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魔王の白は、魔族の常識を知らない  作者: のんびり歩く
閑話

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《閑話》 デルタと呼ばれる獣人の独り言



私の名は、デルタ・ゲルデウス・リーヴィイと申します。


生まれも育ちも獣界で、獣界の他に魔界、人界が存在する事は知っていても、つい最近まで獣界から一歩も出た事がありませんでした。

そんな私が魔界へ行く事になった理由は、魔族の王である魔王様に、100年に一度のお願いをしに行く為でした。


獣界には川がありません。獣界の中心には、水瓶(みずがめ)と呼ばれる大きな湖が存在し、そこから水を各都市や村へと運ぶのです。大昔には水路を作っていた様ですが、いつの頃からか、獣人達は100年に一度、魔族の王である魔王様に頼み、水瓶の底に穴を開けてもらう様になりました。不思議な事に、水瓶の底に穴が開くと、何故か獣界全体に水が補給され、各地に小さな湖が出現するのです。しかし、その穴は100年経つと、また閉じてしまう為、100年に一度、魔王様に頼み、水瓶に大穴を開けてもらうのです。


魔族と獣族の間には、盟約を結んでおります。簡単に説明すると、100年に一度魔王様が水瓶に穴を開ける代わりに、獣族と魔族は争わないという盟約です。

争った所で、膨大な魔素を操る魔族に勝てるわけが無いのですが、魔族達もそれで納得しているので、現在まで何の問題も無く、100年に一度魔王様に獣界にお越し頂いて、水瓶に穴を開けていただいておりました。


ですから今回も、頼みに行けば直ぐに穴を開けてもらえると、軽く考えておりました。しかし、魔王様の返答は、3ヶ月待ってほしいとの事でした。

2年も3年も待てと言われれば、流石に困ってしまいますが、3ヶ月程度ならば問題ありません。3ヶ月後、必ず獣界へと来てくださるようにお願いをし、私共は獣界へと変える筈でした。


しかし、現在、魔王様に水瓶の穴空けを頼みに来たはずの私は、いまだに魔王城に滞在しています。

というか、帰る気が微塵もありません。

私は魔界で番を見つけたのです。

獣族にとって、番は一生に一対だけです。恋人や結婚相手は沢山居ても番に出会えば、番に惹かれてしまう。勿論、番に惹かれてしまう事に抗い、長年過ごした恋人や結婚相手を選ぶ者も居いますが、そういう相手の居ない者は、まず間違い無く番を選び、番いの側から離れられなくなります。


かくゆう私も、番を見つけた途端、全てを投げ出し番いの側に居座っております。


本当であれば、片時も番から離れたく無いのですが、番の両親から『番だか何だか知らないけれど、1日中付いて回るのは止めてください!!』『そうだ!魔王城は今人手不足だから丁度いい、働け!!』

と言われてしまい、現在は魔王城で執事の真似事の様な事をしております。


それでも、日に一度、番に会いに行く事は許されているので、穏やかな日々を過ごしておりました。

たまに『1日1回とは言ったけど、1回が長すぎるのよ!!』『あのさぁ・・・俺達夫婦の時間も欲しいんだが?』と言われますが、穏やかな日々です。


そんな日々が崩れたのは、魔王城に来て2ヶ月と少し経った頃の事でした。

魔王様ことガルシュダッド様の補佐をしている、ラルグランが、娘を助けて欲しいと、小さな女の子を連れて来たのです。

私が初めて見た時は、頭からスッポリと重そうな布を被り、私の尾を可愛らしく目で追っており


「はじゅめまして、ういおれっとともうしゅましゅ、じゅうじょくのかたを みりゅのがはじゅめてで、ちゅい・・・・。」


微かに聞き取れるほどの、舌足らずな言葉で必死に挨拶をしてくださり、その姿に思わず頬が緩んでしまいました。勿論、恋愛感情は微塵もありません。番が一番です。

そもそも、殆ど顔も身体も見えておりませんでしたので、幼子を見て感じる保護欲とでも言うような、感情でした。


次に見かけた時には、身体が随分成長しておられました。とは言っても、まだまだ幼い姿のままでしたが。


魔界とは違い獣界には、ごく普通に白が存在します。植物にも物にも獣族にも、ですから私からすれば白い事は特に驚く事ではありません。ですが魔界では、それらが存在しない事は聞いておりましたし、ここ2ヶ月で実感しておりました。

まあ、だからといって、私には『ああ、白いな』程度でした。

ですが、魔王様にとっては違った様です。


少女の名前はヴィオレット様。

城に来たその日に、魔王様と結婚し、そのせいで眠りについてしまった少女。

彼女が城で暮らす様になって、城の中はとても騒がしくなりました。眠っている事を、暮らすと言って良いのかは、微妙ですが。とにかく、彼女が城で暮らす事が決まると同時に、魔族が急激に増え、魔王城を覆っていた濃厚過ぎる魔素は、随分と落ち着きました。


そして、一番の変化は、ガルシュダッド様です。

私の見てきたガルシュダッド様は、殆ど表情を変えず、何時も退屈そうにしながらも、何故か魔王という仕事を真面目にやっておられました。

しかし、ヴィオレット様が来てからのガルシュダッド様は、2ヶ月と少しの間に見ていたのは、もしや別人なのでは?と思うほどに、表情豊かに、魔族達の“拗ねる(すねる)”受けております。

時には、椅子の座面に強力な接着剤をつけられ、座面に接していた場所の布をゴッソリ剥ぎ取られ、下着を丸出しにした状態で怒り。

時には、微妙に不味い料理に顔をしかめながらも、完食し。

時には、部屋や廊下に張られた罠を見つけ、罠に引っかからなかった事を自慢する様に、近くで見ていた魔族達にドヤ顔を送り。


そんな魔族と、ガルシュダッド様のやり取りを、私はとても楽しく見ておりました。

見ている分には、とても面白い見世物でした・・・・


私がガルシュダッド様と同じ目に合う事になったのは、自業自得です。

自分の尾をガルシュダッド様の濃厚なゴミで燃やされ、そのゴミをヴィオレット様を使って掃除したのですから。

おや、失礼いたしました。ゴミでは無く、濃厚な魔素でしたね。


ともかく、ヴィオレット様が次に目覚めるまで、私もガルシュダッド様と同じ()()()という名の嫌がらせを受ける事となりました・・・・・


辛い日々でした・・・


しかし、私には番がいます。

番という癒しが!

美しい魂を持つ、可愛らしい番。

まだ肌に触れる事も、言葉を交わす事も出来ませんが、私の愛しい番。


番の両親からは

『決めるのはこの子よ、無理強い許さないから。』

『成魔族になるまでは、私達の子だ。何かしたら、二度と会わせないからな。』

と、言われておりますが、私は元より無理強いする気はありません。番いが悲しむ様な事はしたくありませんから。番いが嫌がれば、私がいくら辛くとも、番いの幸せの為に、身を引くつもりです。


ただ今は、側に居られれば良いと・・思っておりました。


しかし、現在私は、獣界に来ています。

丁度 魔王様と約束した3ヶ月目でございました。


私は、番と引き離され、身を切られる様な思いですが、仕方がありません。これは私に与えられた罰なのです。

ヴィオレット様を使って、魔王の魔素という名のゴミ掃除をしてしまった罰なのです・・・


ですが、帰りたい・・・今すぐ帰りたい・・・


ミルビーさんの話では、私が帰るまでは大丈夫だとの事でしたが、もし・・万が一にも、一生に一度の時を逃してしまったらと思うと・・


はぁ・・・帰りたい・・・







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