第二十八話 メカヲタ、と勇者の噂
翌朝。
ハルトアイゼン本国の客間。工房直結の広い部屋に差し込む光は、ドラグロードのそれより眩しい。鋼の街の光だ。
僕は寝台代わりの大型クッションから身を起こした。寝る必要があったかと言われると、実は無い。古代竜の身体は本来そう設計されていない様だ。だが、寝る事の喜びを知っている元人間としても、メルフィーナが心配する顔をするのもあって、寝る様にしている。
工房の扉の向こうで、既に金属の音が響いている。夜明け前から動いているドワーフ達が居るらしい。
---
朝食を摂る間も無く、引き渡しの準備が始まる。
中庭にサイクロプス3機を並べる。僕のインベントリから順に取り出していく。白銀の馬体が陽光に晒され、ドワーフ達が遠巻きに息を呑む。
アイゼン王は既に牽引式装甲車両の前に張り付いて、昨日の続きをやっている。
「親方、引き渡しが先ですぜ」
ゲパルトが王の襟首を引っ張って連れて来てくれた。
アイゼン王が上位命令権者として登録、各機の運用責任者を登録。3機の登録が完了し、サイクロプスが順に立ち上がる。5米の馬体が中庭の石畳を踏みしめ、4本の脚で支持を確認している。ドリルランス、タワーシールド、大剣。武装は標準仕様のままだ。
「……ぅぉぉぉぉぉぉぉ」
アイゼン王が低い声で唸る。昨日の奇声とは違う、職人の唸りだ。
ゲパルトが片膝をついた。
「マキナ殿、姫殿下。サイクロプス3機、確かにお預かり致しました。ハルトアイゼンの名にかけて運用に責を持ちますゆえ、ご安心ください」
メルフィーナが頷く。
「宜しくお願い致します」
僕は尻尾を一度振った。
これで33機の配備が完了。ドラグロード王都10機、ドラグナート10機、ドラゴノート10機、ハルトアイゼン3機。残り4機はインベントリの中で僕と共にある。内2機は、装甲車の牽引や護衛として使う事が多くなるだろう。
---
引き渡しを終えて軍議の場へ向かう道すがら、アイゼン王が砲台の案内役を買って出る。先導するアイゼン王、その後ろに僕とメルフィーナ、後ろからゲパルト、そしてアイン達三姉妹が続く。
ハルトアイゼンの城塞都市は、城壁そのものが鋼の街だ。石組みの上に鋼鉄の補強が走り、各所の塔に砲台が据えられている。
「これがな、ワシらの自慢の砲台や! 師匠、見たってくれ!」
アイゼン王が誇らしげに指した先に、長い砲身。鋳造の青銅色。砲身基部の補強帯。砲架は2輪の野戦砲架と塔上の固定砲架、2種が並んでいる。
僕は宙に浮いたまま一基に近付く。砲口を覗き込み、内径と砲身長を目分量で測る。
口径の30倍ほどか。滑腔、前装式、球形弾、固体装薬。砲身長から、有効射程2000米前後、最大3000米弱。球形弾の空気抵抗では、それ以上は命中率がぐっと落ちるだろう。
[2000〜3000米弱の射程かな?]
