23 ◆ 荒南風に 生首ころころ どんぶらこ ◆
●副題を差し替えました。「荒南風」は「あらはえ」と読みます。
にゃん吾郎ののっぴきならない声に、アレクは振り向く。そちらに視線を向けると、エルサとオロフィールの頭が無かった。束の間絶句するアレク。
PT内で表示されるHPの目盛りを見やると、二人のHPは0だ。更に下に視線を向けると、二人の頭が転がっている。暫し呆然としていると、ゆっくりと二人の体が地へ倒れた。
慌ててにゃん吾郎が“南無南無草”を二つ投げる。草が『火』の字のような形となり、さながら手足のある人型となる。そして、般若心経を唱え出す。これで二人は蘇生するはず……なのだが、蘇ることなく草小人が枯れて消滅してしまう。
――!?
再び黒き疾風が一帯を切り裂いた。
正面からこちらへ向かって来る刹那、確かにアレクは見た。トウガラシの巨人が、死神の如く大鎌を振るったのを。
だが、アレク、アルマロン、ナマケモノー、にゃん吾郎、にゃん助、にゃん兵衛、にゃん吉には何の異変も生じていない。しっかりと斬り付けられたにも係わらず。
(首を……斬られた感覚はあるぞ!?)
アレクは考える前に、〈トランジション〉と〈テレポート〉を唱え、【チェスター】の時空門へと仲間と自身を転移させる。
「アレクさん?」
「ひとまず【トラッツェ】へ戻りましょう」
エルサとオロフィールの分の通行料をアレクが肩代わりし、一行は【トラッツェ】へと舞い戻る。死体の状態で転送出来るのかは賭けであったが、通行料さえ支払えば問題ないようだ。
「あ、あれは、何です?」
「トウガラシ巨人のようですね」
アレクは答えながら、〈リヴァイブ〉をオロフィールに掛ける。しかし、“南無南無草”の時と同様に何の反応も無い。オロフィールは頭と体を切断された状態のままだ。
(蘇生出来ないだと!?)
「にゃん吾郎さん、〈リヴァイブ〉よりも上位の蘇生魔法は使えませんか?」
「え、ええ。〈リザレクト〉ならば使えます」
にゃん吾郎がエルサに〈リザレクト〉を使用する。しかし、やはり結果は同じだった。あの大鎌で殺された場合、蘇生魔法や蘇生道具は無効なのだろう。アレクは顎をさすりながら、にゃん吾郎に尋ねた。
「にゃん吾郎さんは、HP・MP・OP・SPの減少、状態異常の有無等、何か異変はありますか? 俺は全くありませんけど」
「私も特にはありませんね。それに、にゃん吉、にゃん兵衛、にゃん助も異常は見られません」
会話を続けようと、アレクが口を開き掛けた瞬間――エルサとオロフィールが掻き消えた。
二人は目を見開き、硬直する。まだ2分程しか経っていない。
瞬きを数回してから、気付いたようにアレクはPT念話を飛ばす。
<エルサー、オロフィールさん!? どこだー?>
<ここ……どこ?>
すぐにエルサから返事が来た。PTは解消されておらず、HP等が半分まで回復していることから、自動蘇生したということになる。しかしながら、離れ過ぎているためかエルサとオロフィールの居場所はわからない。蘇生場所は最寄りの街の神社、寺社、神殿、教会であるはずなのに。
<エルサ、そこから何が見える?>
<うーんとね、見渡す限り砂しかないよ。砂漠の真ん中にいるみたい>
隣にオロフィールはいないようだ。そして、他に目ぼしき人影も無いということだろう。
アレクが更に質問をしようと思った矢先、オロフィールからも返答が来た。
<嬢ちゃんは砂漠か。俺は浜辺だな。常夏の海ってやつだ。そして、知らん場所だ>
二人して知らない場所で復活しているとは……。
そこで、アレクは気付いた。なぜ【チェスター】に人の気配が全く無かったのかを。皆あのトウガラシ巨人に殺され、どこかで自動蘇生したと考えれば合点が行く。おまけに、あの巨人や野菜の存在に嫌気が差し、多くの人がサタルーダ・クエントへの接続を控えている可能性もある。
それはそうとして、アレクとにゃん吾郎が死を免れたのはどういうわけなのだろう。二人共、確かに首を刎ねられたはずだ。しかも二度。理由を考えるも、心当たりがない。野菜を駆除していない者という条件ならば、数個のオロフィールは当て嵌まらないものの、エルサは該当するはず。魔法耐性が関係しているならばにゃん吾郎が、物理耐性が関係しているならばアレクが殺されているはずだ。
