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魔王の白は、魔族の常識を知らない  作者: のんびり歩く
獣界編

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《44》 金の腕輪



モドゴロムとガルシュダッドの言い合いを遮る様に、パンパンとゆったりとした手を叩く音が響く。

けっして大きな音ではないが、聞いている者を絶妙に苛立たせる絶妙にゆったりとした音。

そして音の出所は、笑顔を浮かべているデルタ。


「揃って、考え無しで、反省していない。まさしく類は友を呼ぶですよね。」


「どこがだ」

「どこがじゃ」


デルタに向かって吼える、ガルシュダットとモドゴロム。しかし、デルタは驚くでも、怯えるでもなく笑顔を貼り付けたまま、真っ直ぐと前を向いている。


「息ぴったりじゃないですか、さすがです。ですが今は、そんな事はどうでも良いので、この焼け野原どうにかしてくれませんか?この辺り一帯は、大型の獣族の方々が暮らしていると、知っていますよね?彼等に焼け野原で暮らせと?それとも、1日で草木を全て植え直しますか?」


完全に嫌味だと分かる言葉と喋り口調に、モドゴロムはハッとした顔をして、気まずそうに視線を逸らす。自分自信がワイバーンという大型の姿をしてるだけあって、ようやく事の重大さに気づいたようだ。


しかしガルシュダットの方は、全く通じていないらしく『何を言っているんだ?』とばかりに首を傾げている。


「他に行けば良いだろう?」


「他とは、何処です?町で暮らす獣族とは違って、ここで暮らす大型の獣族達は、野生に憧れを抱いており、縄張りに煩いのですよ。移動しろと言って『はい、分かりました。』とは言いませんよ。」


「それならば俺が、草木を元の様に茂らせよう。」


自分の非を認め、謝るわけでもなく、まるで『そんな簡単な事で良いのか?』と言わんばかりの言い方に、デルタの頬が僅かに引き攣る。


「魔素、使わないでくださいよ。」


「何故だ!直せば良いのだろう?」


魔素を使い魔法を発動すれば、一瞬で元に戻るのに、それを駄目だと言われ、納得がいかないとばかりに、声を荒げるガルシュダット・・・途端に、デルタの表情から笑顔が消え去り、眉間に深い皺。瞳からはゴミでも見る様な冷たさ。背後からはドス黒いオーラが溢れはじめる。


「元に戻す為に魔素を使って、魔素が足りなくなったらどうするつもりです?分かっていますか?これから獣界の水瓶に大穴を開けるんですよ。大量の魔素を使うんですよ。」


ヴィオレットは、デルタの静かな怒りを見て、獣界の水瓶に大穴が開かず、獣界の者達が困ってしまう事を心配しているのだと思った・・・


「だっ・・大丈夫だ。魔素はまだ充分残っている。」


「大嘘を言わないでくれますか?ヴィオレット様と出会ってから、ガルシュダット様の魔素は、安定しているいのですよ。今まで暴走ぎみだった魔素が安定しているんです。どういう事か分かりますか?膨大だった魔素が、コントロールできるほどの量になっているという事です。普段なら良いですよ、周りに迷惑をかけない。大歓迎です。ですが、これから膨大魔素を消費するのですよ、万が一でも魔素を使い切ったらどうするんですか!!私が帰れなくなるでしょう!!」


どうやら、デルタが怒っていた一番の理由は、全力で自分の為だった様だ。


「それは、仕方がない。それに、多少帰るのが遅くなっても大丈夫だ。ミルビーが大丈夫と言っていたのだから、大丈夫だ。」


ミルビーの言葉に、全幅の信頼を寄せ、大丈夫を繰り返すガルシュダッド。

怒りを抑え込み、拳を強く握り込むデルタ。

その様子に、どうして良いのか分からず、おどおどしているヴィオレット。

デルタの矛先が、ガルシュダッドに向いた事を好機ととらえ、ひっそりと気配を消すモドゴロム。


「ミルビーさんは『普通に戻って来れば』と言っていたんですよ。滞在延長は、『普通』に、当てはまらないと思うのですが?」


「そうか?延びると言っても2、3日だ、そんなに変わらんだろう?」


ガルシュダッドにとって、というか、普通の魔族にとっての2・3日は、一瞬とは言わないまでも、騒ぐほどの時間でも無い。遊ぶと約束していた友人が2・3日遅れて来るなど普通の事だし、むしろ当日にやって来たなら、なんてきっちりとした者なのだと、肝心してしまうくらいだ。

だが、獣人であるデルタにとっては。というか、恋する男であるデルタにとっては、違うのだ。


「そうですか、それですか。ガルシュダット様なら、私の気持ちを分かってくださると思ったのですが・・・そうですか。」


勿論、デルタの目は全く笑っていない。

この時に謝っておけば、ガルシュダッドは、後々後悔する事は無かったかもしれないが、今のガルシュダッドは、デルタが怒っているらしい事は分かっていても、何故怒っているかまでは、推察できなかった。


「なっ・・・何だ?気持ち悪い。」


「いえ、それならば、私の気持ちを、分かってもらおうと思いまして。」


「何をする気だ?」


「簡単な事ですよ・・・・。」


ニヤリと笑うデルタは、ゆっくりとガルシュダッドに近づくと、その腕に金色の腕輪を取り付けた。

付けた瞬間、カシャンと嫌な金属音が響きわたっていた・・・


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