13 ★ うさ猫や ひゅるんひゅるりと 枯れ葉舞う ★
●やったぜっ♪
にゃんこ商会万屋ユサベ支店で店番をしていると、凄く格好の良い好みの男性がやって来た。その男の名はアレク。端整で渋く男前且つとても好みなので、飛び掛かって……<欲望大噴火中>……して愛欲に塗れた生活を送りたいなあ。
●信じられない程嬉しいっ♪
『思い立ったが吉日っ!』獲物を狩る時のように身を潜めて……襲い掛かるもかわされてしまった。流石、格好良いエロ紳士おじ様。きっと手練手管の……だ。そして、騙し易いフェルサを壁代わりに使うとは出来る男だ。手強い相手程、骨抜きにする行程は格別の悦び。念を入れて狩るとしよう。
不意打ちを狙うも、再びうさぎ馬鹿のちょろいフェルサで防がれてしまうとは……ぐぬぬ……隙が無いぞ。これは二人きりという、絶体絶命の状況を設けないとだめだ。
そうそう、アレクのおかげで21年(=現実時間)こと84年間(=ゲーム時間)も求め続けていたうさ装備がやっと手に入った。しかも一度に装備一式!やったー、儲けもん。これで世のちょろいおじさん達は一層イチコロイチコロ、シメシメ♪
●むぐぐ
しかしながら、アレクにはそんな画策は悉く見抜かれてしまい、全然二人切りになれず飛び掛かれないっ! 恐ろしいまでの察知能力。これはにゃん吾郎を使ってうまく誘き出し、途中でアレクだけを引き剥がしてその隙に……って全然上手くいかないっ! どうして?
●不法侵入万歳!
そうだっ! 忍び込もうっ♪ 家に忍び込んで待ち伏せをして夜這いをすればいいんだ♪ 二人の家にこっそり侵入して、アレクの物を……嗅ぎ分けては矯めつ眇めつ舐め回し堪能して、そして二人が帰ってくる頃合いを見計らって待つっ!
そこで足音がっ!――しっかり息を潜めて……ってバレてるじゃん。ちょろい馬鹿フェルサを投げ付けてくるとは、意外とアレクは荒っぽいかも!? そうこうしている内に追い出されてしまった……。遭えなく失敗。
●泣き落としちゃう?
アレクはにゃん吾郎やフェルサを誘って一緒に色々な場所へ繰り出して行くのに、何故ころろは誘ってくれないの? 誘いの一声すらないんだけど……。ころろ、悲しくて嘘泣きしちゃいそう。
●むぐぐのぐ
お馬鹿者ガキんちょフェルサは沢山ころろに貢いでくれるっ! そのうちご褒美に少しだけからかってしまおうか♪ それにしても、アレクはやり手なのっ! ころろを一人前の鑑定人として認識し、鑑定物をこれでもかと持ち込んで来て、対価もいっぱいくれるんだけど、それ以上には発展しないの。おかしいっ! 他の男共はころろの可愛さと色香で転がせるのにっ! 『ころにゃんくぁわいい~♪』とメロメロの骨抜きさん。
しかーしっ! アレクは全く騙されることがないっ! それに、うさぐるみの最高品を無言でさらっと渡して来る辺り、信じられない程の怖さだ。むー……初めてのやり手さん……。しかーしっ! 諦めないでよ、燃えるでよ。
●機会到来っ!!
やっほーいっ♪ 明日はアレクがにゃん吾郎の使役獣である虎3頭を見に来るの。あの凶暴虎にアレクが襲われている瞬間を狙って、ころろがささっと救出すれば……<やましい妄想中>……イケナイ生活やっほい♪
●何てこと……
ぐへ……見事に目論見が外れた。期待を裏切って、あの憎き3頭の虎達は初見からアレクに猫撫で声で甘えまくる始末……むきーっ! そこはころろが居るべき場所っ! へたれのでれでれアホ虎には似つかわしく無いっ! 断じて許さないっ! こうなったらへたれ虎を引っ掻き回して、お灸を据えてやる必要があるんだもんっ!