あれこれ思索していると、エルサの声が脳内に響いた。
<あれ? 〈リターン〉が使えないよ!? どうして?>
知らない場所であろうとも、〈リターン〉ならば最寄りの街へと転移可能だ。本来ならば。
ため息を付く様なオロフィールの声が返って来た。
<恐らく駄目だろうな。前に公式行事で、〈リターン〉が無効になった時があんだよ。今回もそういったヤツなんだろ。こいつぁ七面倒くせぇな、まったくよ! 仕方ねぇ、嬢ちゃん。一人で寂しかろうが、互いに自力で街を探すしかねぇぜ>
<うん! 楽しくお散歩するね♪>
陽気な答えが返って来た。些か薄情だが、この様子なら放っておいても平気かもしれないとも思うアレクだった。
何の進展もないまま1時間。その膠着状態を破ったのはエルサだった。
<ねえねえ、緑が見えて来たよ。あっ! 人がいそうだよ!>
<とりあえず、迷子からは抜け出せそうでよかった>
少し怪訝に思ったが、エルサが空を飛んで移動出来ることを思い出し、アレクは一人で納得する。
<どうしよう……首がいっぱい転がってるみたい>
――!? アレクとにゃん吾郎は焦る。
<おい、嬢ちゃん! そりゃ危ねぇ! 早くそこから離れろ! 近くに潜んでるに違いねぇ>
二人よりも先に、オロフィールが泡を食って警告を発する。
<うーん……ん? きゃあぁぁ……って、あらら? 何ともないみたい♪>
エルサがどのような状況なのか、3人には検討がつかない。
<え、エルサ? 何があったんだ?>
<うーんとね、黒い風が横切って行って、斬られちゃった気がしたんだけど、無事なの! あっ、顔も黒っぽかったかも>
アレクとにゃん吾郎は思わず顔を見合わせる。恐らく先程二人が体験したのと同様のことが起こったのだろう。
<無事ならいいがな。嬢ちゃん、気ぃ付けねぇと、やられちまうぞ。まずはどこかの街を――>
オロフィールが心配そうにあれこれ言っている。念話で会話が出来る間は、互いに心細くもないことだろう。
アレクはにゃん吾郎に直接話し掛ける。
「エルサの話だと、トウガラシ巨人ではない様子でしたね」
「そのようですね。つまり、殺戮者である巨人が2体はいることになりますね」
「馬鈴薯、ピーマン、茄子か。ところで、先程みたいに何か情報は入って来ていませんか?」
「いいえ、もう緊急の手紙やら念話やら、新たな情報は来ていませんよ。妙なんですが、猫族の掲示板等でも、音信不通状態に近いような状況に陥ってしまっているようなんですよ」
アレクは左手で顎を擦り、ふと思い出す。そういえば、ナハーランのことを忘れていた。
送信されて来た文面を読み直し、彼に念話を送ってみる。
<おいっ、ナハル! 今どこだ!?>
通じてはいるようだが、返事が返って来ない。数分経ってから、やっと彼からの応答があった。
<い、今、も、森の……【ロク――!!>
途絶えてしまった。ブツッと嫌な音を立てて。
再び何度か念話を送ってみるも、通じない。アレクは顔をしかめて首を捻る。
「どうしました?」
やや心配そうに見るにゃん吾郎に、アレクは事情を話す。
「【ロクワ】の森と言いましても、あそこは“ユサベ温泉郷”と同様、周囲に森が多いですからねえ。しかし、何の当ても無いよりはマシでしょうな」
二人は自身の使役獣や召喚霊達を伴い、時空門を用いて【ロクワ】へと移動する。ここもやはり、【チェスター】同様人気が微塵も感じられなかった。がらんとした殺風景と静寂に包まれており、微かな風の音が一層寒々しさを増幅する。
アレクがナマケモノーを見ると、彼は嬉しそうに東北を指差した。
「あっちー♪」
距離を言わないということは、かなり遠いのかもしれない。
一行は【ロクワ】から背丈の高低入り混じった樹の生い茂る、薄暗い森を疾走する。
1時間程すると、人々の生首と首無し胴体が散見され始めた。
(近いな)
「アレク、かなり動きが速いよ。それに、たぶん少ししたら、向こうからこちらを狙って来ると思うよ。方向は右側から来ると思う」
アルマロンがアレクに耳打ちする。アレクは手早く、にゃん吾郎に念話で注意を促す。伝え終わると同時に、風が吹き荒れる。
(来るっ!)