アイゼン王が止まる。ゲパルトの眉が動く。目算で出した数値が現実に近かったのだろう、ドワーフ達が押し黙る。
アイゼン王だけが、しばらく経ってからゆっくりと髭を撫でた。
「……師匠、ワシらが苦労して測定した数字を、今、目算で測ったんか?」
「あぎゃ」
でも、この感じだと改良案は山ほどあるなぁ。最新鋭と言っても、地球で言えばカルバリン砲と同程度の性能だろう。砲弾が丸い内は、命中精度も貫通力も足りない。砲身材をマルエージング鋼に。ライフリングを刻む。装填を後装式に。装薬を薬莢化する。弾を尖頭円筒形に。一つ一つが別個の発明であり、別個の取引材料になる。
メルフィーナが僕の横で小さく息を吐く。彼女には僕の沈黙の意味が分かっている様だ。何も言わずに、視線だけ向けてきた。
僕は尻尾を一度軽く振る。
ゲパルトが咳払いをする。
「マキナ殿、軍議の間へ参りましょう。お話したい事がいくつか御座います」
「あぎゃ」
---
軍議の間は、想像していたより質素だ。
円卓、椅子、壁の地図、書架。装飾の少ない実用的な部屋だ。鋼の国らしい。
着席したのは4人。僕、メルフィーナ、アイゼン王、ゲパルト。アイン達は扉の内側に並んで待機している。
僕は車両用の作業椅子を持ち込み、円卓に乗せてその上に座る。宙に浮いたままでも良かったが、軍議の場で浮いているのは座りが悪い。
ゲパルトが地図を広げる。大陸全図だ。メルフィーナの部屋にあった物よりも大きい。中央にドラグロード、北西にハルトアイゼン、南西に神聖国、北東にフィーンライヒ、南東に南東国家連邦。そして地図の更に北西から北東にかけて——彩色されていない広い領域。
「マキナ殿、姫殿下。まず勇者の噂についてで御座います」
メルフィーナが頷く。
「ドラゴノートでも同様の噂がございました」
「我等の情報網にも入っております。出所は複数、商人・旅人・難民。内容に揺れあり。召喚されたとする者、これから召喚されるとする者、既に修行中とする者。確定情報は皆無で御座います」
ゲパルトの指が神聖国を指した。
[噂が流れた事自体が、情報だ]
「左様ですな」
[過去の召喚から、勇者が動くまでには育成期間があったと聞く]
「概ね1〜3年程度。聖剣の習熟、神聖魔法の修練、政治的な権威付け、そして儀礼。即座に動く事は、過去の事例では御座いません」
安心するよりは、危ないかもしれないと防衛力を高める方がいい。
[噂が流れた事には、別の意味があるかもしれない。出所は三つに絞られる]
[1、本当に召喚され、神聖国が事実を漏らしたか民衆が察した]
[2、召喚はまだだが、近い将来の召喚を予期して神聖国側が民衆向けに情報を流した]
[3、神聖国の意図とは無関係に、民衆の希望的観測が噂として流通している]
ゲパルトが地図の上の手を止め、アイゼン王も腕を組む。メルフィーナが軽く目を伏せる。
アイゼン王が頷いた。
「で、師匠はどう見とる」
どれも有り得る。が、2の場合、神聖国側に「噂を流す動機」が要る。
[2の場合、目的は四つ。戦意高揚、対外威圧、同盟工作、内部統制]
神聖国内部の派閥対立に対し、勇者の存在を匂わせて引き締めを図る——ありそうな話だ。どれが正解かは現時点で判別できないが、噂が流れた事自体が、神聖国側に何らかの変化があった証左になる。これだけ分かれば、今は十分だ。分からない事を予想しても、遊びにしかならない。
メルフィーナが静かに口を開く。
「マキナ様。育成期間があるとは言え、いずれ来るのでしょうね」
「あぎゃ」
来るだろう。多分、僕がその敵役だしね。
[来る前に、備える]
メルフィーナが頷く。
---
勇者か。僕は内心で軽く息を吐いた。
神聖国の制度として勇者召喚があり、過去には実例もある。それ以上の事は、前世のラノベ知識で考えても答えが出る訳がない。まあいい。来るなら、迎え撃つだけだ。口には出さない。出す意味も無い。
---
ゲパルトが地図を撫で直した。
「次に、素材の御提案で御座います」
ゲパルトが書類を広げた。ドワーフ工が書いた素材一覧だ。
