第八十九話【実力派冒険者たち】
まずい。絶対バレているわ。
……。
逃げるか?
それとも戦う? ……いや、それは流石に止めておこう。
一応冒険者たちの様子を確認する為、草の隙間から覗いてみると、
「例の魔物か?」
「全員、気を抜くなよ?」
───あれ?
およそ二十名は、全員俺とは別の方向を向いている。
それぞれ剣や弓など各自得意の武器を構えていて、いつでも戦えるような状態だ。
まさか……俺が折った枝の音に反応していない?
……ふぅ。助かった。
なんか一瞬だけど恐怖心を感じたわ。
潜入捜査をする人たちとか、よくやるな。
普通に怖かった。
まじで心臓に悪いから、今後一切こういう展開止めてね?
と、その時。
俺の元にも大量の枝の折れる音が聞こえて来た。
バキッ! ボキッ! などという気持ちのよい音が重複している。
まさか……一匹じゃない?
いや、そもそも赤い魔物ではない可能性もある。
この山に生息している雑魚モンスターかもしれん。
枝の折れる音はどんどんと近付いて来る。
なんか緊張感あるなぁ。
「来たぞぉ!! 例の魔物だ!!」
「全員一旦距離を取れ」
「「おう」」
「「「了解」」」
「御意」
そんな会話の後、冒険者たちは俺のいる方向へと後退を始めた。
まずい。
このままだと見つかる。
早くここから移動しないと。
俺はなるべく音を立てないように、右方向へと移動した。
そして冒険者たちから死角になるよう、岩の後ろへと隠れる。
うん、ここならとりあえず大丈夫だろう。
けど見つかってしまうのは時間の問題だ。
早くいい場所を見つけよう。
考え事をしている間にも、向こうでは戦闘が続いている。
枝の折れるような音が聞こえるが、肝心の赤い魔物が見えない。
岩と草の隙間から覗いた感じ、まだ冒険者たちしか視界に入って来ない。
「くらえ、ストレートアロー!」
男性の一人が、後ろに後退しつつもそう声を上げて矢を放った。
一瞬見えたけど、矢の中心が少し光っていた。
なのでおそらく放つ直前に魔力を宿したのだと思われる。
なかなか面白いことをするじゃないか。
俺には到底真似出来ん。
魔力がないからな!
まじで魔法使ってみたいわ。
どんな感覚なのだね?
「おい、まじかよ。全然怯んでねぇ」
「やばいな」
そんな声が聞こえて来る。
ふむ。やはり相手は赤い魔物で間違いないらしい。
AランクかSランクかは知らんが、実力者の放った矢がびくともしないのは、明らかに普通の魔物ではない。
てか早く見たいわ。
俺の見える角度まで来いよ!
とそこで、
「……私に任せて」
一人の青髪女性がそう呟いて地面を蹴った。
その瞬間、姿が消えた。
速っ!?
全然見えなかったぞ?
多分俺より速い。
俺は青髪女性の現状を確認しようと、今の場所から少し移動した。
すると、
「えっ?」
思わず驚いて小さめの声を上げてしまった。
速すぎて青色の光が動いているように見えるのも普通ではないが、一番びっくりしたのが赤い魔物。
一応草の隙間から見える。
何だありゃー。
赤い……スライム?
普通水色のボディーが、血のように赤く染まっている。
いつもなら黒い目も今は赤い。
開いている口の中はいつも通り赤い。
青髪女性はその赤いスライムを順調に切り刻んでいる。
スライムのボディーが少しずつ削られて行っているのだ。
まじですごい。
力は俺よりも劣っているっぽいけど、スピードは異常と言ってもいい。
どうやって動いているんだ?
あの人……Sランク冒険者なのかね?
明らかにAランクの戦闘力じゃねぇだろ。
これなら俺がいなくても終わりそうだ。
てか百パーセント終わるだろう。
……面白くねぇ。
そもそもなんでこのタイミングでスライムなんだ?
俺の予想ではもっと強い魔物が赤色に変えられていると思っていたのに。
そんなことを考えていると、
「ヴァァァ!!」
新たな魔物の鳴き声が聞こえて来た。
よく確認してみると、赤いスライムの後ろ辺りに赤いゴブリンがいる。
更に赤くて全長二メートル程度あるトカゲみたいな形のコモルドラゴン。
一年前に戦ったことのある赤いオーク。
合計で四匹か。
なんでこんなにいんの?
やばくね?
「おい、青い閃光のレイナさんがスライムをやっているうちに、俺たちはあの気味悪いゴブリンとオークとコモルドラゴンを倒すぞ?」
「御意」
「了解だ!」
「行くぞ!!」
一人が士気を高めたことによって、およそ二十名が一斉に走り出した。
そして数人が木の後ろに隠れつつも弓矢を使用して攻撃をしたり、魔法使いが詠唱を行ったりしている。
更に剣や槍を持った冒険者たちは、良い感じのコンビネーションでゴブリンに飛び掛かかり、反撃をする間も与えずに武器で攻撃。
ふむ。
めっちゃ戦いが上手いやん。
流石ベテランたち。
数は力なりって感じか。
見てたら分かるけど、一人一人はそんなに強くない。
けど、それぞれが足りない部分を補っているように見える。
すごいな。
俺には出来ない真似だ。
読んでくださりありがとうございます。