アルマロンの予測通り、4時方向から凶悪な殺気を秘めた存在が急速に接近して来る。そちらへ向け、アレクは〈グラビティ・ショット(6弾)〉を素早く放つ。6弾の黒球が、黒い影に吸い込まれるように飛んで行く。当たったとアレクが確信したその瞬間、黒い影がするりと弾をかわし、速度を緩めることなくアレク達に襲い掛かる。
そのまま黒い風がサッっと過ぎ去って行った。
首を捻りながら、目を瞬くアレク達。確かに首を斬られた。しかし、誰も何ともない。一向は顔を見合わせる。
そのまま敵は去ってしまったものの、何の収穫が無かったわけではない。敵は、ピーマンに違いなかろう。顔が緑色だった。
「ぎゃー!」
少し離れた場所で絶叫がこだまする。アレク達はそちらへ急行する。
そこには、鬼人族の男の頭と体が分断され、転がっていた。既にピーマン巨人の姿は見当たらない。
「うわーっ!」
「きゃあぁぁ!」
「ぅぎゃあっ!」
「ひいぃっ!」
それからも、森の方々で絶叫が響く。
ピーマン巨人は突風が周囲の物を薙ぎ倒して行くが如く、人々を惨殺して行っており、その移動速度は恐ろしく速かった。
アレク達は、ナマケモノーやアルマロンの感知能力を頼りに、敵を追跡する。
「一向に追いつきませんね」
にゃん助に跨ったにゃん吾郎が、ため息混じりに吐いた。
襲来時の速度で常時移動しつつ、人々の首を刈り回っているとなると、とてもではないが捕捉は不可能だ。なにせ、トウガラシよりも動きが俊敏だ。
アレクとにゃん吾郎が困っていると、ナマケモノーが飛び跳ねながら口を開いた。
「はいっ、はーい! ボク頑張っちゃうよー♪ ボクに任せてー♪」
アレクは二度瞬きをしてから、答えた。
「わかった。期待しているからな」
「期待きたーい♪」
そう言って彼はフッと掻き消えた。5秒して、アレクのMPとSPが減少した。値にして200程度。ナマケモノーが威力を高めた〈ナマケルゾー〉を放ったようだ。
「アルマロン、どっちの方角にいるかわかるか?」
「凡そは。今は後方2km程だと思う」
3km程行くと、やっとナマケモノーを探知出来た。これで距離は500m以内だ。この間にもう一度アレクのMPとSPが200程度減少した。
ナマケモノーの姿とピーマン巨人の姿が視界に入る。そこは森を抜けた草原であり、遮る物が少ない。そして、敵の移動速度が大幅に落ちている。それはアレク達が追い付けた事実からも自明なことであるが。
にゃん吉が〈縛影〉を放ち、ピーマン巨人の影で相手を縛り上げて動きを止める。そこへ一斉ににゃん兵衛が〈咆槍弾〉を、にゃん吾郎とにゃん助が〈烈風陣〉を、アレクが〈グラビティ・ブラスト〉、〈グラビティ・ショット(6弾)〉を放つ。
槍状の闘気の塊が5本ピーマン巨人を穿ち、その足元からはカマイタチの旋風が巻き起こって切り刻み、2m程の黒球が弾けて敵の一部を飲み込み、10cm程の黒球6弾が敵に吸い込まれて行く。
だが、敵はほぼ無傷だった。この一斉攻撃を食らったにも係わらず。
次手を放とうとした皆の手が寸刻止まる。アレクを除き。
その隙を突き、ピーマン巨人の大鎌が閃く。
やはり皆何も異変は……いや、アレクだけが吹き飛ぶ。
「アレクー!」
大慌てでナマケモノーが駆け付ける。40m程吹き飛ばされ、アレクは絶命していた。アルマロンは傍で目を回していた。
(おい……鎌じゃなくて手に当たってだけで160万程も食らうとか、悪い冗談だろ)
回り込もうとしていた折に敵が攻撃を放ち、運悪く鎌ではなく腕で殴られてしまっていたのだ。
「すぐに蘇生させますよ」
虎3頭に敵の足止めを任せ、にゃん吾郎が〈リザレクト〉でアレクを蘇生させる。
「にゃん吾郎さん、俺達にあの鎌は無効でも、他の物で攻撃されたら一撃で死ぬかもしれませんよ」
にゃん吾郎はアレクが食らった値に驚愕する。幾ら物理紙防御とは言え、凄まじい値だ。
「それに、俺達の攻撃ではほとんど削ることすら叶わないと来ていますし、手の打ち様が――!?」
アレクはそこで気付く。誰かの攻撃だけがしっかりと通っている。
誰だっ!?
