24 筆頭魔女の証をもらいに④
子どもが自分の宝物だと大事にしているものを取り上げるようなことはしない。
対アリソン対策として、「あったらいいな」くらいの物だったから、証なんて別になくても構わない。
ダニエルを追うとすぐに二人に追いついた。
会話の様子からは、気の強い女の子の発言に真正面から言い返したりせず、ダニエルが優しく受け止めながら話をしていることがうかがえた。
え? もう包容力なんて持っているの?
「おい、子ども人間! そんな風にこっちを見たって、これはやらんぞ!」
「ねえ。ぼくのなまえはダニエルだよ。ダニエルってよんで」
「なっ。どうして私が子ども人間の名前を呼ばねばならんのだ」
あら? あらあらあら?
精霊王の娘さんはツンデレかな?
プンプン怒っているように見えて、ほんのり頬が赤らんでいる。
「だってぼくみたいなこどもはたくさんいるから、ちゃんとぼくにはなしかけてくれているんだってわかるようになまえをよんでほしいんだ」
「そんなに名前を呼んでほしいのか?」
「うん! よんでくれたらうれしいよ」
「では、全身全霊でそう懇願するがよい」
あらぁ。
なんだか二人して変わった役のままごとをやっているみたい。
「ぜんしんぜんれいってなにかなあ……? でもおねがいすればいいんだね?」
「ただのお願いなら聞いてやらんぞ!」
「え? ええと。わかった! いっしょうけんめいおねがいするよ! ねえ! おねがい! そのペンダントをママンにあげて! きみはにんげんとちがってなんでもすきなようにできるっていっていたでしょう? ママンとぼくにはできないことなんだ。おねがい。ペンダントをくれないかな?」
「……っ!」
何て可愛いお願いかしら!
あんな風にうるうるした瞳でお願いされたら断れないはず。
案の定、娘さんは百面相をしながら、素直にYESって言いたくなくて耐えている様子。
こっちも可愛い。
「おっ、お前が私の従者になるのなら、やらんこともないぞ」
「……? じゅうしゃってなに? ともだちのこと?」
「とっ、友達だと?!」
「え? ともだちはいやなの?」
「い、嫌ではないが――それでは私とお前の関係が――私が上だと分からぬではないか!」
「えぇ?」
そろそろ口を挟んでもいいかな?
「お嬢さん。ダニエルは友達をとっても大切にする子よ? あなたは大切にされたいのでしょう? 何の問題もないと思うけれど?」
「そ、そうなのか? 人間の友達というのはそうなのか?」
ダニエルが困ったように私の顔を見たので、大丈夫と微笑み返す。
「うん。ぼくはともだちをだいじにおもうよ。だからきみのことはたいせつにするよ?」
「そっ、それなら別に、と、友達になってやってもよい」
可愛い! もう、最後の方は聞き取れないくらいにボソボソ言うところなんてキュンキュンしちゃう。
「じゃあ、決まりね! 二人は友達!」
「うん! ともだちだね!」
「お、おう」
「ママン。よかったね」
おっとっと。本当にペンダントをくれるのかな?
「これの何がいいんだか。ほらっ。元々魔女が持つ物だし――くれてやる」
えっと思った次の瞬間には、私の首にペンダントがぶら下がっていた。
……重い。
と思ったのが伝わったのか、急に重さを感じなくなった。
え? 証ってやっぱり意思を持っているの?
そして魔法を使えるの?
「あの、ありがとうございます。証は筆頭魔女と共にあるものと思われているので、こんな風にペンダントになっていると有り難いです」
「ふん」
ふふ。恥ずかしいのね。そんな風にそっぽを向いても照れているのは丸分かり。
「おう? 手放したのか」
精霊王様がふわりと現れた。
巨体なのに重量感がない。精霊って虚像なのかな?
「とうさま! 子ども人間――だ、ダニエルと友達になったので、望みを叶えてやったのです」
娘さんから、「偉いでしょう? 褒めて褒めて!」という心の声が聞こえてくるみたい。
「おう? そうか。友達か。面白いの」
そう言われて嬉しかったのか、娘さんがひょこっと精霊王の肩に飛び乗って、自分の頬を精霊王の頬に擦り付けている。なんだか微笑ましい。
「精霊王様。お尋ねしたいのですが」
「おう? なんだ?」
「この証ですけど、どうしてこんなに大きいのですか? 大きさといい形といい、あまり有難い感じがしないのですが」
「ん? そうなのか? ワシが『証として精霊石をやる』と言ったら、最初の魔女が水を救うように両手を出したから、そこに収まるような形にしたのだがな」
え? そんな理由で?
「ええと。まさかその魔女も、その手にすっぽり収まるほどの物をいただけるとは思っていなかったと思います。ただ落とさないように慎重に両手で受け止めようとしただけだと思います」
「おう? そうだったのか? 人間は小さい方が価値が高いと感じるのか?」
「まあ、そう――ですね。ぎゅうっと凝縮した感じをありがたがるというか、小さいのに威力が強い方が価値が高いと見なす傾向にありますね」
「なんだ。そうだったのか。では、これでどうだ?」
うわあ! ちっちゃくなった‼︎
肉まんサイズから直径二センチほどの粒に変わった。
真珠の光沢感が増して、光を反射するどころか自ら発光しているみたい。
これぞまさに『お宝』って感じ。
肉まんサイズの証を見たことのない人間には、こっちの方が、いかにも精霊王様が下賜された宝珠に見えるだろう。
アリソンが有り難がっている様子が目に浮かぶ。
まあ、彼女にあげてもいいんだけどね。
地位には固執しているかもしれないけれど――だから私を排除したんだろうけれど――悪事を為そうとまでは考えていないはず。
まあ、そういうことは帰ってから考えよう。
師匠も心配しているだろうしね。
「精霊王様。願い事をきいてくださりありがとうございます。人間が精霊の里に長居するのはよくないですよね。師匠のところに戻ろうと思います。ここにくる前の元いた場所に戻るには、その場所を頭に思い浮かべればいいのですよね?」
この証が力を貸してくれるはず。
「ああ、そうだが、そう急がんでもよかろう。娘が子ども人間をいたく気に入ったようだ。もう少し相手をしてやってくれんか?」
えー。子ども同士を遊ばせている場合じゃないんですけど。
「少しでよいのだ。そうだ。子ども人間に魔力の使い方を教えてやろう」
「え? 精霊王様が直々にご指導を?」
「そうだ」
これは願ってもないことだわ。
「よろしくお願いします!」
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