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天使の寝顔と、たった一人の理解者

第7話では、山城先輩が抱えてきた孤独の深さと、和樹という唯一の理解者に対する全幅の信頼が描かれます。氷のような外見の下に隠された、あまりにも脆く、そして温かい少女の心。二人の絆が「恋」を超えた深い安らぎへと変わっていく瞬間をお楽しみください。

保健室で、沙羅は初めて山城の心からの微笑みを目にした。

「先輩……そうやって笑うと、すごく可愛いです」

「……そうかしら」

沙羅は身を乗り出して提案する。「もっとみんなに笑顔を見せるべきですよ!」

だが、山城の瞳に寂しさが戻る。

「……何度も試したわ。でも、みんな私の見た目だけで判断して『怖い』『感情がない』って拒絶するの。……それに、他にも理由はあるんだけど……」

「先輩、傷口を広げるようなこと聞いてごめんなさい」

「いいのよ。もう慣れっこだから」

チャイムが鳴り、二人は連絡先を交換して別れた。沙羅は「新しい友達ができた!」とはしゃぎながら教室へ戻り、山城は一人、保健室のベッドに身を横たえて休息をとることにした。

教室で和泉に「どこに行ってたんだ?」と聞かれた沙羅は、少し大人びた表情で答えた。

「……過去に傷ついた人のそばに、ね」

放課後、和樹と山城は校門で合流し、共にアパートへと向かった。道中、二人の間に会話はなかったが、それは気まずい沈黙ではなく、互いの存在を感じる穏やかな時間だった。

部屋に入り、カバンをソファに放り出す。山城は頬を赤らめ、俯きながら唐突に問いかけた。

「……ねえ、和樹。さっきの……どうだった?」

「……大きくて、柔らかかった」

口走った瞬間、和樹は自分の失言に凍りついた。案の定、山城は顔を膨らませ、怒ったような表情で和樹の頭をはたいた。

「……バカ!」

勢い余って和樹はソファに倒れ込み、山城はその膝の上に乗り上げる形になった。彼女は和樹の耳元に顔を寄せ、熱い吐息と共に囁く。

「……どうしてもしたいなら、どさくさに紛れなくてもいいのに。あなたなら、私は拒まないわ」

「……っ。……いや、あれは本当に事故だったんだ。それに、あんたにだってプライドがあるだろ。嫌な時はちゃんと嫌って言わなきゃダメだ」

和樹の真面目すぎる言葉に、山城の目から大粒の涙が溢れ出した。彼女はそれを隠すように、和樹の胸に強く顔を埋めた。

「……どうしてまた泣くんだよ」

「……だって、こんな風に私を気遣ってくれるのは、あなただけだもの。他の人の前で泣けば『悪魔の涙』だって指を差される。……私を人間として見てくれるのは、世界中であなただけよ」

和樹は胸を締め付けられるような痛みを覚え、彼女を壊れ物を扱うように抱きしめた。彼女が泣き止むまで、決してその腕を離さなかった。

やがて、山城の腕の力がふっと抜け、規則正しい寝息が聞こえ始めた。

「……山城? 先輩?」

二度呼びかけても返事はない。眠りに落ちた彼女の顔を覗き込むと、そこには学園で恐れられる「女王」の面影など微塵もなかった。

銀色の髪に縁取られたその寝顔は、月の光を浴びた花のように、ただ静かで、愛らしかった。

誰にも見せることのなかった山城先輩の涙と寝顔。彼女にとって和樹の腕の中は、世界で唯一「自分」でいられる聖域になったようです。しかし、彼女が沙羅に漏らした「もう一つの理由」とは何なのか?

次回、山城が抱える家族の秘密、そして和樹の知らない彼女の「過去」が少しずつ明らかになります。

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