「マルエージング鋼の構成元素——鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、チタン。いずれも我等の鉱山で採掘・精錬済み、量産体制に入っております。銀霜石——ミスリル原石、薄板圧延済みで供給可能です。タングステン鉱石、ペントランダイト、ホウ素鉱、銅、鉛、錫、リン鉱。これらも採掘可能で御座います」
[魔石類は]
「雷属性は安定供給可。火・風・土・水もそれぞれ供給可能ですが、火と風は採掘量に限りが御座いますし、当方でも鍛冶仕事などで需要が高いので、厳しいですな」
僕は頷いた。
予想していたよりも豊富だ。マルエージング鋼の量産体制が既に出来ているのが大きい。タングステンもペントランダイトも銅も、量を期待できる。素材を見た限り、炭化タングステンの様な特殊な物でなければ、ハルトアイゼンでもゴーレムが作れそうだ。今後彼らは僕のサイクロプスを解析し、自国での生産を開始するだろう。これだけ揃えば、ドラグロード国内では取れない素材を安定して回せる。
---
ゲパルトが姿勢を改める。
「マキナ殿、ところで。ミスリルに関し、申し上げておきたい事が御座います」
「あぎゃ」
ゲパルトは少し言葉を選ぶ。
「端的に言いますと、ミスリルは錆びません」
僕はゲパルトを見る。そう来たか。
[酸化しない、という事だね]
「左様で。我等の経験では、銀霜石をはじめ自然界に存在する一部の鉱石——魔力との親和性が高い物は酸化致しません。何百年経っても、錆も腐食も起こさない」
メルフィーナが目を瞬かせる。
「左様なのですか」
「マキナ殿の創られたゴーレム類も、ミスリルを用いた箇所は世代を超えて朽ちぬで御座いましょう」
メルフィーナが頷く。なるほど、と呟いた。
[酸化しない。然し変質はする、と読むが]
ゲパルトの眉が動く。
「……お察しの通りで。酸化はしませんが、魔力には反応します。長く強い魔力に晒されれば、色が変わり、硬度が変わり、時に伝導性も変わる。通常の金属とは根本的に違う物だと、我等は考えております」
変質のトリガーが、化学的な化合ではなく魔力なんだな。魔化したミスリルが、別の鉱石になるのかもしれない。僕の頭の中で、何かが組み変わり始める。
「我等にとっては当たり前の事で、改めて口にする機会が御座いませんでした。失礼を」
「あぎゃ」
---
「更に申し上げますと、ミスリル同士は魔力を流しながら叩く事で結合致します」
「……ほう」
「結合面に魔力回路が形成されるので、二つの物体が一つの物体として振る舞う事になります。応力は結合面で集中せず、全体に分散する特性があります」
僕の尻尾が一度、床を打った。
結合面が魔力回路。地球の鍛接では、結合面が最大の弱点だ。それが無いとなれば、軽くて丈夫なのも頷ける。
ゲパルトがゆっくり頷く。
「歴代の親方衆が何代もかけて磨いて参った技で御座います。ハルトアイゼンの外でこれを語った事は御座いません」
「あぎゃ」
ゲパルトが開示した今の情報は、かなり意味が深い。同盟に対して本気の証だと言える。メルフィーナもそれを理解した顔をして、静かに頭を下げた。
「ゲパルト殿。その意味も含めて、この情報は活用させて頂きます」
---
酸化しない。魔力で変質する。魔力結合で一体化する。僕の頭の中で、三つの事実が並ぶ。
地球の金属とは別の体系の物質だ。化学的環境では不変、魔力環境では可塑的。成り立ちそのものが、地球の工学とは違う前提に立つ。
他の魔力親和性の高い鉱石も、近い性質を持つと見ていいだろうな。ミスリルだけが特別なのではない。魔力と結合する性質を持つ鉱石は、皆こうした特性を共有している可能性が高い。虹光石、絶硬石、火吹石——保管中の素材の意味が、ここで一段深くなる。
ゲパルトが書類を仕舞う。
「素材取引、具体に詰めさせて頂きとう御座います」
[ドラグロード側は、何を出せる]
メルフィーナが姿勢を整えた。
