表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メカヲタ転生して守護竜になる ~兵器の性能差が勝敗を分かつ絶対条件だと教えてやる!~新装版!  作者: ななよん
幼生体編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/74

第三十一話 動き出す開発計画(挿絵追加しました)

挿絵(By みてみん)アームズパック・アーチャー

エルダだけが残った工房で、僕は黒板を見つめていた。


二つの開発が並行で動き出す。僕一人で作る物ではない、開発チーム一丸となっての初作業だ。


エルダが机に腰を預けた。


「マキナ殿。お前さん、これ、ようここまで考えたな」


[考えるのは早い。作るのが難しい]


「ほな、二班体制で工程をどう組むか、明日からや。素材は何が足りてへん」


[ペントランダイトの硫黄抜きが要る。これはハルトアイゼンの方が早い。こちらから素材を送ってある]


「あー、ニッケル取り出すんやな。あれは親方とゲパルトに頼んだら早いで。ニッケル、コバルト、モリブデン、チタン——マルエージング鋼の構成元素は、もうこっちに在庫がある。装具のフレームに使えるで」


[タイタンなどに比べれば総量は少なくなるが]


エルダが軽く頷く。


「ボウ・ライフルの方は、シリンダー筒の素材が問題になるな。圧縮空気の圧力で破裂したら洒落にならん」


[ミスリル含有の合金で行く。酸化しないし、魔力結合鍛冶で内部の継ぎ目を消せる]


「ほな、ハルトアイゼンの親方衆に相談やな。ミスリル鍛冶の本職や」


[頼む]


エルダが頷く。


「マキナ殿、気ぃつけや」


僕は何の事か分からず首を傾げる。


「お前さん、こういう時、寝ずに突っ走る癖がある。姫さんも心配するやろ、お前さんも体は壊さんとな」


ぐっ。


[気を付ける]


「言葉だけ達者やな」


エルダが小さく笑う。


「ほな、明日からや。ワシも一旦戻って、技師達と打ち合わせするわ」


エルダが工房を出ていった。


---


工房に、一人になる。


設計図を広げた。両腕のフレーム形状、関節部の駆動機構、背面板の衝撃吸収層、ゴーレム式アームの基部構造、ボウ・ライフルの筒断面、ライフリングのねじれ角、矢じりの規格——書き出す事が山ほどある。


今のところは、拠点防衛用。機動力の低さは弱点ではなく、用途特化の結果だ。山岳地帯の天然要塞を持つドラグロード王国に、適した兵器形態。攻勢に転じる段階はいずれ来る。その時には別の発展形が要るだろう。だが今は、目の前の物を作る。


筆を取った。


---


「マキナ様」


入口で、軽い足音がした。メルフィーナが、湯気を立てる盆を持って立っていた。椀と、温かいパン。


「あぎゃ」


「今日は早めの夕食です」


[まだ夕方になっていない]


「今からお食事をなさってください」


メルフィーナがにっこり微笑んだ。


「またお食事をねじ込ませないでくださいね」


読まれていた。僕は黒板に書きかけて、止めた。メルフィーナの微笑みは優雅だが、有無を言わせない種類の微笑みだった。


[頂きます]


「はい、どうぞ」


メルフィーナが盆を作業台の上に置いた。設計図の上に直接置きそうな所、彼女は丁寧に脇によけてから配置した。


「お仕事は、お食事の後で続けて頂けます」


[ありがとう]


「いいえ」


メルフィーナが微笑んだまま、僕の前に屈み込む。


「マキナ様。ご無理だけは、なさらないで下さい」


僕は肉を一切れ咥えながら顔を上げた。


[気を付ける]


「いつもそう言って、ご無理ばかりじゃないですか」


エルダと同じ事を言われた。僕は耳をぺたりと寝かせた。


メルフィーナが小さく笑う。


「お早めにどうぞ。冷めない内に。楽しみにしております。マキナ様の次の発明を」


そう言って、彼女は去った。


---


椀から、湯気が立ち上っている。


僕は尻尾を一度床に打ち付けてから、設計図をチラッと見て、椀に向かった。


静かに口を運ぶ。刻んだ肉と根菜のスープに、香草が浮いていた。温かい。塩加減も丁度いい。美味い。メルフィーナが厨房に伝えてくれた味なのだろう。僕の好みを覚えてくれている。


椀を空にしてから、パンを千切って口に運ぶ。これも温かい。湯気が立ち上がる。


明日から、始まる。二班並行の開発体制。アームズパック・アーチャーとボウ・ライフル。エルダ達ドワーフ技師との共同作業。長距離行軍の制約を抱えた、拠点防衛用兵器の完成へ。


そして実証実験——これには協力者が要る。あの男に、頼もう。


---


翌朝。


工房に技師達が集まる前に、僕は使いを出した。王都騎士団詰所宛て、宛名は——ヴェルディ・カーリス。


書状の中身は短い。守護竜の工房まで一名出頭されたし、用件は協力依頼、と。判はマルキウス王のものを借りた。執務を通して貰い、王の決裁を得てある。


使いが出ていってから、僕は工房で素材の整理を始めた。インベントリから取り出すマルエージング鋼の鋼塊、ハルトアイゼンから送られて来たミスリル原石、雷属性魔石の試験用ロット。これらを作業台に並べていく。


午前の半ばに、技師団が到着した。エルダが先頭、その後ろにクラウス、イーリス、ブルーノ、そしてドワーフ技師達。各人が手に図面と工具を持っている。


「マキナ殿、来たで」


エルダが工房を見回した。


[もう一人来る]


「もう一人?」


[実証実験の協力者だ]


クラウスが顔を上げた。


「装着者、ですか」


[そう。今、呼んでいる]