今攻撃しているのは虎3頭。それぞれの攻撃法は、にゃん兵衛が闘気法と物理攻撃、にゃん吉が呪陣を用いた特殊技、にゃん助が魔法だ。アレクは3頭の連携攻撃を注視する。突如黙りこくったアレクを見て、にゃん吾郎は首を傾げる。
風の大玉や旋風が敵に当たって爆ぜ、気の弾や槍や円月輪が敵を穿ち、呪陣から雷や黒い旋風、火の鳥が放たれ――にゃん吉だっ! 彼の攻撃だけは非常に良く通っている。
「にゃん吾郎さん! にゃん吉の攻撃だけは有効ですよ!」
アレクの言葉に視線を移すにゃん吾郎。確かににゃん助、にゃん兵衛が2桁前半しか削れないのに対し、にゃん吉は千単位の値で相手のHPを屠って行く。
一行はにゃん吉を攻撃の要に据え、他は撹乱、支援、回復役として応戦し、ピーマン巨人のHPを地道に削り取って行く。
しかし、そう順調に事は運ばない。〈ナマケルゾー〉の効果が切れ、アレクかにゃん吉の足留め攻撃が間に合わない時には、逃走を許してしまう事態となった。無論、その時はナマケモノーがピーマン巨人を鈍足化し、アレク達が追い付いて攻撃を再開するというイタチごっこを何度も繰り返す次第だった。
「消費量がどんどん上がって来やがって……こんにゃろー、回復道具が底を突きそうだ!」
アレクが悪態を付く。既に10時間近く追い掛けっこをやっている。削り役がにゃん吉のみであるために、長期戦を余儀なくされているのだ。また、サタルーダ・クエントでは、回復道具は準稀少品扱いと言っても過言ではない。アレクの嘆きも当然のことだ。
「……いいかげん……倒れて……欲しいものですね……」
にゃん吾郎が息を切らしながら答える。
アルマロンの〈SSA〉や〈SSB〉があるため、疲労の心配はそれ程しなくてよいのだが、にゃん吾郎は次第に疲労の度合いが大きくなって来たようだ。アレクの方はまだまだ余裕なのだが、流石に集中力の消耗はどうにもならない。持ち札と言えば、アレクの〈コンセントレーション〉しかなく、これも集中力を一時的に上昇させるものでしかない。集中力の乱れは、消費量の増大を招く。
(早く、早くしてくれー)
焦りが焦りを生み、様々な齟齬を生じさせることは重々承知しているものの、どうしても消耗から焦燥感に駆られてしまう。
にゃん吉の〈蝕雷〉こと毒属性の雷が敵を徐々に蝕み、〈烈風闇〉の黒い旋風が敵を飲み込み、〈火燕巣〉の火の鳥が敵を焦がし、〈雷双牙〉が上空からの落雷で敵を貫いている。
グゥルルルル、ゥガオオォ!
にゃん吉の野太い咆哮が耳を劈く。にゃん兵衛とにゃん助が飛び退り、にゃん吾郎やアレク、アルマロン、ナマケモノーも後方へ下がる。
遥か上空から白色の光が差し込み、ピーマン巨人を一瞬で飲み込んだ。
半径20m程が閃光に覆われ、遅れて爆風が走る。
目映い光が治まると、そこにピーマン巨人の姿はなかった。
やっと……やっと倒したようだ。
無言で拳を力強く握り合うにゃん吾郎とアレク。にゃん吉、にゃん兵衛、にゃん助、アルマロン、ナマケモノーも加わり、一行は喜びを分かち合う。
そう、そこで一段落のはずだった。
矢庭に左右から風が吹き荒び、黒い影が2つ出現した!
