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1話 誰かを助けて、助かること その1

ー1ー


俺は肩を見る。そこには尻尾にかけて薄く消えかかった蛇が顔を出して舌をチョロチョロさせている。まあ簡単に話せばこの尻尾を最後まで完成させれば俺の旅は終わりである。いつものように、肩を見ながら山を歩いていく日々。暗中模索の人生である。


雪はだいぶ溶け始め、木々には少し蕾がある。鳥たちは静寂の中を駆け抜けるように鳴く。その声は、山全体をおっとりとした空気に包ませる。そして俺の地面を踏む音。しゃく、しゃく、しゃく、しゃく…。春の訪れを間近に控えた山は、溶けかけた雪と、朝の凍った地面から音を奏でる。さみしいというよりは、帰って落ち着く時間である。まあ山の中をズボンにパーカーの現代風なやつが朝からのんびり歩いていれば、そこいらに住むものは、珍しがって声をかけたがる気持ちもわかる。子供と目があった。こちらに向かってくる。ため息混じりではいた息は、白く舞い上がり、消える。

「おい、お前」

少年とも少女とも取れる声で話しかけられた。改めて容姿を見るとまあ普通の格好である。それこそ街に住んでるような子供の服装である。街の子供と違うのは、俺を今にも殺しそうな眼で見つめ、続いて俺の青い髪とでかいカバンを見たということ。そしてその子が、自分の身の丈には合わない大量の木を背負い、両手に持っているバケツに少し濁っている水をいっぱいに持っていることだった。

「なんだい?」

こういう返し方をして、相手が好印象を抱いてくれたことは、一度もないのに、同じことをしてしまう。

「ふざけんなよ。どこの村の野郎だ!いいか?ここはうちの村の敷地だ。よそ者がやすやす入ってくる場所じゃねーんだ。」

その子はそう言って、歯を立て、睨んできた。その目の奥に、深い感じがしたので、隣のヘビを見てみるとやっぱり色が強くなっている。間違いない。ここに俺の手がかりがある。子供は、必死に問い詰める。

「何よそ見してるんだ!!いい加減にして、早く出てけ!」

「まあまあ。落ち着けよ。俺はどこの村にも属していない旅人さ。まあ強いて言うなら、ちょっと特殊な病気専門の医者だ。でも、泊まるところがなくて困ってたんだ。ほんの少しの間でいい。とにかくお前の村に案内してくれないか?」

一瞬、俺が少し変わった医者だと言った時、戸惑いがあった。

「そんなのは、信用できねーってんだ。もしかしたら、ただ飯だけ食って何もせずに帰るかもしれないじゃないか」

その後も、その子はなかなか俺を信用しなかったが、ずっと立ち話で疲れてしまったのか、はじめの勢いがなくなってきたので、手に持っているバケツなら持つよ、ということでようやく村に入ることができた。まあ、その子曰く「こぼしたらただじゃおかねーぞ」ということらしいが。

さて、俺が村にここまでして入る理由は3つである。まず一つはこの子の住む村である。たいていヘンテコな制度に縛られている村は、辛い表情をしている。そしてその中に楽しみを見つけようとしている。この子が驚いた原因の一つは、村の変革に関わってくれるかもしれないという希望だろう。二つ目は、おそらくこいつの身近に俺を必要とする患者がいる。三つ目は続きのようなものだが、その患者を含め、ヘビが俺にも関わる話だと言ったからだ。俺の治す手がかりとあらば、行くしかない。


村についた。予想通り、中のやつは目が死んでる。なんだかんだで、俺は先ほどの少年から名前を聞けた。「ミミってんだ。いろんな人の話が聞けるように付けてもらった名前なんだ」。へー、いろんな人の話をね。俺はそのままミミの住む家に案内された。中には誰もいない。彼の父親と思われる人の仏壇があった。バケツを無事運んだことに対し、ミミの警戒心は完全に解けたようだ。まずは村長に合わないといけない、行かなければ、見つかった時点で殺される、と。


