24話 そして風呂場に乱入者を
俺と一緒に入るお風呂楽しみーな様子のウィオに対してついに断る事の出来なかった俺は借りた部屋にウィオが【ここが私の部屋】を展開し奈落の底で見た部屋に一時的に上書きした後、荷物を置いてプリティーさんに教えられた浴場へとやってきた。
浴場へと入る入口は三つ、暖簾が掛けられそこに書かれているのは男風呂、女風呂、それと混浴だ。てかこの世界じゃなくても男だったら迷わず混浴に入らないか? 確率は低いかもしれないけど女の人入ってくる可能性はあるわけだし……。現に今ウィオが俺と一緒に混浴に入ろうとしてるわけだし……。
「それじゃあ行きましょう! 融お兄さん!」
「そうだな。旅……まあ何日も歩き通しだったわけじゃないけど疲れを癒しますか」
俺の精神が休まるかどうかは別としてな。他に利用客が居ない事を願おう、男も女も。
混浴と書かれた暖簾をくぐり俺とウィオは脱衣所へと入る。日本の銭湯みたいな脱衣所になっており、設置された棚に置いてある籠に服を脱いで入れようとしたところでふと気付く。
あれ? そういえば着替えはともかくタオルとかなくね?
「失礼するわねー。ユウちゃんウィオちゃん、タオル持ってなかったでしょ? これ使うといいわ」
そう言ってプリティーさんが手に持ったタオルと手ぬぐい一式を俺とウィオに手渡す。
「本当なら銅貨二枚なんだけど今回はサービスするわ。けど次からはお金払ってもらうからそのつもりでね~」
言うだけ言うとプリティーさんは手をひらひらと振りながら脱衣所を後にする。その後ろ姿を見送った俺は手渡されたタオルに目を向けた。
真っ白なタオルはふわふわでとても異世界の物とは思えない。俺の異世界に対する基準が低いのかもしれないがこれは日本の柔軟剤のCMに出て来てもおかしくない程の仕上がりだ。
手ぬぐいだってタオルに負けず劣らずの仕上がりでここは本当に異世界なんだろうか、もしかしたら日本の銭湯にでも迷い込んだんじゃないかと混乱しそう。
まあ何はともあれタオル等は手に入ったことだし、念願のお風呂に入りますか。
手早く服を脱ぎマナーとして腰に手ぬぐいを巻く。
「それじゃウィオ入ろ――」
つい言葉が途中で止まってしまったが致し方ない事だろう。俺の目の前にいるのは一糸まとわぬ姿になったウィオ。傷一つないきめ細やかな白い肌、細くしなやかな手足、小ぶりなお尻、そして胸にはピンク色の小さなぽっちがががががががが!
いかん! 冷静になれ俺! 相手はウィオ! 確かに天使と見紛う可愛さだが抑えるんだ! 今ここで俺の俺自身をエレクトさせる訳にはいかん! 心頭滅却心頭滅却ウィオは妹ウィオは妹!
「融お兄さんのお背中私が洗ってあげますからね!」
一糸纏わぬ姿のまま眩い笑顔を向けてくるウィオに俺の理性はもう崩壊寸前だ。心の中の小さな俺が理性と言う名の壁に群がって破壊行動を行っている。
耐えろ! 耐えろ俺の理性! ウィオに嫌われたらもう生きてはいけないぞ!
ガンガンガンと一心不乱に棚に頭を打ちつけ何とか耐えようとするもここで一つ誤算があった。体がスライムな為痛みが全くないのだ。
「融お兄さん!?」
「いや、なんでもないよ。それじゃ入ろうか」
心の中に巻き起こる理性破壊活動を何とか抑えそれを表に出さないよう平静を装って俺はウィオと共にスライド式の扉を開け浴場へと入っていく。
浴場はそのまんま浴場だった。薄らと湯気が立ち込め浴場特有の空気が俺達を包み込む。
床は全面がタイル張りになっており、壁にはなんだか良く分からない絵が描いてある。
一見すると壁の絵以外普通の銭湯となんら変わるところはないのだが、良く見ればシャワーらしきものが少し変わっていた。
シャワーと蛇口がセットになった一般的なものに見えなくもない。しかしこれには肝心のものが付いていなかった。そう、ハンドルとかバルブとか言われているシャワー&蛇口からお湯ないし水を出す為のものが付いていないのだ。代わりにシャワーと蛇口の根元に真紅の球体こと魔石が取り付けられていた。
どうやって使うんだこれ?
「融お兄さん、それははめ込まれている魔石に触れればお湯が出る様になってますよ」
「魔石に触れるだけでいいのか?」
「はい、そうすると魔石が勝手に触れた者の魔力を吸い取ってお湯を生み出してくれます」
ほぇ~、異世界ならではって感じだな~。でも……
「俺の魔法戦闘力はF何だけど大丈夫なのか?」
「魔力はどんな人でも必ず持っているものです。魔法戦闘力は魔力をどれだけ多く持っていても魔法として発現する能力が無ければFになるみたいですから。逆に魔力は少なくても魔法として発現する能力が高い人はランクが高くなるそうですよ」
てことは俺でも魔力だけは多く持ってる可能性があるって事か。ただそれを魔法として発現できないだけで……。どうせ異世界に来たんだったら魔法の一つや二つくらい使ってみたかったな。
「それじゃ早速頭から洗っちま――」
「ちょぉっと待ってぇーー!」
「ギャーーーーーーース!!」
突如風呂場に乱入してきたプリティーさんにビックリした俺は思わず悲鳴を上げてしまう。
「ウィオちゃんの綺麗な髪を洗うんだったらこれを使ってちょうだい!」
そう言ってずずいっと差し出してきたのはピンク色をした三つのノズル付きのボトル。よく見ればピンク色もそれぞれ微妙に色合いが違っている。
「これ私のお気に入りのシャンプーとコンディショナーとリンスなの。ウィオちゃんの綺麗な髪も今以上に艶やかになる事間違いなしよ!」
「そうなのですか? ありがとうございます!」
「折角だからユウちゃん、あなたにこれの使い方をきっちり教えてあげるわ。ウィオちゃんの髪を綺麗に保つのはユウちゃん、あなたの使命よ!」
確かに……! ウィオの髪を綺麗に保てないのはこの世界にとって大いなる損失……! 俺にはウィオの髪を綺麗にするという重大な使命があったんだ……!!
ウィオの髪を今以上に綺麗にし保つという壮大な使命を帯びた俺は熱心にプリティーさんの指導を聞く。この時ばかりはプリティーさんの凶悪な見た目を気にしているだけの余裕はなかった。だってウィオの髪を綺麗にすることの方が重要じゃん?
そして俺は気付いていなかった。熱心にウィオの髪を洗い方を教えてくれるプリティーさんが時折熱い眼差しで俺の体を見ていた事に……。
風呂場に乱入者はお約束ですよね。




