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第八十八話【張り込み】

 張り込みの場所は、とりあえず冒険者ギルドの向かいの家の屋上にした。

 俺は建物と建物の間を上手いこと登り、床に鞄を置いた。

 そして、定位置について寝転がる。

 いい感じに段差がある為、俺の目より下は隠れるという形だ。

 これで他の人に見つかりにくいだろう。

 

 てか、俺が今いる建物って何なんだろう。

 見た感じただの民家っぽいけど。

 多分見つからないよな?

 住んでいる人が洗濯物を干しにこの屋上まで来ないよな?


 うん、一通り見たけど、下へと続いている穴はなさそう。

 それっぽい蓋もない。

 つまり大丈夫。


 下の大通りを歩いている一般人に見つかって不審者扱いされなかったら問題ない。

 だからあまり立ち上がらないようにしよう。

 

 俺はうつ伏せになった状態で、鞄から本を取り出し読み始める。

 冒険者たちを見逃したらまずいので、あまり集中しないように注意しないと。

 

 

 しばらくして……。

 

 

 約十人の冒険者が、ギルドへ入って行く姿が視界に入って来た。

 俺は手元の本から目を離し、ギルドのドア付近に集中する。

 

 あれ?

 確かあの人たち……見たことあるぞ。

 去年赤いオーク討伐に行っていたフードを被っているAランクの人だ。

 ギルドマスターの言葉に「御意」って答えていた怪しい方。


 あの赤いオークの力を数分は見ていたはずなのに、また来るとは。

 かなり勇敢な人だな。

 それとも本当に強いのか?

 実際去年は、斬撃の咆哮とかいう四人組のAランクグループの、リーダーがやられていただけだったし。

 だから俺は、あの御意さんの力は見ていない。

 

 次にとても大きな大剣を肩にかけているおっさん。

 あの人……やはり来たのか。

 数少ないSランク冒険者。

 

 他数名は……一応顔は見たことある。

 だが全員は知らん。

 

 と、そこで冒険者ギルドのドアがしまった。

 何にせよ、あの人たちがアラストル国からの救援隊で間違いないだろう。

 結構早めに来てくれたな。

 こっちとしては助かるぜ。

 なんせここ、めっちゃ暇。

 

 俺は静かに立ち上がってリュックを背中に背負うと、狭い建物の間に飛び降りた。

 そしてフードを更に深く被ると、冒険者たちを待つ。

 うん、このフードをしていたら、なんか暗殺者になったような気分を味わえるわ。


 何ていうんだろう……孤立している一匹狼みたいな感じ。

 まるで自分が強くなったようだぜ。

 実際に強いけどさ。

 


 それから数十分後……。

 

 どのくらいだろう。

 見た感じおよそ二十人弱の冒険者たちがギルドから出て来た。


 それぞれ特徴的な格好をしている。

 

 全員こちらの存在には気付いていないらしい。

 まあ、こんな暗い所にいるから見える方がおかしいか。

 

 冒険者たちは、揃って大通りを歩いて行く。

 こう大勢で移動をしていると、圧巻だな。

 全く見たことのない者が半分以上いる為、この街で活動をしている冒険者たちだろう。

 それもかなりの強者。

 明らかに一般人やチンピラどもとはオーラが違う。

 

 まあ、アラストル街にいる裏闘技場選手の方が凄いんだけどな。

 実際Aランク冒険者の選手も数人いるが、順位は中盤辺りだ。

 つまりほとんどが冒険者にはなっていない裏の人間ということ。


 あのメンツが集まったら、一応は赤い魔物といい勝負が出来るんじゃねぇのか?

 

 俺は静かに歩みを進め、冒険者たちの後ろをついて行く。

 かなり距離を空けている為、誤って見つかるということはないだろう。

 


 その後冒険者たちと俺は結構な距離を移動した。

 

 シーロス街の正門を出て、草原の上の道ではない部分を歩き、なんか大きな山をしばらく登った。

 

 

 で、今現在木や植物などの間を通って、登ったり下ったりしているのだが……赤い魔物の正確な位置は、誰にも分からない感じか?

 明らかに探しているよな?

 

 俺は木の後ろに身を隠しつつも、ついて行く。

 


 更に数分後……。

 

 まだ見つからない。

 

 なんか同じ所ばかり回っているような気がするのだが……。

 気のせいかね?

 正直初見の森は、自分がどこにいるのか全然分からん。


 因みに俺の住んでいた森の構造なら、ほぼ全部把握しているぜ。

 その感じで学校の試験範囲もすべて把握出来れば苦労はしないのだが……。

 如何せんやる気にならん。

 まあ、その話は置いとこう

 

 にしてもこの山、魔物が少ないな。

 赤い魔物のせいか?

 

 そんなことを考えつつもゆっくりと歩いていると、

 

 バキッッ!!

 

 地面に落ちていた太めの枝を足の裏で踏みつけて、折ってしまった。

 やばっ。

 めっちゃ大きい音が鳴ったわ。

 バレた……かもしれん。

 

 俺は急いで近くにあった木の後ろに隠れる。

 

「っ!? 誰だ!!」

「なんかあっちから変な音が聞こえて来たぞ?」


 冒険者たちの方向からそんな会話が聞こえて来る。

 まずい。

 百パーセントバレているわ。

読んでくださりありがとうございます。

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