こじんまりとした村である。まあ、山ん中の村なんてこんなもんか。「江戸時代にいる気持ちになるー」と、街に住むものは言うような風景である。どうやら、食料は完全に山に依存しているようだ。そうこうしているうちに、気づけば村長さんが前にいる形で座っていた。一通りのことはミミが話した。それにしてもめんどくさそうな野郎である。村長は口を開いた。

「ヤクスリ。貴様が悪意がないかどうかはわからんが、この村にしばらくいるくらいは許してやる。ただし村の掟には従ってもらう。おいミミ、お前のところはちょうどいい、男一人空いているだろう。そこに住まわせろ。」

少し違和感を俺は感じながら、俺は生意気に言わせてもらった。

「すみません村長さん。俺ももう大人でございますので、郷に入っては郷にしたがえ、わかっております。しかし、私は医者でございますので、悪いところがあるものは、治療します。いいですか?」

「ふん、勝手にしろ。余計な真似はするなよ」


俺は先ほどの会話に少し収穫を感じながら横で、あんたすげ〜な。村長に意見いう奴なんて始めて見たよー、っていうミミに聞いた。

「悪いな。さっきからわかんなかったんだが、『男一人分空いてる』ってどういうことだ?初めて聞いたんだが…」

「あんた知らないのか。この村では人口の増え過ぎを抑えるために、掟があるのさ。一家は必ず四人で、子供は男と女一人ずつ。もし多く産んだ場合は早いもの順。あとは全員売られるの。それを拒めば殺される。そして、村を出る人間も、必ず子供がいなければならない。だから、結婚した人たちは、すぐに子供を産むことに必死なの。二人産めば、自由と温かい家庭が約束されるから…」

「隠し子とかはないのか?」

「そういうのは殺されちゃうし、見つけた人には、お金がもらえるわ」

これは、かなりえげつないな。確かにこの村の人口はそれで増えも減りもしない。

「ミミはそういうの、平気なのか?」

「他の村もそうなんでしょう?あなただけだよ、知らないの」

なるほどな。だいぶわかってきた。夜には母親が帰ってきた。事情はミミが話した。飯は確かに普通の村のものより栄養価が高かった。夜はそこの畳の上で雑魚寝だった。確かにな。もうすぐ真夜中っていうのに村の偉そうな奴らが最後に一件一件見て回ってるところから察するに相当縛りがきついな。ふと、ヘビに起こされた。見るとミミがカバンを開けようとしていた。

「おい、ふざけんな!!」

声を押し殺しながら、俺がミミに飛びかかって締めた。想像よりも体はしっかりしていなかった。こんなに脆い体であんな大荷物を運んでたのか。ミミは怯えているのを感じながら、俺はため息をついた。


このカバンはこういう時狙われなかったことはない。大体の村は貧しく、こういう珍しいものは盗んで金にしたがるものだから、覚悟はしていた。彼は、幸い興味本位だったので、よかったが…。


夜である。俺は周りを確認しつつカバンを開いた。漆黒の中たくさんの笑い声が聞こえる。俺にだけ。中から白い花とレイを取り出した。彼に聞いた。

「俺の右手に何か見えるか?」

目を細めながら彼は答えた

「何も」

次にレイ花を嗅がせた。少年の目に次第に俺の手の上にいる小さなネズミのレイの姿が映る。驚かず見ている。

「この花は嗅いだ人間の視覚をマヒさせて、レイを見えるようにする。今は少しだけだから弱いものしか見えない。このレイは人に取り付き悪さをする。」

俺は少年と向き合った。


目を見つめる。


「さあ、あんたが隠していることを、話してもらおうか」


To be continued...

「山の奥から声がする 1話 誰かを助けて、助かること その1」をお読みいただきありがとうございます。花恋音です。いよいよ本編スタート!ということではりきってしまった結果、3000字強という大変長文スタートとなりました。自分的には結構いいスタートだと思います。前置きとして伝えられるものは伝えられた感じです。おそらくこんなに長いものは頻繁に上がりませんが…改行をもっとした方がいいのでしょうか?ご意見、ご感想あらば、このページ、またはTwitter(@Karen_7110)にぜひお願いします。それでは次回もお楽しみに。

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