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歴代最強の魔女なんて肩書きはいりません。母になって最高に幸せなので愛息と平穏に暮らしたいだけです  作者: もーりんもも


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16 【サラ視点】ありえない話

 姿絵を見せているフェイが固まっている。

 慌てて子どもの方へ駆け寄ると、その子と一緒に姿絵を見ていた母親らしき女性も、目を瞬いている。


「ん? あ! そういやマリラに似ているかも」

「おい、マリラだって? もう一回見せてくれよ。……本当だ。マリラだ! え? マリラって魔女様だったのか?」

「おいおい。嘘だろ! あのマリラが?!」


 姿絵はフェイの手を離れて村人から村人へと渡されている。

 マリラというのは偽名か?


「その女性はマリラと名乗ったのですね? その女性が今どこにいるかご存じですか?」


 予想外の成り行きに、少しきつい物言いになってしまい村人たちを怖がらせてしまった。

「お母さん」という単語が聞こえたせいかもしれない。


 私がよほど怖い顔をしていたのか、フェイに、「まあまあ」と肩を叩かれた。

 彼女は作り笑いを浮かべて姿絵を取り返すと、とりなすように最初に気づいた子どもに話しかけている。


「もう一度よく見てくれるか。この人を見たことあるんだね? いつ頃、どこで見たのか教えてくれ」

 

 子どもは母親の背中に隠れてしまったので、代わりに母親が答えた。


「いつって――ええと、村に来たのは五年くらい前ですかね。なあ、そうだよね?」

「ああ、そんくらいじゃねーかな」

「そうだよ。うちの下の子が生まれてすぐだったからね」


 いつの間にか村人たちが互いに顔を見合って答えている。

 

「五年前に訪れたと。ふむふむ。それでどうして来たとか、どこへ行くとか言っていなかったかな?」


 村人たちがきょとんとしている。

 そして全員が村長を見た。


 そうか。村長が知っているのか。


「村長。マリラという女性について知っていることを話してください」

「へっ? あ、いえ、そのう……」

「隠し立てをするとあなたのためになりませんよ」

「ひいっ。そ、その。マリラは浜に打ち上げられていたらしくて、エイダンが、あいつが勝手に連れて来たんです! そして勝手に家に住まわせて、それで――」


 なんですって!?


「待って。この村に住んでいるのですか? どこに? どこにいるんです?」


 なぜか村長の顔色が青ざめている。


「ひいっ。お許しを! 魔女様だったなんて――知らなかったんです! 私はてっきりどこかの――あ、ああ、いいえ。その――」

「私の質問に答えて! どこにいるのかと聞いたんです!」

「すっ、すみません! ちょっと前に、で、出て行きました。もうこの村にはいません」

「なんですって! どうして? 五年も住んでいたのでしょう? なぜ出て行ったんです? 行き先は?」


 大人たちが目を逸らす中、最初に「マリラだ」と言った子どもが、「村長が追い出したんだって」と教えてくれた。


「よそ者だから追い出したんだって。エイダンが死んじゃったから」


 エイダン? そういえばさっきはダニエルとか――嘘でしょう! まさか……!


「村長。エイダンとは? そのマリラという女性とはどういう関係なのです?」

「はっ。はひっ。エイダンはマリラの旦那です。事故で死んじまって、死んでしまったので、その。よそ者を置く義理はないと思いまして、その」


 旦那? え? 噂に聞いていた話では、随分な人嫌いだったはずだが。


「まさかとは思いますが。ダニエルとは?」

「は、はい。マリラとエイダンの息子です」

「息子ですって!?」


 フェイも驚いている様子なので、やはりあの噂は本当だったのだ。


「サラ。他人の空似だよ。キャスリーン様は他人を寄せ付けない方だからね。結婚して子どもを産んだなんて、絶対に人違いだよ」

「でも五年前だなんて、そんな偶然がありますか? これは――まずい――かなりまずい……」


 筆頭魔女様に何と報告すればいいだろう。

 いや、それよりも。

 先の筆頭魔女様が生きておられたとなると……。

 その場合――どうなる?

 先の筆頭魔女様はどういうご身分になるのか。

 噂では、先の筆頭魔女様を捕縛するために王城から騎士たちが出向いて来たと聞いたが、このまま私たちが追っていくべきなのか。それとも――。


「サラ。とにかく一度、館に戻った方がよさそうだね」


 そうだ。ご指示を仰ぐべきだ。


「確かに。急ぎ戻るとしましょう」

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