28話 そしてバカはどこまで言っても大バカで
大変お待たせいたしました。
みなさんこんにちわ融です。現在俺とウィオは【トレイズ】の街から三時間ほど離れた場所にある森――の外にいます。冒険者ギルドで受けた【オーク五体討伐(D)】を終わらせ街に帰るところです。
え? 何故オーク討伐の詳細が省略されているのかって? いや別にたいした事は無いですよ。オークがあまりにも弱くて歯ごたえが無かったからですよ? 決してオークが怖かったからとかじゃありません。
ええ、たとえこの世界のオークがオスしかいなくてファンタジーもののお約束の女の子に欲情せずに男である俺に欲情して襲ってきたのが怖かったからとかじゃ決して無いです。
ちなみに後で知ったのだがこの世界のオーク、オスしかいないのはファンタジーもののお約束通りなのだが……全員ホモなのだ……。それでどうやって数を増やすのか疑問に思う方もいるだろう。
答えは俺みたいな男にとっては恐怖以外の何ものでもないものだった。
繁殖期に入ったオークは自分の体の中で精子と卵子を受精させる。何故パッと見豚が二足歩行しているようなオークがそんな事できるのか疑問は尽きないが異世界という事で納得しておこう。
そして次、体内に受精卵を作ったオークは近くにいる他の生物のオスに襲い掛かり……襲い掛かり……掘るのだ。徹底的に。
オークは他の生物のオスが死ぬまで掘るのを止めない。そして死んだオスの直腸に受精卵を生みつけ、受精卵はそこから成長に必要な栄養を摂取する。
そして受精卵は次第に成長していき、やがてこの世界に生れ落ちるのだ。ちなみに苗床になったオスは生まれた子供オークに喰われるそうな。
まあとりあえずそんな事はどうでもいい、今は目の前の事を何とかしよう。
俺とウィオの前方、こちらに向かって走ってくる一人の人影。いつぞやギルドで俺に絡んできたノポンとか言う三馬鹿トリオの一人だ。それはまだいい、問題はその後方だ。そのノポンを追いかけるようにして低空を滑る様に飛ぶ一羽の猛禽類、まだ距離があるため大きさははっきりと分からないが少なくとも地球にいたタカよりは圧倒的に大きいだろう。
「なぁウィオ、あれは一体何?」
「ちょっと待ってください……ありました! あれはスラッシャーホークですね。体の大きさだけで軽く五m、翼を広げると十mにも及ぶ超大型の肉食鳥の魔物です。嘴は鉄板をも貫き、翼の前部分が鋭い刃になっていて高速で獲物に近づきすれ違いざまに一刀両断してから捕食するそうです」
なにそれ怖い。てかよく見ればノポンが走ってきたと思われる方向に転がっている四つの物体。三馬鹿のチビとデブの死体だ。
チビはその身長故か物の見事に首ちょんぱされててデブの方は醜い脂肪の詰まった腹を一刀両断か。臓物があたりに撒き散らされてら。
「それでスラッシャーホークとやらの脅威度は?」
「Bみたいです。スラッシャーホーク自身の戦闘能力はCレベルなのだそうですが、高高度からの奇襲や猛スピードでの切断攻撃が脅威度を上げているみたいです」
へぇ~、戦い辛いってもの脅威度を上げる一因になるのか。脅威度BじゃDランクの冒険者じゃ逃げるしか手は無いって事か。ノポンの奴がチビとデブを囮にして逃げたんだろうけどそれ以前にスラッシャーホークの奴も遊んでるみたいだな。図体が大きいだけあって知能も高いのかね。
「このままだと私達も巻き込まれますけどどうしますか?」
「そうだなー。嫌な奴ではあるが嫌な思いした分の制裁はしたから見捨てるのも後味悪いなー。けど助けたら助けたでなんぞイチャモンつけられそうだし……」
俺が迷っている間にもノポンは俺達の方へと全力で走ってくる。とうのスラッシャーホークは新しい獲物を見つけたのが嬉しいのか高らかに一鳴きすると飛翔速度を一気に上げ飽きた玩具を切り裂くべく迫る。
「仕方ない、ウィオ! 行ってくるけどノポンには絶対に近づいたらダメだぞ」
「分かりました。気をつけてくださいね」
俺は足を鉄製のバネに変えると力を溜め、溜めた力を解放し一気にスラッシャーホークへと迫る。まさか獲物だと思ってた俺が猛スピードで突っ込んでくるとは思ってもいなかったのかスラッシャーホークの顔が一瞬驚愕に染まったがそこは強力な魔物、すぐに意識を切り替え俺を獲物ではなく外敵と判断したのか先ほどよりも眼光が鋭く速度も更に上がっている。
