第九十三話【山の洞窟】
約一時間後。
俺は今現在、干し肉を食べながら歩いている。
コモルドラゴンの野郎……全然いねぇ。
どこに隠れてんだ?
まじでいる気配すらない。
そもそも今、この山にいるのか?
もしいなかったら許さんよ?
にしても、本当に見つからない。
面倒くせぇ。
ちょっと興味のある罠もないしな。
てかよく考えたら、昨日は罠なんて一つも見当たらなかった。
つまり人間が簡単に出入り出来るような場所に、そもそも設置しないのではないだろうか。うん、そうに違いない。だってどこにもないんだもん。
と、その時。
とあるものが視界に入って来た。
お、おぉ……。
なんだこれ?
すごいな。
いい感じの雰囲気が出てやがる。
結構涼しそうだ。
ここからだと暗すぎて、なかの様子がほとんど見えない。
まぁ、何ということでしょう。
こんな山の中に、一つの洞穴があります。
入り口付近には植物があり、また上から垂れて来ている数本のツルがいい感じですねぇ~。
果たしてどれくらい奥へと続いているのでしょうか。
それが一番の見どころと言えるでしょう。
これぞ冒険という感じが、ものすごくしますね。
それでは早速入って行きたいと思います!
俺は何の躊躇いもなく、なかへと歩みを進める。
ふっ。
会話をする相手がいなくて暇だったから、自分でナレーションをしてやったぜ。
こうでもしないとせっかくの旅が盛り上がらないぜ。
ナレーションをしたところでそこまで楽しくはならないけど……。
まあ、ちょっと続行してみよう。
洞窟の中は薄暗く、入ってすぐなのにも関わらずかなり涼しい。
おそらく日の光が入っていないからであろう。
歩くたびに自分の足音が反響する。
わざわざ洞窟さんがエコーをかけてくれているようだ。
一定距離ごとに、どこからか日の光が侵入して来ているようで、そこまで暗くはならない。
レインは、これ以上進むと真っ暗になるのではと不安に思っていた。けど、今のところその心配はないらしい。
この洞窟は見た感じ広くもない。かといって狭くもないのだ。つまり俗に言う、丁度いいくらいである。
怪しいフードを被っているレインは、そんな洞窟の中を、自分の体格と比例していない大きなリュックを背負ったまま順調に進んで行く。
果たしてあの小さな体のどこに、そこまでの体力と力があるのか。
普通であれば、最初の数分は誰でも背負えるものなのだ。
例えオーバーなくらいの重さの物を運ぶことになっても、少しであればやせ我慢をして運ぶことが出来る。
だが、あくまで短時間であればの話。
果たしてレインはシーロス街を出発してどのくらいの間、あの重たくて大きいリュックを背負っているのだろうか。
明らかにやせ我慢では持たない。
つまりレインにはかなりの余裕がある。
誰が考えてもそう結論付けるはずだ。
……て、おい。
もはやナレーションとかじゃなくて、三人称小説みたいになっとるやん。
なんで自分のことをレインとか言っとんねん。
一人でいろいろと遊びつつも、歩き続ける。
少しして……。
わかれみちが あらわれた!
おい。
分かれ道が現れた……じゃねぇ。
現れんでもええわ。
引っ込め!
どうして、どっちに行くか悩まないといけないんだよ!?
まじで嫌いだわ。
一つの方を進んでいても、もう片方が気になって仕方ないんだよ。
分かるかね?
なんか知らんけど途中で戻りたくなる。
いや、文句を言ってもしょうがない。
ここは真剣に選ぼう。
もしかしたらどちらかの道の先に、宝箱があるかもしれん。
……う~む、悩む。
こういう場合は大抵真ん中の道が正解で、左右にそれぞれ行き止まりとか宝箱があったりするんだけど……今ここに真ん中なんてない。
それにここは現実だ。
普通に考えて宝箱なんてものがあるはずがない。
でも、もしあったらびっくりするよね?
まあ絶対にないけどね?
ないよね?
……。
よ~し、決めた。
とりあえず左に行こう。
そう考え、左側の通路に向かって歩き出した。
数分後。
行き止まりなう。
宝箱無いなう。
ただの土の壁なう。
何やねん! 腹立つなぁ。
本当に何にもないやん。
いや、別に期待なんてしてなかったけどさ。
それでもうざいわ。
まず行き止まりが癪に障る。
この洞穴を掘った奴って、何を考えて行き止まりなんか作ったの?
金目のものを掘り当てようとして、全く出てこなかったから途中で別のルートに変更したとかなのか?
それなら仕方ないな。
なんか疑問を自己解決出来たわ。
ということで俺は来た道を戻る。
やがて先程の分かれ道に到着した為、今度は右側の通路を進む。
俺はとにかく足を動かし続けた。
しばらくして……。
なんか地面に湿り気が出て来た。
所々に小さな水たまりがある。
たまに、ぽちゃん! という雫が水たまりに落ちる音が響く。
ふむ。なかなか面白くなって来たな。
これぞ洞窟って感じだ。
試しに壁を触ってみると、手が濡れた。
な、何っ!?
こ……この俺の手が濡れただと?
一体何があったというのだ?
暇すぎるが故に、そんなリアクションをしてみたりする。
おん。
もしかしたら結構才能があるかもしれん。
読んでくださりありがとうございます。