トウガラシと茄子の巨人だ!
「な、ナマケモノー!」
「ハイハーイ♪」
素早く2体に〈ナマケルゾー〉を掛け、アレクが〈グラビティ・ショット〉、〈グラビティ・ブラスト〉で更に敵の速度を落とし――急いで逃げる!
(これ以上やってられるかー!)
度々にゃん吉が〈縛呪〉や〈暗止響〉、〈縛影〉で足止めし、一行は【ナシナ】へ逃げ込む。アレクが〈トランジション〉と〈テレポート〉を唱えて時空門まで瞬間移動――した付近には、馬鈴薯の巨人が!
(待てぇい、こら!)
大慌てで通行料を支払って別の都市へ逃げようとするも、馬鈴薯巨人の攻撃が予想以上に早く、射程も長い! 乳白色の粘液が一同に覆い被さるように襲い掛かる! 万事休すかと目を閉じるアレク達。それと同時に花火のような音が鳴り響く。
ヒュー、パァン!
幾ら待っても馬鈴薯巨人の攻撃が降り掛かることは無かった。
恐る恐る目を開けると、馬鈴薯巨人は忽然と消え失せていた。
ヒュー、パァン!
再び花火が上がる。
星が散りばめられた夜空には『終了ー♪』と赤い雲ででかでかと描かれていた。
仰向けにへたり込むアレク達。もうくたくただった。
(早く帰って寝たい……)
暫くしてから、静まり返った【トラッツェ】の住まいへと帰ったアレクとそのお供。その静けさに、アレクは戸を掴んだまま暫し俯く。やおら寝室へ行くと、静かで真っ暗な部屋で、アレクは倒れ込むようにして眠りに落ちた。
――狂乱が明けた数時間後――
『皆さん、“ラ・ピミエンティーナ”はお楽しみ頂けましたか? 製作者一同、童心に返って野菜投げ合戦を楽しみました。おかげで装備が溶解しましたけどね。めげずに生まれたての姿で楽しみましたよ、その後も♪
そして! 贈り物を届けてくれる親切な黒と赤の巨人こと、パパエン・ノエール達からの逃亡劇は如何でしたか? ドキドキ、ハラハラ、ビクビクと背筋の凍る恐怖体験を御堪能頂けたら本望です。私は8回刎ね飛ばされちゃいました。
それでは、第二弾も楽しいフィエスタを御用意しておりますので、お楽しみに♪ アディオス!』
アレクは驚愕した。
目を瞬かせ、開けては閉じてと繰り返す。
目を閉じて上を向き、左手を額に当てる。それからふーっと鼻から長い一息を吐き、やがて寝室の扉を再度開ける。
「待て待てー♪」
「来るなー!」
「わー」
住まいが一層賑やかになっている。駆け回る手足の生えたトマト、茄子、トウガラシ、酸漿、ピーマン、馬鈴薯が3体ずつ。それを追うナマケモノー。のんびり傍観しているアルマロン。
それぞれの種類や特徴は以下の通りだろう。
【茄子】 賀茂なす、米なす、白
【酸漿】 トマティーヨ、赤、黄
【トマト】 桃太郎、黄寿、アメーラ
【馬鈴薯】 ノーザンルビー、ベニアカリ、キタムラサキ
【ピーマン】 ちぐさ、白、フルーツパプリカ(赤)
【トウガラシ】 ハバネーロ、ししとう、アヒ・リモ
アレクはもう一度、左手で目の辺りを覆う。
“ラ・ピミエンティーナ”終了直後の住まいは、確かに静まり返っていた。出る時の保育園の如き無邪気な賑わいが、忽然と消えていた。それを一目見て、『いなくなってしまうと寂しいものだな』と感傷に浸ったアレク。だが、それは気の迷いだったらしい。
彼らはナマケモノーやアルマロンと同程度の知性を携え、アレクの住まいへ舞い戻って来ていた。以前と品種が違っていたりするのは、目の錯覚だろう。
「あっ! アレクー♪」
ナマケモノーが立ち止まり、アレクに手を振る。アレクはこめかみを掻きながら皆の方へ歩いて行く。
●次回は6/3(21時)の投稿です。短めになります。




