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異世界転移の融合者  作者: ミジンコ
幼馴染を救出
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26話 そして食堂にも乱入者が

すいません、遅れました。

 ほかほかと体から湯気を上げながら俺とウィオは食堂へ歩いていく。風呂場での出来事(ほぼ俺の所為)もあってウィオが若干むくれていたがそれでも俺の手を離さないあたり本気で怒ってはいないのだろう。怒ってないよね?

 むくれているウィオも可愛らしかったのでもう少し見ていたかった気がしなくもないがやっぱりウィオには笑顔が一番よく似合う。

 俺の必死の謝罪と食堂で提供された夕飯を食べると途端にウィオの機嫌は直った。


「このお料理、すごく美味しいですね! なんだか食べるだけで力が湧いてきます!」


「ああ、この肉なんか噛むのに力がほとんど必要ないし、口の中でじゅわっと広がる肉汁が何とも言えないな!」


 そう夕飯として出された料理、値段の割に豪華な夕食は見た目を裏切ることなく非常に美味しかった。

 メインの皿にはサイコロステーキとバターで炒めたコーンと人参、ほうれん草にポテトサラダ。レタスとプチトマト、キュウリとスライスしたゆで卵のサラダにはさっぱりとしたドレッシングが掛けられている。透き通ったコンソメスープも深みのある味わいが体を温めてくれる。コップに注がれている水も何故か非常に美味しく、水である事を疑ったほどだ。

 一つ残念な事があるとすれば日本人の魂と言うべき米が無い事ぐらいだろう。パンもパンで焼きたての芳ばしい香りが鼻孔と食欲をくすぐり非常に美味しかったのだが、日本人としてはお米が食べたいのが本音だ。

 こっちの世界に来てから一度たりともお米を口にしていないのでそろそろ禁断症状がでそうだ……。ウィオの【魔法の食材庫(マジックパントリー)】から出せないか今度聞いてみよう。


「それにしても……むしゃむしゃ……なんでここの食堂の客は女の人しか……もぐもぐ……いないんだ?」


「そういえばそうですね――って融お兄さん、お口にものが入ってる時に喋るのはお行儀が悪いですよ」


「ゴクリ――ごめんごめん。にしてもなんでだろ?」


 辺りを見回しても目に移るのは女性のみ。ラフな服装の人もいれば冒険者らしい格好の人もいる。


「それはねぇ~、この街の女性にとって~ここが一番落ち着いて食事ができる所だからだよ~?」


 唐突に聞こえてきた声に内心驚きながら振り向くと、そこには湯上りで肌を上気させたアイリスさんがラフな服装で立っていた。そう、ラフな服装なのだ。

 下半身は動き易さを重視しているのか短いズボンからはほどよく肉のついた足がスラリと伸びている。上半身に至ってはTシャツ一枚を着ているのみで大きな胸がはち切れんばかりだ。日本のキャラクターがプリントしてあるTシャツだったらキャラクターが無残に歪んでいただろう。しかも良く見てみれば二つの山脈の頂上部分、ぽっちりと浮き上がっていてこれが何を意味しているのか想像するのに難くない。透けて見えないのが残念極まりないがやっぱりこの世界にブラと言う概念はないようだ。なんて素晴らしい。


「そうなんですか?」


「そうなのよ~。あ、相席いい~? ありがと~。プリティ~さ~ん、私にも同じの頂戴~」


 アイリスさんが返事を待たずに空いてるイスに座りオーダーすると厨房のほうからプリティーさんの野太い声を無理矢理高くした声が聞こえてくる。それから程なくして厨房から運ばれてきた料理が俺達のテーブルへと並んでいく。

 プリティーさんが料理を並べ終え厨房へと戻ると、所狭しと並べられた料理にアイリスさんが目を輝かせる。


「相変わらずおいしそうね~。それじゃ~いただきま~――」


「おっここかぁ! 女ばかりの食堂ってのは! かぁ~いいじゃねぇか、よしここで飯を食うとするか!」


 アイリスさんがサイコロステーキを口に運ぼうとした瞬間【小鳥の止まり木】の扉が勢いよく開き、そこから厳つい顔をした中年男を筆頭とした4人が店内の女性を舐め回すように見ながら入ってきた。どっからどう見ても普通に飯を食って帰るとは思えない。間違いなく、間違いなく何か問題起こすに決まってる。

 ドカドカと歩きながら店内の空いている席に乱暴に座った男達。これから料理が並ぶテーブルに足を乗っけてるとか……ウィオの教育に悪いな。


「おーい! 早く料理と酒持ってこいやー! あとそこのオッパイでかいねーちゃん! そんなヒョロガキのとこいねぇでこっち来て酌しろや」


「アニキ! 俺あのちっちゃい子すげぇ好みなんすけど! いいっすよね!?」


「ああ? あああのチビか。確かに上玉だが小さすぎやしねぇか? まぁお前の趣味だ好きにしろ」


「へへっアニキは話が早くていいや! おいそこのお嬢ちゃんもこっち来て俺に酌しな! ちゃんとできたらご褒美に気持ちよくしてやるからよ!」


 あのゴミクズは今なんて言った……? ウィオに酌しろ? 挙句の果てには誰が聞いても手を出す宣言とか……。殺す……殺して魔物の餌にしてやる。

 俺は全身から抑えきれない怒りを立ち上らせギャハハと下品な笑いを響かせている迷惑極まりない男達を始末するために立ち上がろうとする。しかしそんな俺の肩を掴み抑える女性がいた。