「ドラグロード山脈は広大で御座います。当家の鉱物採掘事業は、未だ国土の一部に留まっておりまする。ハルトアイゼンの技術と人手をお借りできるなら、採掘範囲は数倍に拡張可能と考えます」
「我等の鉱山開発技術がお役に立てれば。鉱床の探索、坑道の設計、選鉱、製錬。いずれもハルトアイゼンの蓄積を頼みたく」
ゲパルトが頷いた。
「採掘した鉱石の特性確認も、我等が承れます。ミスリル鉱石などは、目利きの経験が無いと特性を読み違える事がございますれば」
メルフィーナが頷いた。
「願ってもない事で御座います」
対等な同盟だ。片方が一方的に与える形ではない。ドラグロード側は土地と権益を、ハルトアイゼンは技術と経験を持った人材を出す。採掘された鉱石は両国で分配する。共同事業として運用する形になる。具体の比率は、ここで詰める話ではない。実務者同士で詰めれば良い。
---
ゲパルトが地図の北西、彩色されていない領域を指した。
「ところで、で御座いますが。先日のボーキサイトの件ですが、魔国にはあるやもしれません」
魔国。僕は地図を見た。広い。ハルトアイゼンの数倍はある領域だ。
「我等は長年、魔国の一部族と国境を接して小競り合いを続けて参りました。フィーンライヒも別の部族と。神聖国もまた別の部族と。魔国と言っても、複数の部族の集合体です。最有力部族を中心とした連合体で、傘下に数十の部族があり、それぞれが独立性を持ち、独自の領土と戦力を持つ。我等にちょっかいを出してくるのは、その中の2〜3の部族に過ぎません」
僕は筆を止めた。或いは、話が通じるかもしれないな。
[魔国全体が、ハルトアイゼンの敵ではない]
「はい。むしろ部族によっては、過去に交易の実績もございました。塩と鉄の交換が200年続いた関係も御座います。魔国はモンスター主体の戦力構成が一般的で、埋もれたままの鉱物資源も多かろうと。機が熟せば、接触は十分に検討の価値があると我等も考えております。然し、元々血の気の多い連中が多いのも事実。交渉は困難やもしれません」
メルフィーナが頷いた。
単純な敵じゃない。将来の話として、頭の隅に置いておこう。
---
ゲパルトが書類をめくった。
「最後に、技術提携についてで御座います」
アイゼン王がここで身を乗り出した。
「ワシも言いたい事が山ほどあるんやけどな、まずゲパルトの話を聞こ」
「親方、有り難く」
ゲパルトは咳払いを一つ。
「マキナ殿。実は——我等、蒸気銃の開発を進めておりました」
蒸気銃。蒸気圧で弾を撃ち出す、初期の空気銃系統だ。銃身、ボイラー、貯気タンク、引き金機構。理論的には作れる、だが。
[弾薬と給気の問題が付き纏うはず。連射もできまい]
ゲパルトが苦笑した。
「左様です。我等もそこで詰まっておりました。火薬を使えば弾は飛ぶ、然し補給線が崩れれば兵が無力化する。然らば蒸気で——と取り組んでみれば、今度はボイラーの携行と燃料の問題、連射性の問題と、山積みでして」
魔法がある世界で銃火器に意味を持たせるなら、連射性や射程が無ければならない。
アイゼン王が腕を組んだ。
「で、師匠と出会った時、ワシらの考えがガラッと変わってもうたんや」
ゲパルトが頷いた。
「ハルトアイゼンでは銃火器・大砲が主武装であり、それは間違いではないと思っています。が、師匠のゴーレムを見て、明らかな脅威を感じました。戦闘力が高く、例え倒されたとしても人命に関わらない」
僕は黒板を見つめた。
ここで構想を全部出すのは早い。アームズパック・アーチャーは、決戦兵器のコアも撃ち抜く戦力になる。国家機密級だ。同盟が深まった先で開示するのがベターか。
[銃を捨てる必要は無い。但し、補給線に依存しない兵の強化、これは先に詰めるべき方向だ。兵を強くする、これがドラグロードとハルトアイゼンの共通項になる]
ゲパルトの目に、職人の色が出た。
「同感で御座います。具体の手段は、追って詰めさせて頂きとう存じます」
「あぎゃ」
メルフィーナが頷いた。
「ハルトアイゼンの素材と技術、ドラグロードの設計とマキナ様のお力。共同で進める方向性が定まれば、何より」