「でも判断を間違えたな。お前は大空に逃げるべきだった」
すでにノポンを通り過ぎスラッシャーホークの眼前へと迫った俺は右腕を嘴目掛けて振りぬく。俺は拳がスラッシャーホークの嘴に激突する寸前に右腕をアイアンゴーレムの鉄の巨腕へと作り変えた。
スラッシャーホークは俺のもはや壁と言ってもいいような鉄の拳に激突し、グチャリと嫌な音を立てて頭部を粉砕させる。俺の推進力プラス拳を振りぬく力とスラッシャーホークの推進力が合わさったのだ、後はどちらが硬いかの問題だろう。いくら魔物であるスラッシャーホークの嘴が硬く、鉄板程度なら貫通できるとしてもこちらの拳は言わば鉄の塊だ。どちらが勝つかなど火を見るよりも明らかだろう。
壁に激突したトラックってこうなってるんだろうな……。
そんな事を考えながら俺はすぐに右腕を元の形へと戻す。手の甲にはべったりとスラッシャーホークの血が付着しており、目の前の地面には頭部が原型を留めていないスラッシャーホークの死体が転がっている。
正直頭が潰れて目とか脳味噌とか飛び出しててグロい事この上ない。平和な日本で生活していた頃の俺なら間違いなく吐いていただろう。
「さて、とりあえずとっとと魔石取り出しちゃいましょうかね……っと。お、取れた取れた――ってん? 魔石以外にもまだあるな……」
魔石を抉り出してからまだスラッシャーホークの体内に何かがあるのに気がつく。手を突っ込んでみたら出てきたのは青空色の球体、スキル石が出てきた。
「凄いですね融お兄さん、またスキル石が出てくるなんて。普通魔物から手に入る確率はかなり低いはずなんですけどね」
「ああ、未鑑定だからどんなスキルが入ってるか分からんけどマイナスにはならんだろ。後はこの死体を回収して――あ?」
適当な袋をアイテムボックスに見せかけ、袋に入れる振りをしてスラッシャーホークの死体を入れようとした時、一人の男が近づいてくるのが目に入った。
まあ言わずと知れたノポンなのだが、目を血走らせ荒い息を吐きながら無遠慮に近づいてくる。怒っているように見えなくもないんだが……。めんどうな予感しかしない。
「おい! 何でもっと早く助けなかったんだ!」
ん? こいつはいきなり何言ってんだ?
「テメェがもっと早く助けてればあいつらも死なずに済んだ、俺のパーティーは大損だ! こりゃあ慰謝料を請求しないとなぁ? ちょうどその魔物からスキル石も出たみたいだし? その魔物から取れるもの全部で許してやってもいいんだぜ?」
ああ、そういう事。つまり慰謝料を請求しようって腹か。
「なにアホな事言ってんだよ。無様に逃げ惑ってるのを助けてもらっておいて礼も言わずに獲物を寄越せとか頭沸いてんのか?」
「うるせぇ! 良いからさっさと寄越しやがれ! テメェが俺達のパーティーを見殺しにしたってギルドの連中に言い触らされてぇのか!」
うわ、アホだー。完膚なきまでにアホだー。そんな事したって大半はこの前俺に負けた事の腹いせに吹聴してるって思われるだけだと思うんだけどなー。欲に目が眩んだ人間ってある意味凄い。
「言い触らしたきゃ勝手にしろ。お前達が弱かった結果だろうが。それに冒険者やって魔物狩ってんだ、自分達が狩られる覚悟ぐらいしとけこのド阿呆が。さぁウィオ、こんな大バカ野郎はほっといてもう少し狩りでもしようか」
このバカ相手にしてイライラしてきたし、魔物には悪いけどストレス発散の対象にでもなってもらうとするか。
テコテコテコと駆け寄ってきたウィオと手を繋ぐと俺達は今さっき出たばかりの森へと戻っていく。背後でいまだにぎゃーすか騒いでいる大バカがいるけど無視だ無視。
さて、今度はどんな魔物と出会えるかなー。出来ればオークが出てこない事を祈ろう……。
やっぱりバカはどこまで行っても大バカでしかないということです。彼が改心する日はやってくるのでしょうか……。
投稿に時間がかかってしまって申し訳ありませんでした。
新しい仕事は完全に肉体労働系で家に帰ってくると完全にぐったりしていて小説を書く時間と体力が残っていませんでした。
もっと仕事に慣れてくれば投稿ペースも上がると思うのですが……。
大変申し訳ありませんが気長にお待ちいただけると助かります。




