表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メカヲタ転生して守護竜になる ~兵器の性能差が勝敗を分かつ絶対条件だと教えてやる!~新装版!  作者: ななよん
幼生体編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/68

第五話 メカヲタ、決心する

挿絵(By みてみん)

翌朝、メルフィーナに頼んで、騎士団の演習を見せてもらうことにした。まずは、この国の戦力を自分の目で確かめておきたかった。


広い訓練場に整列した騎士たちは、メルフィーナ王女に抱かれた僕を見て一瞬ざわついたが、すぐに隊列を整えた。規律は悪くない。


黒板に書く。


[隊ごとに分かれて、武を示してほしい]


メルフィーナが声に出して伝えると、号令一つで動きが変わった。


剣士隊が一斉に剣を抜く。型を刻む動きが揃っている。一人一人の精度が高く、隊としての統率も取れていた。


弓兵隊が的に向かって一斉に構える。放たれた矢が、ほぼ同じ場所に集まった。100人規模の弓兵が、揃った練度で射撃を繰り返す。


良い練度だ。射程も精度もある。使っている弓は、おそらくコンポジットボウの一種だろう。


隅では若い騎士たちが地図を広げ、議論を始めていた。1000人の中でも優秀な者たちなのだろう。各自が戦術論を持ち寄り、城塞都市奪還作戦と銘打って策を練っている。


もっとも、この戦力差では、彼らの戦術など机上の空論でしかない。だが、その気持ちは分かる。


ドラグロード王は諦めていなかった——そう分かるだけの練度だった。ただ、手段がなかっただけだ。練度が高くても、1000人は1000人。魔法があっても、それは相手も同条件。竜に守られて(なが)らえてきたという屈辱が、この国にはあるのだろう。


  ◇


演習の後、格納庫へ案内してもらった。


扉を開けた瞬間、思わず動きが止まる。予備の鎧、剣、盾が、山のように積み上げられていた。1000人分どころではない。いつでも数を増やせるよう、ずっと用意し続けてきたのだろう。


数を抑えてきたのは、諦めていたからではない。機会を待ち続けていたからだ。


ただ——残念ながら、数が圧倒的に足りない。装備を磨いても意味はない。1000人は、1000人だ。この数で万単位の軍勢を相手にする方法は、僕にもまだ見えなかった。尻尾が静かに垂れた。


  ◇


その後、メルフィーナの部屋で、山積みの書物を読み込んだ。軍備の記録、財政の帳簿(ちょうぼ)、各国との交易記録。魔法に関する書物も、手当たり次第に開く。


読めば読むほど、この国の綱渡りの精度が分かってくる。宝石を細く売り、鉱石を守り、神聖国に口実を与えず、連邦との関係を切らさない。ドラグロード王は13年間、これだけの精度で国を保ってきた。


大したものだ。そして同時に、分かってしまう。——この国は、もう限界だ。


帳簿の数字は正直だ。じわじわと国力が削られてきた痕跡が、そのまま残っている。あと何年もつか、計算するまでもない。


顔を上げると、すぐ傍らにメルフィーナが座っていた。いつからそこにいたのか。黙って、僕を見つめている。その目には、不安と期待が入り混じっていた。


僕はまた書物に目を落とす。守護竜契約について読んだ。仕組み、抑止力の範囲、条件。読み終えて、一つの結論が出た。


僕が何もしなければ、この国はこのまま終わる。


神聖国の立場で考えれば、今が攻め時だ。先代守護竜が契約を解除した、この隙。新しい守護竜がまだ力を把握していない今、動かない理由がない。


僕ならまず、南東連邦との物流ルートを封鎖する。ドラグナートに揺さぶりをかけ、王都を封じ、ドラグナートを落とす。それで終わりだ。


そのひと手を、ドラグロード王は13年間、打たせずにきた。


書物を閉じる。この王、只者じゃない。どうにか、彼の頑張りに報いてやりたい——そんな思いが込み上げてきていた。


問題は、手段だ。次の書物に手を伸ばす。ぱらぱらとめくって、ふと手が止まった。


ゴーレムの記述だった。


太古より存在するとされる魔術の産物。岩や砂、時には金属を素材に、魔力で動かす。ダンジョンが自律的に生み出す場合もあると記されている。人の手で作られたものは不格好な塊が多く、精度も低い。しかし、動く。魔力さえあれば、確かに動く。


僕は、その(ページ)から目が離せなくなった。魔術だ。だが、これは——初めて、この世界の魔術の中に、メカを感じた。


作れるかもしれない。


まだ答えとは言えない。だが、頭の中で何かが動き始めていた。メルフィーナの目が、まだそこにあった。僕は黒板を引き寄せた。


  ◇


翌朝、王への面会を申し出た。謁見の間に通されると、ドラグロード王は静かに待っていた。大臣も宮廷魔術師も居並んでいる。


王が口を開いた。

「どうであった。愚王の愚王たる理由が、分かったのではないか」


僕は首を振った。王はそれでも続ける。

「13年だ。私が守れなかった城塞都市が落ち、先代守護竜の情けでどうにか続いてきた。だが、期待した新しき守護竜は古代竜のトリプル。亡き妻の願いをこめたメルフィーナであっても契約できぬほどのそなたが、来てくれた。……いや、来てしまったのかな」


その一言が落ちた瞬間、大臣が顔を伏せた。宮廷魔術師の肩が、小刻みに震える。騎士たちの間にも動揺が走った。そして、皆が頭を下げ始める。

「この愚王の頭に何の価値も無いだろうが、それでも伏して願う。頼む、古代竜よ。この国を救う力を貸してくれ」


全員が頭を下げた。ただ一人、メルフィーナだけが顔を上げ、僕を見ていた。涙を溜めたまま、まっすぐに。


僕はメルフィーナの目を見た。そして、ドラグロード王の言葉を反芻(はんすう)する。


13年、か。


気づいたら、尻尾が動いていた。スパーン。乾いた音が、謁見の間に響く。全員が頭を上げた。


僕は黒板を高く掲げる。


[分かった]


短くそれだけ書いて、ふふんと笑ってみせた。


——いい国だ。亡ぼすには惜しい。


その瞬間、メルフィーナが走り出した。誰より早く、まっすぐに。気づけば、僕はその胸の中にいた。


涙が、温かかった。声を殺して泣いている。それでも腕の力は緩まない。痛いほど強く、離したら消えてしまうとでも言うように、小さな僕を抱きしめていた。


震えていた。この少女がどれだけ思い詰めてきたのか、それだけで分かる。


誰も、何も言わなかった。ドラグロード王が、小さく息を吐く。尻尾がゆっくりと、一度だけ揺れた。


第五話・了

読んで頂きありがとうございました!


「星評価」、「ブックマーク」、「いいね! 」


よろしくお願いします!!


感想やご意見有れば是非お聞かせくださいね!

(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