「左様に」
ゲパルトがアイゼン王を見た。アイゼン王の髭が震えていた。
「……そろそろいいか? ワシ、まだ何も言うとらんのやけど」
「親方、後で幾らでも喋ってください」
「ええんかぁ? ワシ、装甲車両の中、もう一回見たいんやが」
「親方」
「ええ、ええ、分かった。続きや。真面目やのぉ!」
---
[装甲車両、構造を共有する]
ドワーフ達がここで全員、息を止めた。
ゲパルトがゆっくりと顔を上げた。
「……宜しいので」
[構造を見ればドワーフなら作れる。隠す意味が無い]
ゲパルトが少し沈黙する。それから深く頭を下げた。
「有り難く頂戴致します」
アイゼン王が椅子から立ち上がった。
「お、おお、ワシ、ちょっと、ちょっと、外、外で用があったのをだな——」
「親方、まだ会議中で御座います」
「あ、いや、すまん、すまん、座る、座る」
ゲパルト宰相が王の腰を引き戻した。
[空間収納だけは技術ではない故、移譲不可。他は全て共有可]
「それは当然で御座います。畏まりました」
メルフィーナが僕の方を一瞬見た。僕は尻尾を一度振る。彼女が微笑む。打ち合わせていた事ではないが、二人の判断は同じ場所に着地した。
ドワーフは見れば作る。隠して関係を歪めるより、共有して双方が伸びる方が良い。これが同盟だ。
---
軍議は午後遅くに終わった。
僕達は中庭に戻る。車両は既に出発の準備が整っている。アインがツヴァイ・ドライと連携して、補給品の積み込みを終えていた。
アイゼン王が車両の前で、名残惜しそうに装甲を撫でている。
「師匠、また来てくれや」
「あぎゃ」
「ワシ、その内ドラグロードに行くでな。次の構想、もう頭に浮かんどるし」
「あぎゃ」
楽しみにしている。
ゲパルトが横で軽く頭を下げる。
「マキナ殿、姫殿下、道中ご無事で」
メルフィーナが頭を下げた。
「皆様、有り難く御座いました」
アイゼン王が何故か目尻を拭う。僕は宙に浮かんで軽く尻尾を振る。
---
サイクロプスに引かれて、装甲車両が動き出す。サイクロプス2機が牽引と護衛に付く。
城門を出る時、ドワーフ達の歓声が背後で響く。
「師匠ぉぉぉぉぉ!」
アイゼン王の声が、一番大きかった。
---
街道に出てから、暫く沈黙が続いた。
メルフィーナが寝台で本を読みながら、ふと顔を上げた。
「マキナ様。勇者の事で御座います。何かお考えで?」
僕は少し考えてから黒板に書いた。
[勇者の戦力がどの程度か、によるね。情報は集めておきたい]
メルフィーナが僕を見てから頷く。
「左様で御座いますね」
それ以上、彼女は何も聞かなかった。
---
夜の街道。
サイクロプス2機が車両の周囲で警戒している。三姉妹は車内で待機。メルフィーナは寝台で眠りに就いている。
僕は宙に浮かんだまま、筆を走らせる。手元にはアームズパック・アーチャーの設計図。両腕、背面、膝下。骨格構造、駆動方式、素材選定。
ハルトアイゼンには、まだ出さない。これは一般兵や騎士の戦力を数倍に上げる量産兵器だ。国家機密級、ドラグロード国内で先行試作だ。
ペントランダイトの硫黄抜き。ニッケル・コバルトの精錬精度の確認。駆動方式は機械式リンク+部分電磁石で行く。動力は雷属性魔石。武器となる弓は、大型のコンポジットボウがいいだろうか。
頭の中で構造が組み上がってゆく。
兵を強くする。数の差を装備で埋める。これが僕の戦い方だ。
筆が走る音だけが、車内に響く。
魔国、勇者。全部、頭の片隅に置いておく。今やる事は、目の前の設計だ。
僕は尻尾を一度静かに、床に打ち付けた。
第二十八話・了
読んで頂きありがとうございました!
「星評価」、「ブックマーク」、「いいね! 」
よろしくお願いします!!
特に星評価と登録はポイントに直結しやる気に反映されますので、是非お願い致します!
感想やご意見有れば是非お聞かせくださいね!
(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




