29 アリソンとの対峙②
「ねえ、アリソン。師匠のせいでおかしなことになっちゃったけど、あなたが用があるのは師匠なんでしょう?」
「はあ? 何を言っているの! 用があるのはあなたに決まっているわ」
「え? そうなの? 師匠に用があって尋ねたんじゃないの? 私に何の用があるの?」
「……‼︎ 信じられない‼︎ 信じられないわ‼︎ あなた――正気?」
また随分な言われようなんですけど。
「ええと、あっ、そうか! あなた確か筆頭魔女になったって言っていたわね。それで証が欲しかったのね。じゃあ、これをあげるわ」
「……‼︎ まさかそんなに易々と渡すなんて」
え? 私が渋ると思っていたの?
アリソンは筆頭魔女なんだから持つ資格はあるものね。
……あら? 留め具がないんですけど。
そのまま外すには微妙な長さのチェーンだけど仕方がない。髪の毛に引っかからないように気をつけて――あら?
あれれぇ? どういうこと?
さっきは他人が引っ張ったから外せないと思ったのに、私でも外せないってどういうこと?
精霊王様が余計なことをしてくれたのかな……?
「なんか、ごめんなさい。このペンダント――外れないみたい」
てへっと笑うと、アリソンがキレた。
「はあ?! 外せない訳ないでしょう? やっぱり手放すつもりがないのね。人を弄んで楽しい?」
「いやいや。本当にあげようとしたんだけど、できなかっただけで――」
「もういいわ。力づくでもらうから」
え? 怖っ。力づくで奪うだなんて。
元は貴族の令嬢なのに、どうしてそんな発想に?
「お互い、危ないことはよしましょう。それに力づくでどうこうなるものじゃないと思うのよね。私の方で色々と確かめてみるから、ちょっと時間をくれない?」
「そんなこと信じられるものですか!」
危ない。
アリソンが体内の魔力を一点に集中させ攻撃魔法に変換しようとしている。
「ええと。とにかく日を改めて落ち着いて話し合わない? 私も息子のことが心配で今は時間が取れないし」
そう話しつつダニエルの気配を――私と同じ魔力を探した。
魔力感知はあまり得意じゃない。
館にいる時は魔法なんかより、とにかく便利に暮らしたい、少しでも前世の暮らしに近づけたいと、魔道具の開発に没頭していたからなぁ。
それでも我が子を探すためなら、火事場の馬鹿力並みに能力を全振りする!
――見つけた!
突然魔力感知の能力が開花したみたい。
そう遠くないところに師匠とダニエルが立っているのが見える。
二人は家を出て森の中に入っている。
師匠に手を繋げられたダニエルの姿がぼんやりと目に映った。
「ダニエル! そこにいるのね! 私の声が聞こえる? 今行くわ」
「逃がさないわよ!」
ああもう! しつこい!
私も転移魔法を習得しておくんだった。
これくらいの距離なら転移陣を仕込まなくてもひとっ飛びできたのに。
アリソンとやり合う気はないけれど、構ってあげる余裕はない。
だから――。
「ごめんなさいね」
「は?」
目を見開いて私を睨んでいるアリソンには効果覿面のはず。
すかさず爆音と強烈な閃光を放った。
しばらくは耳がキーンとして目もくらみ、立っていられないはず。
これは筆頭魔女時代、研究に行き詰まってしまった時に、前世で見たFBIのドラマを参考に面白半分に閃光弾を魔法で再現してみたもの。
……ふぅ。
アリソンは一時的に無力化できたみたい。
ダニエルの元へ急ごう!
魔力が濃くなり近づいているのが分かる。
「ダニエル! 師匠!」
「ママン!」
「ダニエル!」
ダニエルと師匠の姿が肉眼で見えた!
ダニエルも私を見て駆け寄ろうとした、その時だった。
「魔女様はどこですか? さっきの音は何です?」
もう一人いたことを忘れていた。
アリソンが連れていた魔女、コニーだっけ?
さっきはオロオロしていたのに、まさかダニエルを人質に取るなんて許せない!
息子の体を背後から抱えて優位に立ったつもり?
「ダニエルを放しなさい! 子どもになんてことをするの!」
「素直に答えれば話します。魔女様は無事なのですか?」
「あなた、今の状況が分かっているの?」
前筆頭魔女と元筆頭魔女の二人対、一人ってことを理解していないのね。
師匠が、「ふっ」と笑うとダニエルの手を取った。
次の瞬間、コニーの姿はもうなかった。
「師匠!」
「舐められたものだね」
「今の、どうやったんですか! 師匠が手に触れていないものだけを飛ばせるんですか?」
「それくらい容易いさ。お前も習得したらどうだい?」
「確かに。便利そうですね。時間ができたら考えます。それより、ダニエル!」
「ママン!」
ダニエルを抱きしめると張り詰めていた気持ちが和らいでいく。
「おっと。アリソンがこっちに来るみたいだよ。お前たち、これからどうする?」
「どうするか考えるにも、一度ここを離れてゆっくりしないことには――」
「そうか。なら、ちょうどいい街まで送ってやろう」
「あ! 師匠! 突然の移動は勘弁してください」
「心配するな。荷物も一緒のところに転移させてやるから」
「そうじゃなくて、あぁっ」
師匠が魔力を行使したことを感じた瞬間、自分たちを包む空気が変わった。
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