……しかし、それもにゃん吾郎に阻止されてしまう。その上『あなたはまたそうやって、余計なことばかりしようとする。うさ装備一式を2000万ルブロで買い取った際、その不足分を私が立て替えたことをお忘れですか?残金はまだ半分以上残っておりますからね。これ以上、勢い任せで愚かな真似をなさるのはやめにして下さいよ』と小言を沢山言われてしまった。これはまずい。アレクに飛び掛かる機会が減ってしまう。
●邪魔者退散っ♪
やっほーいっ♪ 邪魔者ガキんちょフェルサが別の地へ行き、アレクが一人となり飛び掛るには絶好の機会が到来♪ 楽しみ過ぎて妄想が膨らんじゃう♪
●気を引き締めて
なんてこと……アレクは警戒心が強過ぎなんだぜ。画策する傍からどんどん見破られて行っちゃうのっ! でもでも……その感じやすさなら……きっと……<妄想爆発中>……♪ 早くアレクを捕まえないと……。
●妄想大爆発っ♪
やっほほーいっ♪ 絶好の機会到来と言いたかったけど、興奮し過ぎて思わず噛んでしまった。アレクと二人きりで“練習”の約束を取り付けちゃった♪ 何でもぉ、敵の攻撃を回避する方法や受身の取り方、身のこなしを教わりたいんだって♪ ころろが手取り足取り、体取り……<欲望全開>……もう妄想と興奮で眠れなーいっ♪
●へこたれそう
ぐへへのへ……なんてこったい、取らぬ狸の皮算用。ころろの“指導”じゃなくて、ころろが回避する仕方を見本にして学びたいだけだった。ころろをあっちこっちに連れ回して敵の渦中に突っ込めと指示して散々扱き使うだけ扱き使って捨てるなんて、ひどいっ! しかも、にゃん助をちゃっかり伴っているなんて……。むむむ……ころろという愛しの存在がいながら“他の女”を連れ込んで、ころろの愛を試すとは……。アホ虎(にゃん助)をこてんぱんにしてやるっ!
ぬぐぐ、結局ころろはアレクに近付けず仕舞いで一日が過ぎてしまった……。えーん、悲しいよー。ころろ本気で泣いちゃうおうか!?
●やっと実った!
やったー♪ アレクがころろのため“だけ”に美味しい料理を振舞ってくれるんだって♪ 特別だって♪ すんごいすんごい……むふふのふ♪――ドンっ――おっと……興奮し過ぎて検品中の商品を壊しちゃった、てへ♪ アー、にゃん吾郎が何か言っているけど、キコエナーイ。明日アレクがころろを優しく優しく……<妄想の彼方へ旅立ち中>♪
●楽しかったですまる
美味しく楽しく皆でご飯を食べました。以上っ!……どうしてなのっ! 何で余計な邪魔者が沢山いるの? それじゃころろとアレクが愛の巣で楽しめないじゃーん。アレク、全然姦計に引っ掛からない……何でそんなに鋭いの?
●天誅をっ!
にゃんてことっ!! アレクが遠くの地へ行ってしまうっ! まだ飛び掛っていないのにっ! ころろを置いて行くなんて酷過ぎるっ! 荷物に忍び込んでついて行っちゃうもんっ! ってどうしてバレちゃうの? 魔法でお店に飛ばされてしまった。ころろとは会う約束をしていないのに、デブにゃん吾郎の奴は今後も楽しい仲を築いて行くらしいのっ! ずるい、ずるーいっ! 許せんっ、中年洋梨デブ吾郎! いざ討ち果たしに参らんっ!
