13 取り戻した記憶
「ママン……?」
「うわっ」
え? あ! えぇぇっ‼︎ 違う違う‼︎
「だ、ダニエル! ええっと。ちょっと待って」
感情が追いつかない。
子ども‼︎ 私の子ども‼︎
さっき、あんなに自慢げに、「私が産んだ」って、ひゃあっ‼︎
そうだよ、産んだじゃん‼︎
ってか、エイダンと結婚してたじゃん‼︎
信じられない‼︎ 信じられない‼︎
結婚するなんて――誰かと一緒に暮らしていたなんて――子どもを産んで育てていたなんて――この私が?!
「ママン?」
あ。どうしよう。子どもには分かるのかな?
数分前の私と今の私の違いに気がついているの?
でも魔女だった頃の私とも、今の私は違う。
ダニエルのことは心の底から愛している。この子のためならどんなことでもできる。私の命だって惜しくない。
「ダニエル。大丈夫よ。あなたのママンよ」
「ママン!」
ダニエルの暖かくて柔らかい体をぎゅうっと抱きしめると、幸せホルモンが分泌されて、幸福感でいっぱいになる。
「それで? どうなんだい?」
せっかくいい気分でいたのに、師匠は遠慮がない。
「師匠。私の杖を持っていてくださったのですね」
「ほう? さすが魔女というか、精霊木の杖というか。思い出したんだね」
「はい。でもダニエルは私が産んだ子ですから!」
「今そんなこと聞いちゃいないだろ。……ったく。これを勝手に押し付けていったと思ったら、お前の訃報が届くし。年寄りを驚かせるんじゃないよ。まさかお前があんな最後を迎えるとは、いや、迎えていなかったんだが、まあ自業自得かもしれんと思ったよ」
「ええっ!? 私のために何かしようって思われなかったんですか?」
「当たり前だろ! こっちはとっくの昔に引退してるんだよ。あんなことになるほどアリソンとぶつかるなんて馬鹿だよ。人付き合いをサボったバチが当たったんだよ」
人付き合いかぁ。
確かに、無駄なことだし、不要なことだと思っていたなぁ。
『お前。ちょっとは同僚と交流しろよ? 魔法の連携も必要だろう。何より、上に上がるには横の繋がりや下からの支持も必要だぞ』
『……師匠。私は出世や政治には興味はありません。好きに研究ができれば、それだけで十分なんです』
『は! 何だいそりゃあ。研究だけで十分? だいたいお前は魔力の何を研究してるんだい? 報告一つ上げてないだろ』
『あ。すみません』
『ライバルはそういうところをつついてくるんだぞ?』
『なるほど。ならばいざという時のために、研究だけでなく実力もつけます。それで黙らせることにします』
『……は?』
……はあ。私……かなり面倒な奴だったかも。ちょっとイタいな。
そりゃあ、面白く思わない人だっていたよね。
でも本当に魔力の研究が面白くて、毎日楽しく過ごしていたんだよねぇ。
仮説を立てては色々と検証していた――ような……。
一生邪魔されず研究するために、誰にも文句を言われないほどの圧倒的絶対的な魔女として館で君臨するために、劇的に魔力を増幅させる方法を探していたような……。
味方がいない分、他勢V.S.私一人でも勝てるくらいに……。
うーん。まだ思い出せない部分も残っているみたい。
……でも。
この杖を持って、日がな一日色々試していたことは確かだ。
一日中魔力を練って、腹の奥底に溜めていたっけ……。
あれ? それって――どうなったんだろう?
体内を探っても、あの頃溜めていた魔力はどこにも見当たらない。
どこへ行ったの?
館の魔女たちに一斉攻撃されたのなら、きっと私も全力を出したはず。
全ての魔力を総動員して全放出したせいで消えて無くなっちゃったのかな?
別作品ですが、本日カドコミで「転生した私は幼い女伯爵」の第10話①が更新されています。




