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メカヲタ転生して守護竜になる ~兵器の性能差が勝敗を分かつ絶対条件だと教えてやる!~新装版!  作者: ななよん
成竜編

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第六十三話 ”悪くねぇ”

俺の名はジリオン。偉大なる獅子の獣人で、レイヴンズのフロントアタッカーだ。前に出て、敵を仕留める。それが俺の仕事で、それが俺の本分だ。


で、今。俺は要塞の一室で、絞られている。


「貴様、自分が何をやらかしたか分かってんのか」


ミカルの爺さんだ。あの爺さん、声がでかい。耳がびりびりする。


「分かってるさ。オーガが出た。強そうだった。だから狩った。何が悪い」


「指揮を、無視しただろうが」


「だってよ、爺さん。ゴブリン相手じゃ、欠伸(あくび)が出らぁ。せっかくの大物を、見過ごせってのか」


俺は本気でそう思っている。獲物が目の前にいて、それが強けりゃ、追う。当たり前だろう。理屈じゃない。腹の底が、そう言うんだ。


ミカルが、こめかみに青筋を立てた。何か怒鳴ろうと、息を吸った――その時だった。


「ジリオンさん」


小さい声がした。


ヴィだ。半妖精のチビ。うちの指揮官様、ってことになっている。いつも俯いて、ぼそぼそ喋る。盤面を読ませりゃ大したもんらしいが、正直、俺はこいつをよく知らないし小動物程度の脅威しか感じない。


「私の指示を、聞いてくれませんでしたよね」


「おう。悪かったな」


口では謝る。だが、腹は動かない。こんなチビに何が分かる、とまでは言わねぇが――こいつの言葉は、俺の中をすり抜けていく。重さがない。格、ってやつがな。


ヴィが、何か言いかける。けれど言葉に詰まって、(こぶし)を握ったまま、俯いた。ほら見ろ。


──と、その時だ。


うなじが、ぞわりとした。


何かに、見られている。背中の毛が、ぶわっと逆立った。獣の本能が、全身で警告を鳴らしている。逃げろ。動くな。死ぬぞ、と。


ヴィの後ろ。そこに、主様が立っていた。


いつものほわっとした空気を纏った、優しげな青年だ。なのに――その目だけが、こっちを見ていた。


捕食者の目だった。


俺は、獅子だ。草原じゃ、頂点に立つ獣だ。なのに、その目に射抜かれた瞬間、俺は――(うさぎ)になった。喉が、ひゅっと鳴った。四肢が、勝手に縮こまる。尻尾が、股の間に入っていくのが分かった。


格が、違う。次元が、違う。あれは、俺たちと同じ生き物じゃない。


「マキナ様!」


ヴィが、マキナ様に振り向いた。


「邪魔しないで下さい! これは、私が掴まなきゃいけない信頼なんです!」


……は?


俺は、自分の耳を疑った。


このチビが。さっきまで俯いて、ぼそぼそ喋っていたチビが。俺を一瞬で兎に変えた、あの化け物に――まっすぐ、噛みついた。


部屋中が、(こお)りついた。セラもターニャも、目を丸くしている。


そして、当の主様は。


「あぎゃ。……ごめん」


そう言って、すごすごと下がっていった。


「ぶはっ」


カルミナが、()き出した。


「ハハッ、 見たかあの主様の顔! 小娘に叱られて、しっぽを巻いて妾の元へ逃げ帰って来おったわ!」

「うるさいですよ、カルミナ。」ふんっといじけてみせるマキナ様。


言われても壁際で腹を抱えているカルミナ。

メルフィーナと、客人の姫さんも、口元を押さえて笑っていた。場の強張(こわば)りが、(うそ)のようにほどけていく。


俺は、笑えなかった。


ヴィが、こっちに向き直る。さっきと同じ、小さなチビだ。俯きがちで、頼りない。


なのに、俺は今、こいつから目を逸らせない。何ならちょっと怖い。


こいつは、俺が兎になった相手に、噛みついた。逃げなかった。震えてもいた。怖くなかったわけが、ない。あの目を間近で受けて、それでも背を向けなかった。


「……私が」


ヴィが、俺を見上げる。


「私が、皆さんを守れる指揮官になります。だから――次は、聞いてください」


声は、まだ細い。けれど、もう逸れなかった。


腹の底が、ずん、と鳴った。さっきとは違う鳴り方だ。


これは――(みと)めた、って音だ。


獣は、力では群れの長を選ばない。胆力で選ぶ。一番ヤバい相手に、一番に立ち向かう奴。背中を見せない奴。その背中にだけ、ついていく。


俺は、片膝(かたひざ)(ゆか)についた。自分でも、なんでそうしたのか分からない。体が、勝手に頭を下げていた。


「……承知した。指揮官殿」


ヴィが、目を丸くした。それから、ふにゃ、と笑った。


その時、でかい手が、俺の頭をわしづかみにした。


「ようやく分かったか、犬っころ」


ミカルの爺さんが、にやにやしている。


「お前ら、寄せ集めだ。元は敵だった奴もいる。いがみ合う理由なんざ、探しゃいくらでも出てくらぁ。だがな」


爺さんの声が、低くなる。


「お前は、誰の為の力だ。仲間といがみ合って、お前の守りてぇもんが、守れるのか」


返す言葉が無かった。


「それから、犬っころ」


爺さんが、牙を見せて笑った。


「俺もな、マキナ様からアーマードパックを頂いたんだ。後で、たっぷり揉んでやる。覚悟しとけ」


「……はっ。上等だ、爺さん」


俺は、笑った。久しぶりに、いい獲物を見つけた時みたいに、腹の底が(うず)いた。


レイヴンズ。寄せ集めの、烏合の衆。


だが――悪くねぇ。ここは、悪くねぇ群れだ。


「聞いてますか!?ジリオンさん!」


また尻尾が股の間に入っていた


63話・了

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