いのだそうだが、頭部がぐちゃぐちゃに破損していて眼球と嘴が使い物にならなかったのとまったく解体していない状態で持ち込んだので解体手数料が取られたからだ。その損失額はなんと銀貨五枚。結構な痛手だがしょうがないだろう。

 全部合計して大銀貨二枚と銀貨八枚、大銅貨八枚と銅貨七枚が今回の報酬の全てだ。

 そしてお待ちかねのスキル石の中身だが、入っていたのは【風魔法】という下位の魔法スキル。売れば金貨一枚になるそうなのだがこれもまたウィオに取り込んでもらった。

 今までウィオは現状杖で殴る以外の自衛手段を持っていない。自衛手段と言ってもウィオの物理戦闘力はC、まだ低いレベルと幼さも相まってゴブリンにも苦戦してしまうだろう。それに比べて魔法戦闘力は堂々のS+なのだが所有している魔法系スキルが【治癒魔法】だけだからな。

 だけどこのスキルがあればウィオも魔法による自衛が出来るようになるし、何より戦闘に参加することも出来る。本当なら可愛いウィオを戦闘に参加なんてさせたくは無いのだが普段俺が戦っているのを見て戦闘能力が無い自分に歯がゆい思いをしている姿を見ると戦うななんて口が裂けても言えない。

 愛梨という新しい家族ができるという可能性に加え(まあ可能性で終わらせる気は一切無いのだが)、先ほど手に入れたばかりの戦う力にウィオは喜びを隠し切れず、まるで妖精のように俺の前でくるくる回りながら全身で喜びを表している。

 そんなウィオの年相応の行動にほっこりしながらつい口元に笑みを浮かべていると、唐突にウィオが俺のほうを見て表情を凍らせていた。


「融お兄さん!!」


 ウィオが悲鳴にも似た声を上げこちらに手を伸ばそうとする光景と共に俺は不思議な感覚に襲われた。俺の視界がゆっくりと回転しながら地面へと近づいているのだ。

 不思議な光景に理解が追いつかなかった俺だがドサリという音と共に回転の止まった視界、そして真正面に夜空を映す視界の端に映る立ち止まったまま動かない首から上の無い俺の体に、ようやく俺は自分の首が切断され地面へと落下したという事実に気がついた。


「ヒャハハハハハ! いくらテメェが強くたって首落とされちゃ生きてられるわきゃねーよなぁ! 散々人のこと馬鹿にしくさりやがって! 天罰でもくだったんじゃねーのかぁ? ギャハハハハハ!!」


 あー、こいつか。てか俺に怨み持ってる奴なんて今のところこいつぐらいだもんなー。だからって短絡的な事してくるとは思ってなかったが流石異世界、人の命が軽いこと軽いこと。


「さーてこの間抜けも殺った事だし、さっさとガキを攫ってトンズラこくとするか。獣人族の、しかもこんな上玉のガキだ、きっと変態貴族に高く売れるぜぇ」


「あ……ひ……」


 ウィオはいきなり俺の首が落とされたのに加えて、夜の通りで刃をチラつかせているノポンの姿に怯え完全に体が竦んでしまっている。

 竦み上がった体は震え完全に言う事を聞かず、その事がさらにパニックを加速させウィオから思考能力を奪い去ってしまっていた。


「さぁて、大人しくしてろよ? 下手に騒ぐと勢いで斬っちまいそうだからなぁ」


「ひぅ……あ……」


 ノポンの手がウィオの腕を掴もうとした瞬間俺は首だけとなった体を動かしてノポンの腕を掴む。


「ああ? 誰だ俺の邪魔をするの……は……」


 ノポンの視線が自分の腕を掴んでいる手から肘、肩へと上っていき首に辿り着いた時一気に凍りついた。

 てっきりおせっかいな通行人が止めたのだとばかり思っていたら実際に自分の腕を掴んでいるのはさっき殺したと思っていた男の手なのだ。しかも首から上はもちろん無い。


「ぎゃぁぁぁぁ!! 放せ! 放しやがれ!!」


 叫び声をあげて慌てたノポンがさっき俺の首を落としてくれた長剣を力一杯振りぬく。それは俺の腕もろとも胴体を切断……したかに見えた。

 しかし実際は流体であるスライムの体を通り抜けただけで、斬られたと思われた部分には一切の傷が無かった。


「な!? なんだ!? 俺は今確かに斬ったぞ!」


「ああ、確かに斬られた。けど首落とされた時と違ってくると分かってれば受け流すことぐらいわけは無い」


 夜の通りに俺の声が響く。さっき殺したはずの俺の声が聞こえたノポンはまるで油の切れた歯車のようなぎこちない動きで声の発生源である地面に転がっている俺の生首へと顔を向けた。