「恐らくこんな感じですよ、にゃん吾郎さん」
アレクは手渡された紙をにゃん吾郎に返す。
にゃん吾郎は首を傾げながら手元の紙を眺める。
「……よくこのような落書きを判読出来て、更に理解も出来ますね」
「なんとなく判りませんか?」
「いいえ、さっぱりです。店の整理の際に発掘された物なのですが、何て書いてあるのかサッパリ判らなくて、扱いに困っていたのですよ。いやあ、助かりました。それにしても、あの人はこんな事を考えていたのですね……」
(色惚け猫って、気付いてなかったのかな? 恐らく現実では全然違う人なんだろうけど、『ゲームだから妄想欲望全開っ! 枷なんて糞食らえいっ♪』って辺りかなー)
「はぁ……にゃんこ商会の集いには連れて行かなくて正解だったようですね。この様子ですと、連れて行っていた日には被害者が何人出ていたことやら……」
「ははは。恐らく既に方々で奔放に愛欲全開暴走劇場を繰り広げていますよ」
思わずたじろぐにゃん吾郎。
「そ、それは……大丈夫なんでしょうかね……?」
「ええ、おじさん連中はちょろいって書いてありますから、惑わされるなり篭絡されているおっさん共も好きで騙されているか、騙されていることに気付くことは一生無いか、でしょうね」
「お、恐ろしいですね、ある意味」
「天然と計略を駆使してここまでやるとは、凄いですよねー」
(そのあざとさと、貫徹する所だけは本当に凄いよな)
「しかし、貢いで貰っているならば、どうしてうさ装備を買い取った時に手持ちが足りないなんてことに?」
「……それは……手持ちが無かったんじゃなくて、出来るだけにゃん吾郎さんに出させようとしたのかと。よくよく観察すると、指輪や腕輪、首飾り、耳飾り、装備などが頻繁に変わるんですよ。そしてどれも宝飾系の値が張りそうな物ばかりなので、きっと資産は潤沢ですよ、あの人。だから、俺は最高品である格:+15、質:+10の“うさぐるみ”1つを手切れ金扱いとして最初の頃に渡したんですよ。あれって、10億単位の価値だとか?それだけ渡せば、邪険に扱おうが文句は言わせないと。鑑定人としては敬意を抱いていますが、それはそれです」
深いため息をつくにゃん吾郎。
「それにしてもアレクさん……意外や意外にとても強かなのですね。しっかり者であるとは思っていましたが、女性を見抜く力もあり、そのあしらい方も心得ているというか……」
「ころろさんみたいな人には沢山言い寄られて来ましたからね。好きな人には告白しようが断られることばかり……乙女心って、よーわからん」
空を見つめる様にして此方を見、複雑な調子で言葉を紡ぐにゃん吾郎。
「……羨ましくもあり、悲しい感じでもありますね……」
「ところで、よくあの役者猫と同居出来ますね」
「眺めていて楽しい人ですからね。絵の題材としても面白いですし。何より同じ猫好き仲間でもありますからねえ。猫の話だと非常に盛り上がるんですよ。虎は嫌いみたいですが」
(そこかっ! それが一緒に居られる理由になっとるんかいっ!)
にゃん吾郎の伝手により確保出来た賃貸の新居――ぬこ商会に属する、ぬこ動産“殺陣っ・ぬこ丸”築の大きな樹と石と木造の家――にて、肴を片手ににゃん吾郎との語らいは続くのだった。
●前半はころろの落書き的な日記をアレクが訳してみたものです。全て正しいとは限りません。
が、うさ装備を求め続けた年数(ゲーム時間で)は84年程が正解です。ころろは若作りのために、敢えて勘違いを誘うよう21年と書いていますし、他人に言う場合も現実の年数で言います。嘘にはなりませんので。
●アレクが万屋で3頭の虎と会った際に、にゃん兵衛が警戒していたのは“隠れて機を窺っていたころろ”です。にゃん吾郎は最後まで気付きませんでしたが、アレクはころろが覗いていることに気付いていました。
●にゃん助は名前の通り、“雄”です。
●『天誅をっ!』の部分でアレクがころろを魔法で転送させていますが、その魔法は〈トランジション〉です。
〈トランジション〉:対象(自身以外)を転送させる
転送距離:それなり
再使用時間:30分
最低消費MP:128 ・ 最低消費SP:274
属性:重
習得可能レベル:35以上
※詠唱者が知らない場所へは転送出来ない
●もう暫くほのぼの路線で、戦いの描写は18話になります。




