第九十二話【落下事件】
赤いオークは意外と楽に倒せた。
苦戦を強いられるのかと思っていたけど……結構あっけなかったな。
ただ単にオークの物理攻撃を受けながら短剣を刺し続けるという単純な戦闘で終わったわ。
さて、次にコモルドラゴンだけど……。
全然見当たらない。
正直オークとの戦いが楽しくて忘れていたわ。
気付いたらコモルドラゴンの姿はどこにもなかった。
まじでどこに行った?
赤い体の為、かなり目立つはずなんだが……本当にいない。
よし、少し歩き回ってみるか。
数十分の間、そこら辺に生えている木の死角など、くまなく探していった。
でもそもそも赤い色がほとんどない。
地面に倒れて死んでいるオークも、いつの間にか青色に戻っている。
やはり絶命した後は普通になるんだな。
さっきのゴブリンとスライムも、いつもの色になっていた。
つまり魔物を赤色にしている犯人は、俺が七歳の時に初めて戦った赤いゴブリンを作った奴、二年生の時に戦った赤いオークを作った奴と同一人物で間違いない。
そんな分析は置いといて、今はコモルドラゴンを探さないと。
更にしばらくの間、山の中を探し回った。
だが結局見つけることは出来なかった。
辺りにはもうすっかり夜のとばりが落ちている
とても暗い。
目が暗闇に慣れている為それなりには見えるが、この状況で歩き続けるのは面倒くさい。
どこに何があるか詳しく分からないと、心臓に悪いしな。
もしかしたら、とある誰かが魔物用の罠を仕掛けている可能性がある。
それに嵌ってしまったら、普通に痛いだろう。
罠とは、いろいろな種類がある。
踏むと足を鉄のとげで挟まれるやつ。
印のついた落とし穴に落ちると、下に槍が用意されているやつ。
などといった、古典的なものである。
実際この世界にはそう言った狩りの方法が無いこともないのだ。
そんなのをくらうなんて嫌だね。
防御力に自信がある俺でも、どうなるのか想像がつかん。
力を入れていない時にくらったりしたら、ガチで刺さるかもしれん。
俺が生まれた森の中は、田舎すぎてあまり人がいなかった為そんなものはなかったけど、この山の近くには大きい街がある。
つまり人がたくさんいるのだ。
冒険者の中には力がある者ばかりではない。
知恵を使って魔物を狩り、収入を得る者。
一見狡猾にも見えるやり方で魔物を殺し、その肉や素材を手にする者。
さまざまだ。
だからこの山には、罠がある可能性が高いという訳。
俺は視界の悪い状況で、わざわざ心臓に悪いことをするのは嫌だね。
日常に置いて自分で自分の体にダメージを与える奴のセリフではないかもしれんが。
「とにかく……俺は寝る」
もし明日、罠があったら身構えてわざとくらってみよう。
もしかしたら無傷でいられるかもしれない。
仮に怪我をしても特訓になるぜ!
ということで俺はそこら辺の木に登り、太めの枝の上で眠りについた。
次の日。
目が覚めた。
あれ? なんか目の前に石と草がある。
地面だ。
どうやら俺は木の上にいないらしい。
……寝ている間に落ちたのか?
そういえば昨日眠りにつく前、なんか落ち着かなかったな。
とにかく寝る体制に悩んだのだ。
何故かって?
リュックがでけぇ。
はっきり言って邪魔だわ。
背中がもんまりしてどの枝に座ってもバランスが取れん。
かといって特に置く場所もなかった。
地面に置いていて人とか魔物に盗まれるのもだるいしな。
という訳で、不安定な格好で寝た結果。
落ちたらしい。
全然気付かなかったんだが……。
俺、いつ落ちた?
少なくとも、眠りにつく前までは上にいたと思う。
うん、流石に意識があるうちに落ちたら分かるはず。
となると眠りについたあとっていう結論になる訳だが。
それにしてもおかしいだろ。
普通落ちたら分かるぞ?
結構衝撃が来るはずだしな。
よし分かった。
誰かが木の上で寝ている俺を優しく地面に下ろしてくれたんだ。
こんな所で寝ていたら危ないですよ~って。
うん、そうに違いない。
「……ん?」
そこでふと頬に違和感を感じ、指で触ってみた。
おーん? なんかザラッとしているぞ?
砂でもついてんのか?
不思議に思い、少し摘まんで目の前に持って来ると……人差し指と親指の間に赤い塊が見えた。
血だな。
固まってやがる。
うん、俺はやっぱり落下したらしい。
まさか血が出ても眠りから覚めないとはな。
こんなのは初めてだ。
……もはや頑丈って言うのか?
ちょっと怪しくなって来たな。
どちらかというと鈍感?
神経が終わってる?
まあ何でもいいや。
行こう!
赤いコモルドラゴン探しへ!
ということで俺は落下事件を軽く流し、ゆっくりと歩き出した。
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