「まぁまぁ~、怒る気持ちは分かるけどねぇ~。もうちょっとだけ様子見ててみない~? この街で~いやこの宿で~あんな事するのは~碌に情報収集してない三下だから~」


 俺を抑えているはずのアイリスさんがワザと男達に聞こえるように言葉を発した。しかも三下を強調して。それはあんな無駄に年食ってプライドだけは無駄に高くなった男達の意味不明な自意識を刺激するのには十分だった。


「おいねぇちゃん、ちょっとばっかし見た目が良いからって調子に乗ってると痛み目みるぞ? 今だったら誠心誠意謝れば許してやるぜ?」


「誠心誠意ってアニキ! 一体どこで謝るんすか!?」


「どこってそりゃあもちろんベッドの上でだ!」


「「「ギャハハハハハハハ!!」」」


 聞くに堪えない下品な会話に俺は思わずウィオの耳を塞ぐ。あんな会話聞いてたらウィオの教育に悪いどこの騒ぎじゃない。


「あなた達みたいな~雑魚に謝る口は持ってないので~さっさと消えてくださいねぇ~?」


 下品な笑い声の中でもよく通るアイリスの声に店内が一瞬にして静まり返った。

 誰もが静まり事の成り行きを見守る中、渦中の男達は全員例外なく顔を怒りに赤く染めていた。特にリーダー格の中年男に限っては肩をワナワナと震わせ今にも爆発しそうである。いやもう手遅れか。


「このクソアマァ! ちょっと顔が良いからって調子に乗りやがって! もう容赦しねぇ、泣いて謝っても許さねぇからな!」


「あなた達みたいな雑魚に~私をどうにかできるとは思えないんだけどねぇ~」


「ハッ! 俺達はCランクの冒険者パーティー【野獣の牙】だ! てめぇみてぇな女なんぞにやられるかよ!」


 男達全員が一斉にそれぞれの得物を抜き放つ。店内が色めき立ち幾人かの女性客が今まさに己の得物を抜かんとした時、それは食堂内に現れた。


「あらあら、ここでは喧嘩は御法度よ~。やるなら外でやって頂戴」


「うるせぇ! ここまでコケにされて黙ってられっかよ!」


「厨房から聞いてたけどどう見てもあなた達が悪いじゃない。女の子は大事に扱うものよ?」


「さっきっからうるせぇよこのバケモンが!! 気持ち悪ぃ面俺達の前に出してんじゃねぇ!!」


 男の口から罵詈雑言が飛び出た瞬間店内はさっきよりも数段温度が下がったような気がした。

 いや錯覚なのだ。プリティーさんから発せられるあまりにも異常で濃密な殺気が周囲の人間に気温の低下という錯覚を覚えさせたのだ。

 俺自身足が震えてまともに言う事を聞いてくれない。ウィオに至っては強烈過ぎる殺気に心を壊されるのを防ぐために気を失っている。できる事なら俺も気絶したい。この後の地獄を見るのは流石に遠慮したい気分で一杯だ。


「誰が……バケモンですって……?」


「だからテメェだよ! 野郎の癖にメイド服なんぞ着てる気持ち悪ぃんだよ! 目が腐ったらどうす――」


 中年男が最後までセリフを発する前にその姿が食堂内から消え失せた。突如消えた自分達のリーダーに子分達は目を白黒させながら周囲を見回すが何処にも中年男の姿は見当たらない。

 次の瞬間外の通りから大きな破砕音が響いてきた。食堂内にある窓から外の通りを覗き込むとそこには通りの反対側の建物の壁に激突し気を失っている中年男の姿があった。

 建物の壁は砕け全体に罅が入ってしまっている。この時間になっても建物の明かりがついていない事から恐らく中で生活している人間はいないのだろう。


「もう少し女性の扱いってものを勉強してから出直してらっしゃい」


 それだけ言うとプリティーさんは食堂内に残っている残りの【野獣の牙】のメンバーをまるでゴミを棄てるかのようにポイポイ放り投げていく。軽く投げているようにも見えるがよく見れば男達は結構な勢いで中年男が激突した建物へと飛んでいき、仲良く気絶していった。


「さてみんな、ずいぶん騒がせちゃったわね。お詫びにデザートサービスさせてもらうわ」


 店内の女性客達から歓声が上がる。タダでデザートが食べれると喜んでいる女性達をよそに俺はプリティーさんの圧倒的な強さに一人震えていた。


「ね、大丈夫だったでしょ?」


 俺は心のノートに一つの項目を作りそこにプリティーさんの名前を書き記した。そう、絶対に怒らせてはいけないリストに。

はい、プリティーさんの圧倒的な強さを出すために噛ませ犬に登場していただきました。彼らにはパーティー名以外の設定がなく、再び登場する見込みはほぼ無いです。


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