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歴代最強の魔女なんて肩書きはいりません。母になって最高に幸せなので愛息と平穏に暮らしたいだけです  作者: もーりんもも


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32 ダニエルの才能①

「とうさま! 私の弟子はすごいです! 見てください!」


 精霊王様が呼びかけた途端、娘さんがダニエルの手を引っ張るようにして現れた。

 そしてなぜかダニエルの出来の良さを自分のことのように自慢している。

 そういうのは母親の特権のはずなんですけど?


「あ、ママン!」


 ほうらね。ダニエルは私が一番なのよ。


「ダニエル。そろそろ帰りましょうね」

「あ、うん。でも――」

「でも?」


 あぁぁ。娘さんの異常なプレッシャーで肌がチリチリする。


「おい、魔女! 私の成果も見ずに去るとはどういうことか! とうさま! 私が教えた魔法を見てください!」


 成果って、それはダニエル()成果でしょう?


「ほほう。こっちの魔女も転移魔法を習得したのだぞ? 小さい方はどうかのう?」

「それくらい、やろうと思えばダニエルだってできます! 簡単な魔法ですから」


 ダニエルを買ってくれているのは嬉しいけれど、どうして私には突っかかってくるのかな?


「おい、魔女。お前は随分長いこと魔法を使っているくせに、たかが転移魔法くらいで威張るのか」

「いえ、威張ってなど――」

「ダニエル! 見せてやれ!」

「ええと」


 ダニエルは困ったように私と娘さんの顔を見ている。

 その歳でこの微妙な空気を感じ取れるとはすごいわ。


「ダニエル。どんな魔法を教わったの? 私も見てみたいわ」

「うん! すごくきれいなやつだよ!」

「わあ、楽しみだわ」

「うん!」


 ダニエルがとびっきりの笑顔で返事をしてくれた。

 そして両手を水を掬うように合わせると、その中に水を出現させた。

 水を具現化できるようになったなんてすごいわ!

 ――と思っていたら、みるみるうちに水が増えていき、ダニエルは直径一メートルほどの水球を下から支える格好になった。


「だ、ダニエル?」

「だいじょうぶだよ。おっきいのにぜんぜんおもたくないの!」

「そ、そう――」


 いったいどこまで大きくするのかとハラハラして見ていたら、水球はダニエルの手を離れ空に浮き始めた。


「え?」


 そのまま空高く舞い上がった水球がキランと光ったかと思うと、細かな霧状になってあたり一面に降り注いだ。

 細かなミストに光が反射して幻想的な風景が広がった。


「……すごいわ!」

「ほんと?」

「ダニエル! すごいわ! なんて綺麗なの!」

「えへへ」


 本当にすごい。

 初めての魔力行使でここまでできるとは、ダニエルの潜在能力が計り知れない。

 私なんかより、それこそ歴代の筆頭魔女の中でもトップクラスなんじゃ……。


「じゃあ、こんどはママンのまほうをみせて!」

「え?」

「おお、そうだ。見せてみろ! お前も我が弟子ダニエルの母親ならそれなりの魔法が使えるであろう?」


 どうも娘さんの言葉の端々からは、母親よりも師匠の方がダニエルと繋がりが深いのだと言いたそうに聞こえる。

 絶対に違いますけどね!


「ほほう。それなら、お主の行きたいところへ子ども人間を連れて行けばよかろう」

「とうさま! そんなのつまらないじゃないですか!」

「ん? そうか? だが転移魔法じゃしな」


 娘さんにむくれた顔で睨まれても……。


「ママン! どこにでもいけるの? じゃあ、パパンのところにいこうよ!」

「……! ……それは」


 あぁぁ。定期的にこの話題が出てきちゃうな。


「子ども人間よ。どこにおるのか分かるのか?」

「え? パパンのいるところ? ううん。しらないんだ」

「そうか。魔女よ。お主なら分かるのではないか?」


 ……あ。精霊王様は死亡したことをご存じないんだった。


「ええと。私の夫は魔力を持っていないので、感知のしようもないのです」

「なんだ。そうか」

「え? まりょくのあるところなら、ぼく、わかるよ!」


 ダニエル……何を言っているの?


「さすが私の弟子だ! ダニエル! 生まれ持った才能だな! 魔力を感知できるとは素晴らしい! ならば転移など造作もない。よしっ。ダニエル。今から私が隠れるから、私の魔力を感知して転移してみろ」


 娘さんはそう言うと、どこかに転移したみたいでもう姿がない。

 え? ちょっと。話が変な方向にいってるんですけど?


「ママン。てんいってなに? ぼく、どうすればいいの」

「ええとね。かくれんぼみたいなものよ。娘さんが隠れたから見つければいいの。いつもなら歩き回って探すでしょう? それを歩かずに、娘さんの魔力がどこにあるのか感じ取って、その魔力のあるところに自分がいるって想像するの。そして自分のお腹の奥にある魔力にその想像を見せて、実際に想像した通りのところに移動するの」

「うーん?」


 ダニエルにはまだ難しいに決まっている。

 もう、どうしようかしら……。


「子ども人間よ。そもそもワシの魔力と娘の魔力の違いがわかるのか?」

「え? うん。なんとなくだけど、ちょっとだけちがう」

「ほう。大したものだ。魔女よ。お主はどうじゃ?」

「正直……私には難しいです」

「じゃろう?」


 本当にダニエルは分かるの?


「ねえ、ダニエル。本当に分かるの?」


 とてつもなくすごいことなんですけど!


「うん。なんとなくなら、わかるよ」

「そ、そう」

「おい、子ども人間。娘が早くしろとイライラしておるぞ。娘の魔力を探して、娘がいるところに飛んでみろ」

「そんな! 精霊王様、いきなりは無理ですよ」

「ぼく、やってみる!」

「おう。失敗してもよい。試してみよ!」

「うん!」


 ダニエルはふわりと顔を右の方へ向けると、遠くの方をじいっと見ている。

 ……どうしよう。

 まだ完璧に魔力を制御する練習もしていないのに、転移魔法を試させて大丈夫かしら。


「ダニエル、あのね――」


 …………‼︎

 消えた‼︎

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