「さっきはよくもやってくれたな。俺の首落とすだけじゃ飽き足らずにウィオにまで汚ねぇ手伸ばしやがて、生きて帰れると思うなよ?」


「な……なんで首だけで生きてられるんだ! テメェまさか魔物だったのか、それもアンデッド系の!」


 さっきまでのビビり様は何だったのかとばかりにノポンが長剣を俺の首へと向けて構える。やっぱり異世界だと生首が喋っても心霊現象扱いじゃなくて魔物扱いになるのか。現にノポンは平気な顔してるし。

 日本で同じ事やったら多分十人中八人はパニクって逃げ出すんだけどなー。


「魔物じゃないんだけどなー。まあ半分は魔物だから間違いじゃないっちゃ間違いな――」


「死ねやアンデッドー!!」


 俺の言葉が終わらないうちにノポンが勢いよく斬りかかってくる。狙いは背後の胴体ではなく無防備な俺の頭。やっぱりアンデッド系の魔物は頭が弱点なのか? まだ出会った事ないんだよなー。

 まあ斬られたところで痛くも痒くもないんだがこんなのに何度も斬られるのは不愉快なので防御する事にする。

 首のない胴体の脚部を鉄のバネへと作り変えた俺は通りの建物の壁を利用して三角に跳び、俺の頭とノポンの間に割り込ませると、鉄製の右腕でノポンの長剣を受け止めた。

 金属同士のぶつかる嫌な音が周囲に響き、まさか受け止められるとは夢にも思っていなかったノポンの表情は驚愕に染まる。


「ギルドの訓練場で俺に手も足も出なかった奴が真正面から俺に敵うわけないだろう……よっ!」


 右腕を振りノポンを長剣ごと押し返す。ノポンが俺の力に耐え切れず尻餅をついている間に俺は地面に転がっている頭を拾うと元の位置へと戻した。

 あっと言う間に元に戻った首の調子を確かめる。特に違和感はまったく無いのがとてもありがたい。


「さてお前の始末を……あれ?」


 首の調子を確かめ終えた後とっととノポンを始末しようと尻餅ついてる無様なノポンへと視線を向けるとそこにノポンの姿はまったく無かった。


「ハハハ! テメェの本性をギルドにバラしてやる! そうすればお前はもうこの街にはいられねぇ! 討伐隊に怯えながらすごすんだな!」


 少し離れた所に脱兎の如く逃げているノポンの姿が見えた。器用にもこっちを振り向きながら全力疾走する姿はある意味凄いと思う。前見て走れ。


「融お兄さん……」


「安心しろ。あんな奴ちゃっちゃと片付けるから」


 心配そうに服の裾を掴むウィオの頭を優しく撫で、以前から考えていた方法を丁度いいので今回試すことにした。

 その方法とは、足首から下スライム状に変え、【無限増殖】を使いその量を増やした粘液を地面を這わせるように全方位に薄く広く伸ばす。

 街灯の明かりしかない夜なのであまり目立たないが粘液が一気に広がっていく様は不気味なのか壮観なのか……。

 すぐに広げた粘液は逃走するノポンを捉えた。増えた粘液も俺の体の一部なので逃げるノポンが粘液の上を走っている感覚はばっちりと分かる。ん? なんかすぐそばにも誰かいるみたいだけど……まあいいや、今はノポンを始末する事に集中しよう。


「それじゃ……判決――死刑」


 右手で十字を切り俺が死刑宣告した瞬間ノポンの足元の粘液が変化し、フライングブレイドの刃が飛び出して直上のノポンを刺し貫いた。

 【変幻自在】によって刃渡りが長くなっている刃はノポンの脳天から飛び出し、脳を破壊され即死したノポンは若干の痙攣の後、二度と動くことは無かった。


「ふぅ、終わり。ごめんなウィオ、怖い思いさせちゃって」


「いえ、私こそ咄嗟に融お兄さんを守る事ができなくてごめんなさい。首が落ちてましたけど大丈夫なんですか?」


「ん? ああ大丈夫。と言っても首落とされたのは初めてだから少し驚いて行動が遅れただけだから」


「そうですか。融お兄さんが無事で本当によかったです」


 ええ子や……、うちのウィオはホンマええ子や。こんな子を怖がらせた挙句売っぱらおうとか考えてたノポンは死んで当然だな。ところで……。


「おい、さっきからこっち見てる奴、いい加減出て来いよ」


 街灯のある通りとは違い路地の奥は一切の光が届いていない。俺の声に応える様に路地から出てきたのは意外な人物だった。

皆様ゴールデンウィークいかがお過ごしでしょうか。私は溜まっていたビデオとBDの消化に勤しみながら小説を書く日々です。

そしていつになったら私の筋肉痛は治るんでしょうか……。

そういえば、この「異世界転移の融合者」のブックマークがついに100件突破いたしました。

連載に作品目も多くの方に読んでいただけて感無量です。リアルの仕事が忙しくなかなか更新できないのが大変申し訳ないです。

これからも「異世界転移の融合者」をよろしくお願いします。

ブックマークや感想、評価などしていただけると大変嬉しいです。

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