22 筆頭魔女の証をもらいに②
「いっ、今、精霊王様の声が――私にだけ聞こえたんでしょうか?!」
「いや。私にも聞こえた。あれが精霊王様のお声……」
「会えそうですね」
「……‼︎ 魔力か! 精霊王様は魔女一人一人の魔力を正確に識別できるのかもしれんな。とにかく、今後のためにもお前は『筆頭魔女の証』を持っておいた方がいい。証を持つ者が筆頭魔女だと考えている者も多いからな」
お! 印籠みたいに使うってこと?
「それに、そのドワテ村ってところでお前ら二人魔法を使ったのなら、誰かに感知されたかもしれんぞ。館の状況は分からんが、お前が生きていることをアリソンが嗅ぎつけたら厄介だ。前回は問答無用でお前を排除したようだが、証が消えてしまって後悔しているだろうからな。お前が証を持っていると分かれば交渉できるかもしれん」
「つまり――アリソンがまたおかしな難癖をつけてきた時に証が役に立つんですね」
「難癖? 国王陛下暗殺未遂の容疑だぞ?」
「あーそういえば、そんなことを言っていたかも。何なんですかね、その事件。王城に不審者でも入り込んだんですかね? でもそれで犯人が女性っていうことなら、国王の女性問題なんじゃ……」
あら? 師匠が頭を抱えている。
「馬鹿か、お前は。もしそうなら事件は闇に葬られておるわ! 未遂ってつければ罪状なんて何でもよかったのさ。ありもしない事件をでっち上げたんだろうからね!」
うわあー!
「アタシもアリソンがまさかそこまでするとは思っていなかったよ。お前、とことん嫌われていたんだな」
え? 私にも悪いところが?
まあ、あったかもしれない。人格者とは程遠かったから。ストレスを与えていたのかもね。
「でも彼女がやったことは犯罪ですよね。迷惑な話ですよ」
「お前――死にかけたというのに、迷惑の一言で片付けるのか」
「あはは、いやあ、その。とりあえず精霊王様のところに行ってみます」
「くれぐれも失礼のないように気をつけるんだぞ」
「はい。ダニエルが起きたら出発します」
「ん? いや、待て待て。大丈夫なのか? 魔女以外は入れない結界があったりしないか?」
え? どうだろう?
でも、そうか。そうだよね。そんなに自由に出入りできないよね。
じゃあ私が一人で行くっていうこと?
それは絶対にできない。
ダニエルと離れ離れにはならない!
「師匠。ダニエルを置いていくなんでできません。もしあの子と一緒に行けないのなら、証は諦めます」
「……そうか。分かった」
◇◇◇ ◇◇◇
お昼寝から目を覚ましたダニエルに、お別れの挨拶をさせた。
「ダニエル。おばあちゃんにお礼を言ってね」
「うん! おばあちゃんありがとう!」
「お、おぉ」
師匠はまだ子どもに慣れないんだな。
「じゃあ行ってきます!」
「待て待て。ここで魔力を盛大に放出したら、絶対にバレる。アリソンが飛んで来るぞ。あの子も筆頭魔女として五年前よりも力を付けているはずだからね。アタシも会いたくないよ。ほら。アタシが結界を張ってやるからその中でやれ」
「はい」
ダニエルを抱きしめた状態で、全身から魔力を放った。
…………。
…………。
…………。
…………あれ?
「どうだ? 何か聞こえたか?」
「いえ。師匠は何か感じましたか?」
「いや? どういうことだ? まさか結婚して出産したせいでお前の魔力が変わったのか?!」
「え? まさか――そんな」
「まあ、そんな話は聞いたことがないしな。となると、何が違うんだ? お前が精霊王様にお会いした時と同じ魔力を放出すればいいだけのはずだがな?」
精霊王様に会った時の私の魔力……。
「おい! あの頃のお前は、いざという時に魔力切れにならないよう普段から魔力を貯めておくとか言っていたな! そんなことは誰も考えつかなかったが。まあ、やろうと思ったところでできないと思うがな。だが、お前――できたんじゃないのか?」
「あ! はい。いついかなる時もお腹の奥の方に溜めることを意識していました。そのうち意識しなくてもできるようになって寝ている間も溜めていました」
「おいおいおいおい。それは本当か? すごいことだぞ! そう言えば、今のお前と以前のお前とでは魔力量が違うな。そのせいじゃないのか?」
…………‼︎ 分かったかも‼︎
かつて私が溜めていた魔力――それは妊娠中にダニエルに吸収されたのかもしれない。移管されたと言うべきか。
「師匠。前に精霊王様を訪ねた時の魔力は、そのままダニエルの中にあるのだと思います」
「……! なるほど。腹の中の魔力が腹の中の子にか」
「この子と一緒にやってみます。ねえ、ダニエル。お手てをぎゅうっと握るようにして、お腹に力を入れてみて」
「ん? おててをにぎって、おなかに?」
「そうよ。ママンと一緒にやってみよう」
「うん! こうかな?」
ダニエルの体から私と同じ魔力が放出されるのが分かる。
同調するように私も魔力を放つ。
『おお、懐かしいな。魔女よ。その扉を開けるのだ』
いつの間にか目の前に光の粒子でできたような扉が現れた。
「師匠! 成功しました」
「ああ。この扉の先に精霊王様が……」
見惚れているところ悪いんですが、急ぎますので。
「じゃあ、行ってきます。あ、でもその前に」
「その前に?」
「本当に子どもが食べられそうなおやつってないですか?」
『ブックマーク追加』と下にある☆☆☆☆☆評価をよろしくお願いします!