イーリスが頷いた。


「装着試験には、体格の標準的な方が要りますね」


そのタイミングで、工房の入口に足音が止まった。


---


「失礼致します。守護竜様」


声に振り返る。


入口に立っていたのは、革鎧の上に騎士団の外套を羽織った青年だった。短く刈った金髪。日に焼けた肌。背は前より伸びている。胸板が厚くなり、肩幅も広がっていた。


僕は記憶を辿る。一年余り前、砂鉄を運んでくれた従士。試作ドリルの開発を手伝ってくれた男だ。あの時はまだ少年と青年の境目だったが、今は青年の体になっている。


[久しぶり]


ヴェルディが深く頭を下げる。


「ご無沙汰しております、守護竜様。お呼び立て頂き光栄に存じます」


声も低くなっている。落ち着いた口調だ。あの「は、はいっ」と裏返っていた声の名残は無い。


エルダが横で僕を見ていた。


「マキナ殿、知り合いか?」


[騎士団従士のヴェルディ・カーリス。一年前、砂鉄精錬と試作ドリルの実験を手伝って貰った]


クラウスが頷く。


「あの試作ドリルの装着試験を担当した方ですか」


ヴェルディが姿勢を整えた。


「はい。守護竜様の試作ドリルに魔力を流し、岩を穿つ試験を担当致しました。あの時の経験は、私の財産で御座います」


敬語が綺麗になっている。


クラウス、イーリス、ブルーノが順に名乗り、ヴェルディがそれぞれに礼を返した。最後にエルダが腕を組んで頷く。


「エルダ親方や。師団長兼魔石加工担当やで。ええな?」


「親方、宜しくお願い致します」


ヴェルディが各人に深く頭を下げた。動きが落ち着いている。礼の角度も適切。騎士団員としての所作が身に付いている。一年で、随分変わった。


---


技師達の顔合わせが終わってから、僕はヴェルディに向き直った。


[新しい装具を作る。アームズパック・アーチャー、弓兵用の部分強化外骨格だ]


ヴェルディの目が、軽く動いた。


[装着者を立てて、実証実験を進める。体格の標準的な人物が要る。弓兵の動作を試験する。ヴェルディ、頼みたい]


ヴェルディの呼吸が、止まったように見えた。僕は続けて書く。


[実験体になってくれ]


工房に、静かな緊張が落ちる。


[試作機の装着、動作試験、不具合の報告、改良後の再試験——一連の工程に、装着者として協力して欲しい。危険を伴う事もある。人体に直接装具を着ける、装具が暴走すれば怪我をする。途中で離脱を選択していい]


ヴェルディは、暫く黒板を見つめていた。それから、姿勢を正す。


「守護竜様」


「あぎゃ」


「光栄で御座います」


ヴェルディの声は静かだったが、揺らいでいなかった。


「あの時、岩を穿つ試作ドリルを持たせて頂いて以来、私はずっと考えておりました。守護竜様のお傍で、もう一度お役に立つ機会があれば、と。今、その機会を頂いた。私で良ければ、お任せ下さい。装着試験、動作試験、不具合の報告——騎士団員として、人として、全力で取り組みます」


ヴェルディが、深く頭を下げた。


エルダが小さく笑う。


「マキナ殿、ええ男選んだな」


[そう思う]


クラウスがヴェルディの体格を一度眺めた。


「身長、肩幅、腕の長さ——標準的な範囲内ですね。アジャスト機構の試験にも丁度良い」


イーリスが続いた。


「採寸させて頂きます、ヴェルディ様。装具の各部位の寸法を取らせて頂きたく」


「はい、お願いします!」


ブルーノが頷いた。


「装着試験の前に、魔力反応の確認もさせて下さい。雷属性魔石を体に近付けて、装着者の体質との相性を見ます」


「畏まりました」


ヴェルディの返答に、迷いが無かった。


---


採寸が始まった。


イーリスが革製のメジャーを取り出し、ヴェルディの肩幅、腕の長さ、肘から手首、胸囲、腰、太腿、脛、足首——順に測っていく。数値をその場で図面に書き写す。


ブルーノが雷属性魔石を小さな筒に入れて、ヴェルディの手のひらに近付けた。


「何か感じますか」


「ほんのり、温かい様な気が」


「人によっては痺れや拒否反応が出る場合もありますが、ヴェルディ様の体質なら問題なさそうですね」


クラウスが図面を引き出して、ヴェルディの体格に合わせた装具の試作寸法を書き込んでいく。「肩関節の駆動部はここ、肘の伸縮機構はここ、背板の取り付けはここ」と独り言の様に呟きながら、確実に手を進める。


エルダが横でブルーノに指示を出している。


「ブルーノ、魔導回路の試験ロットも一つ作っとけ。装着前に魔石の出力特性を確認しとくで」


「は、進めます」


僕は宙に浮かんだまま、その光景を眺めていた。


動き始めた。技師団が動いている。僕一人では成立しない物が、こうして組み上がっていく。エルダ達ドワーフ技師の現場感、クラウスの設計の精度、イーリスの素材選定、ブルーノの魔導回路——そしてヴェルディという装着者。


動き出した開発計画に、ウズウズとしたワクワク感が体を走り抜ける。


僕は尻尾を一度、静かに振った。


工房の窓の外で、王都の街が日常を続けている。煙突から白い煙が、午後の空に細く立ち上っていく。

読んで頂きありがとうございました!


「星評価」、「ブックマーク」、「いいね! 」


よろしくお願いします!!


特に星評価と登録は「ポイント」に直結しやる気に反映されますので、是非お願い致します!


感想やご意見有れば是非お聞かせくださいね!


(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