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異世界転移の融合者  作者: ミジンコ
幼馴染を救出
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29話 そして夜空と星と月

 そろそろ日も落ちかけているこの黄昏時、再び森へ入った俺達はその後複数の魔物を討伐することに成功した。内訳で言えばオークが六体、パラライズクロウラーが三体、ゴブリンが七体、そしてゴブリンの上位種であるハイゴブリンが一体である。

 ハイゴブリンはゴブリンよりも一回り体が大きく力も強くなっている。それでも頭の良さはゴブリンと大差ないため脅威度はF+なのだそうだ。

 ただそれでもゴブリンよりは強いため、ゴブリンに勝てるようになって浮かれている初心者冒険者がよくこいつに殺される事があるらしい。慢心ダメ絶対。


「そういえばまだスラッシャーホークの魔石喰ってなかったな」


「あんな事がありましたからね、しょうがないですよ」


 そう、あんな所でノポンなんぞに会わなかったら帰りの道中で喰ってしまう気満々だったのだ。それが出会ったばかりか折角助けてやったってのにあんな言い草してくるもんだから苛立って今まですっかり忘れていたのだった。まあ新しい魔石も手に入ったことだしさっさと喰っちまうか。

 ウィオに頼んでポシェット型のアイテムボックスに入っている魔石を取り出してもらう。綺麗に輝く真紅の球体を手に取り少し眺めた後口の中へと放り込んだ。


『魔石の摂取を確認。【融合】を実行します』


 いつも通りのアナウンスが俺の頭の中へと響く。


『【融合】が完了しました。スキル【変幻自在】のリストに【スラッシャーホーク】が追加されました』


 アナウンスによって【変幻自在】のリストに新しい魔物が追加された事がわかる。あの空を高速で飛行する事が出来る魔物に変身できるという事は方角さえ分かればすぐにでも愛梨を助けに行けるってわけだ。

 ついでだからオークとパラライズクロウラーも喰っておくか。

 ウィオに出してもらった魔石を喰ってリストにオークとイモムシ(パラライズクロウラー)を追加する。オークはその異常な精力以外目に付くものが無いので省くがパラライズクロウラーはかなり便利だ。イモムシの姿になるのは正直抵抗があるのでやらないが体内に麻痺毒を精製する臓器を【変幻自在】で作り出して、そこで作った麻痺毒をこれまた【変幻自在】で作り出した噴射口がら吐き出すことが出来る。パラライズクロウラーは口が噴射口になっていたが体を変身によって作り変えられる俺には関係の無い話だ。


「さて、魔石も喰ったし、クエストの報酬受け取るために街に戻るとするか」


「そうですね。私もそろそろお腹が空いてきました。早くプリティーさんのお料理を食べたいです」


「う”……ま、まあ料理は確かに美味しかったしな。と言っても街まで三時間も歩くのか……っとそうだ! 丁度いい魔物がいるじゃないか!」


 そうだよ。ついさっき大空を飛べる魔物に変身できるようになったジャマイカ。そうと決まれば早速。

 俺の体がその形を徐々に変え巨大化していく。産毛程度しか生えていなかった肌には鳥類らしい羽毛が生え、俺の姿は完全にスラッシャーホークのそれへと変わった。

 巨大になった俺のすぐ下にはウィオが目を丸くして巨鳥へと変身した俺の姿を見つめていた。


「くえぇぇぇぇー(ウィオ乗って)」


 相変わらず魔物に完全変身すると喋る事が出来ない。【変幻自在】は便利だけどこういうところが融通利かない。え? 頭だけ人間のままにしておけば良いって? そんな事したらでっかい鳥の体にこれまた比例してでっかくなった俺の顔がのっているなんてホラー一直線の光景になるから絶対にしない。想像しただけで気持ち悪いわ。

 足を畳んで姿勢を低くし首で背中に乗るように促す。

 すぐにウィオは小さな体で俺の体に取り付くと「うんしょうんしょ」と可愛い声を出しながらよじ登り、俺の背中へと到着した。


「うわぁ~すごいです。フカフカですよ~!」


 よっぽどスラッシャーホークに変身している俺の背中が相当お気に召したのか羽毛に顔を埋めたり頬擦りを繰り返す。俺としても背中にウィオのぷにぷにほっぺが当たって非常にほんわかした気持ちになる。


「くえぇぇぇ~(お気に召したならなによりだ)」


「はい! すごく気持ち良いです!」


 それはなによりだ――ん? ウィオが普通に返事した? 俺人の言葉喋ってないのに?


「くえぇぇぇぇくぇぇぇぇぇぇー?(ウィオ、俺の言葉わかるのか?)」


「はい、分かりますよ? あれ? そういえばなんで分かるんでしょう?」


「くええぇぇぇぇーーー(分からないがまあ言葉が通じるのはありがたい)」


「そうですね。どんな姿の融お兄さんとでも意思疎通できて嬉しいです」


 ウィオの純粋さが眩し過ぎる。世界がウィオみたいな子で溢れてたら戦争も無いんだろうなー。


「くええぇぇぇぇぇぇぇぇん(それじゃ飛ぶぞ、しっかり掴まってるんだぞ)」


「はいっ!」


 ウィオが背中の羽毛をしっかりと掴んだのを確認すると俺は上体を起こし一気に翼を広げる。翼に力を込めて羽ばたき、ひしっと背中にしがみつくウィオと一緒に俺は大空へと舞い上がった。

 それにしてもすっかり夜か。薄暗い森の中にいたから気づかなかったな。それにしても……。

 大空を街へと向かって飛行しながら夜空を見上げる。空を飛んでいるためかいつもより少し近くに見える夜空には無数の星達がそれぞれの存在を誇示するように瞬いており、そして何よりも地球で見ていた月よりも大きなこの世界の月は銀色に輝き辺りを照らしていた。


「ふわぁ~、すっごくきれいです。私こんなきれいな夜空は初めて見ました」


「くええぇぇぇぇん。くぇぇぇぇぇぇぇぇぇん(俺もだ。俺がいた辺りじゃこんな綺麗な夜空は絶対に見れなかったからな)」


 都会は深夜でも明かりが途切れることはなく、排気ガス等で汚れた大気の下じゃ碌に星なんて見れなかったからな。見れて精々三等星ぐらいか? まあそんな事はどうでもいいか。今はこの夜空をウィオと楽しもう。

 俺の背中に乗っているウィオが、いつもは少し背伸びをしているウィオが綺麗な夜空に年相応の反応をしてはしゃいでいる微笑ましい様子にこちらもついつい嬉しくなってしまう。

 もう少しゆっくりと飛んで行くとするか。どうせ街は逃げないからな。

 こうして巨大な鷹に変身した俺とウィオは街を目指してのんびりと空を飛び、綺麗な夜空を満喫するのだった。

投稿が遅れて本当に申し訳ありません。体が痛いんです。手とか指とか足とか普段使わなかった筋肉が悲鳴を上げている日々を満喫しています。

のんびりとした時間をすごしている融とウィオですが、そろそろストーリーが進んでいく予定です。

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