14 【サラ視点】ドワテ村
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「フェイ。本当に先の筆頭魔女様の魔力だったのですか? 昔のことを思い出して懐かしさのあまり、『感じた気がした』だけなのではないですか?」
「別に昔のことを思い出していた訳じゃないけど、キャスリーン様の魔力を『感じた気がした』だけなのは確かよ。何度もそう言ってるのに、どうしてみんな同じ質問をするのかな?」
魔女の館に入ったのはフェイの方が先だけど、今では私の方が序列は上なのだ。
フェイは昔から序列に無頓着だったけれど、序列十位になり周囲から一目置かれるようになってからは、彼女の私への接し方には少しイラつく。
「それはあなたが序列二十位で、大雑把すぎる性格だからでしょ!」
「じゃあ私の報告なんて無視すればいいのに」
「できる訳ないでしょう! 先の筆頭魔女様の名前を出せば、あの魔女様が黙っておられるはずがないのは、あなただって知っているくせに」
「魔女様ねえ。私にとっての魔女様は、今でもキャスリーン様なんだけどなあ」
「ほらごらんなさい。そんなだから不確かな報告を上げてしまうんですよ」
「えー。サラ、それはないよ。ひどいなー」
ひどいのはフェイの方だ。
こんな辺鄙なところでの情報収集を命じられて、こっちはいい迷惑だ。
せめて魔導船が使えれば空から楽に探知できたのに。この五年間ずっと整備中だ。
馬車での移動は体力を削られる。
魔道具の開発は先の筆頭魔女様がお一人でされていたため、あの方が亡くなってからは、整備すらままならず使用にたえないのだ。
歴代最強の名をほしいままにされていたお方が――いけない。フェイにあてられて私までもが感傷的になっている。
「これまで立ち寄った町や村には、お姿を見かけた者すらいませんでした。無駄で無意味な時間を消費してしまいました」
「え? もう結論を出すの? 東の海岸線までが調査範囲だったはずだけど?」
「私が不正をするとでも? もちろん行くに決まっています! ただ無駄骨に終わるだろうと嘆いただけですよ。だいたい、あなただって先の筆頭魔女様が生きておられるなんて思っていないでしょう?」
「それは――まあ――そうなんだけど。でも、あのキャスリーン様だよ?」
「それ! その呼び方もどうかと思いますけどね!」
「キャスリーン様がいいっておっしゃったのに」
「はぁ。もういいです」
「……?」
向かいに座っているフェイが肩をすくめるので、そのお気楽ぶりに益々怒りが込み上げてくる。
はぁ。馬車で体力を、フェイで精神を削られる。
帰ったら絶対に休暇を取ってやる!
◇◇◇ ◇◇◇
フェイに、「東の海岸線までが調査範囲」と言われて、「行くに決まっている」と言い返した手前、まずはきっちり海岸に立ち寄らねば。
馬車を降りて海岸沿いを歩くことで、命令された内容を確実に実行したことを彼女に見せつけてやる。
肝心のフェイは、「砂ってブーツの網目から中に入ってくるんだよねー」などと言って、馬車の側から離れない。
ほんとムカつく。
急いで馬車まで戻れば、フェイが呆れたように言った。
「サラって馬鹿正直というか、生真面目だよねー」
「何か問題でも? それより、この捜索範囲の端に到達しましたけれど、立ち寄っていないのはあの辺りの村だけです。あそこで聞き込みをすれば任務完了です」
海岸から少し離れたところの斜面に、点々と家が立ち並ぶ様子が見て取れる。
どれも小さな家で、数も知れている。
貧しい漁村と思われる。
あんなところに先の筆頭魔女様のような方が現れたら大騒ぎになるに決まっている。
聞くまでもないと思うが、手を抜いて偽りの報告を上げる訳にはいかない。
村民たちが全員知らなかったと答えたことを確認すればよいのだ。
「あそこが最後の村ですね。もし先の筆頭魔女様があの村で魔法を使われているのなら、ここからでも感知可能なはずです。それがどうでしょう。これっぽっちも感じられません。やはりあなたの勘違いみたいですね」
「えー。また決めつけてー。それに、私が感じたのは、ほんの一瞬だけだったって、ちゃんと報告したんだけどなー」
「一瞬だけ? どういうことですか? あの方が魔女の館で研究されていた時は、一日中魔力を放出されていたと聞いていますけれど?」
「そうなんだよねー。何の研究だか知らないけれど、とにかく膨大な魔力量だったからねー。研究室からは一日中、魔力が漏れ出ていたなー」
フェイが懐かしそうに微笑んでいる。
私が先の筆頭魔女様にお目見えできたのは、魔女の館に入った時だけ。
それから数ヶ月後にあの事件が起きて、魔女様は亡くなられてしまった。
フェイは五年間、魔女様と同じ時間を共有している。
彼女の方が魔女様の魔力に精通していることは確かだけれど。
「とにかく行ってみましょう。何もなければあなたの勘違いということで筆頭魔女様に報告しておしまいです」




