28 アリソンとの対峙①
「おわっ」
「ママン!」
気持ちの準備も整っていないのに、師匠の家に投げ込まれてしまった。
ダニエルを抱きかかえた状態で足が床についたと思ったら、師匠とアリソンが対峙する間に割って入った形になっていた。
随分と間抜けな登場の仕方になってしまった。恥ずかしい。
あれ? 三人だ――アリソンの側にいる魔女の顔は見たことがある。誰だっけ?
それにしても突然の出現に驚くのは分かるけれど、アリソンたちは驚愕し過ぎじゃない?
……あ、そっか。
私が死んでいると思っていたのか。
「アリソン。久しぶりね。ええと。そちらの魔女さんは?」
「……」
「……」
あら? アリソンは間髪を入れずに返事をする人だったのに、固まったまま無言だなんて。
人って変わるのね。
「師匠。お取り込み中でした? なんだかすみません」
「い、いや。それよりもお前、その首からぶら下げているのは――」
「ああ、これですか? そうです。証です。精霊王様がくださいました。見ての通り前よりも随分と小さ――」
「証ですってー!?」
アリソンが奇声に近い高い声で叫んだ。
挨拶はしなかったのに、証には食いつくんだ……。
そういえば彼女は証には尋常でない興味を抱いていたんだったわ。
まあ、見せちゃ駄目って物でもないしね。
「あなたは初めて見るんだったわね。これが『筆頭魔女の証』よ。最初に精霊王様がくださった物はもっと大きかったんだけど、不格好だから小さくしてもらったの。師匠。こっちの方がいいですよね?」
「ん? ああ、は? またどうしてそんなお願いを――いやいや。それよりもペンダントにしてもらったのか?!」
「あーこれは、何というか、ちょっと事情が」
ペンダントトップの宝玉を持ち上げて師匠に見せていたのに、アリソンが鬼の形相で証を掴み、力任せに引きちぎろうとした。
ペンダントを引っ張られて首に痛みが走ったけれど、それよりも私にしがみついていたダニエルに乱暴にぶつかったことが許せない。
「ひどい! 気をつけてよね!」
「それをよこしなさいっ‼︎」
「いたたた」
「くっ! 私が筆頭魔女なのよ‼︎」
「痛いってば!」
私もアリソンもチェーンがちぎれると思ったのに、なぜかそうはならず、私の首だけがアリソンに引き寄せられる。
もしかしたらペンダントにされた時点で、チェーン諸共証になったのかもしれない。
「アリソン! 手を離して! 無理だって! ちぎれないってば!」
「どういうこと? どうしてなの?!」
アリソンの手首を掴んで抵抗したけれど、思いの外力が強くて止めさせることができない。
「ちょっ、ちょっと。そこのあなた。アリソンのお弟子さん? 名前――は、もういいか。これ――無理だから、止めてくれない?」
「あ、あの。コニーと申します。魔女様――ええと、前魔女様?」
「そう。コニーね。ネックレスはちぎれないって言ってやって」
「あ、はい。あの、魔女様」
「うるさい! どっちの味方なの! 手伝いなさい! これさえあれば、宰相たちを黙らせることができるのよ!」
コニーと名乗った魔女が、あたふたと首を振りながら態度を決めかねていると、「うるさい! 外でやれ!」と師匠の怒鳴り声が聞こえた。
「うわっ」
「きゃあっ」
どうやら師匠は部屋の床にも転移陣を仕掛けていたらしい。
私とアリソンはあっという間に森の中に放り出されてしまった。
……え? ちょっと! ダニエルは?!
「ダニエル!」
耳を澄ませても「ママン」という声が聞こえない。
「師匠ぉー!」
師匠の魔力を頼りに駆け出そうとしたら、アリソンに腕を掴まれた。
信じられない。この状況でまだペンダントを奪うつもりなの?
「どうして?! まさか――この女が相応しい者だと? そんなこと――絶対に認めないわ!」
は? 証が筆頭魔女を選ぶみたいな都市伝説を信じているの?
ペンダントが欲しいのならあげてもいいんだけど、その代わりに私のことを永久に忘れてくれるかな。
「ママン!」
ダニエルの声が聞こえたのに姿が見えない。
「ダニエル? どこなの? 私の声が聞こえる?」
「ああ。息子ならアタシの側にいるから心配いらん。お前らのすぐ近くだ」
「師匠! 今すぐダニエルを連れて来てください!」
そこまで師匠のことを信用している訳じゃないので、ちゃんと手を繋いでおきたい。
「……驚いた。本当にあなたの息子なのね。あんなに人間を嫌っていたのに、よく子どもの面倒が見られるわね」
「えぇぇ」
アリソンだって決してフレンドリーとは言えないのに、そのアリソンから見ても私って人間嫌いに見えたんだ……。
別に嫌っていた訳じゃないのに。
ただ面倒臭くて避けていただけなのに。
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