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第八十七話【シールス街・冒険者ギルド】

 シールス街の冒険者ギルド。

 

 ここはアラストル街のギルドと似ていて、ボロボロな見た目の木造り。

 ドアの上付近に狼を剣で刺している絵が描かれているのも同じだ。

 

 案外見つけるのにそこまで苦労しなかった。

 屋台などを見つつも大通りを歩いていたら、右方向にこの建物が見えて来たのだ。

 うん、この見た目の建物は冒険者ギルドで間違いないはず。

 

 そう考え、俺はフード付きの黒服に着替えたあとで、ドアを開け中へと入る。

 

 すると、木の机で酒を飲んでいるおっさんや若い衆たちの視線がこちらへと集まった。

 おいおい。

 何見てんだ?

 てかアラストル街の冒険者ギルドと全然雰囲気変わらないやん。

 ギルドって全部こんな感じなの?

 ガラが悪いのぉ。

 

 視線が集まるということには慣れている為、フードを更に深く被ると一直線に受付へ向かう。


「おい、ちっこいのが来たぜ」

「ありゃー、完全に子供だな。おおかた金を稼ぐ為に新規登録をしに来たんだろう」

「だろうな。あんな奴見たことねぇ」


 なんか話し声が聞こえて来るけど、ほっとこう。

 

 やがて受付のカウンターにいる女性の目の前に到着すると、

 

「あの、すみません。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


 小さめの声でそう尋ねた。

 それに対し、女性は少し不思議そうな顔をしつつも口を開く。

 

「あ、はい。どうされましたか?」

「この辺りで強い魔物が見つかったって噂を聞いたんですが」


 そこまで言ったところで女性があっ! という表情をする。

 

「あの、もしかしてアラストル国からの救援の方ですか?」


 うむ。

 嘘はつかない方がいいよな?

 どうせあとからギルドカードを見せてくださいとか言われそうだし。

 そうなると俺がCランクだとバレる。

 ということで本当のことを言おう。

 

「いえ、違いますね。けど腕には自信があるので教えてもらえませんか?」


 それとほぼ同時に女性は口を開く。

 

「……それでしたら無理ですね。見た感じあなたは子供みたいですし、そもそも冒険者登録はされていますか?」


 なんか失礼な奴だな。

 絶対俺を子ども扱いしてやがるな?

 俺は強いんだぜ?

 いや、まじで。

 

「一応」


 俺は軽くそう答えて、鞄の中から青色のギルドカードを出す。

 この青色はCランクを示しているものだ。

 

 それを出した瞬間、女性の顔は一瞬驚いた表情に変わったものの、すぐに首を横に振った。

 

「正直Cランクの方にお教えするのは気が引けます。命を捨てに行ってもらうのと同じですから」


 やっぱりそうなるのか?

 面倒くさいな。

 

「そうなんですか?」

「はい。つい先日Aランク冒険者数人が一方的にやられて逃げて来たという情報を耳にしています」

「へぇ」


 知ってる。

 

「なので今現在救援の方々を待っている状況です。という訳で申し訳ないですけど教えることは不可能ですね」


 これは話し合いをしても無駄っぽいな。

 引こう。

 

「そうですか。分かりました」


 俺はそれだけ言うと、このギルドをあとにした。

 

 外野の笑い声がずっと聞こえて来ていたが、無視しておいたぜ。

 てか、どうしよう。

 まさか教えてくれないとはな。

 子供だからって癪にさわるような接客しやがって。

 もういい。

 俺だけの力で探してやる。

 

 とは言っても、どこを探せばいいんだろう。

 正直この国の地形なんて知らない。

 どこに何があるのかも分からん。

 つまり、この膨大な土地のの中で目的の魔物を探し当てるのはほぼ不可能だろうな。

 

 ……結論が出ちゃったけど、それじゃあダメじゃん。

 俺は戦いたいんだから。

 

 う~む。

 考えろ、俺。

 脳をフル回転させろ。

 

 一つ目、自力で頑張る。うん、無理に等しい。

 

 二つ目、目撃情報が耳に入って来るまでこの街を満喫しておく。……いや、楽しそうだけど、もしそうなったら俺は何の為にここへ来たんだという話になる。

 確かに街でスイーツを食べながらジュースを飲むのもいいかもしれん。

 でもそれ以上に強い魔物と戦いたいんだよ。

 

 ……あ、名案を思いついたかも。

 目撃情報が耳に入るまでっていうアイデアから思いついたんだけどさ、俺が冒険者ギルドの近くで待てばよくね?

 どういうことかというと、多分今日か明日くらいにはアラストル国からS、Aランク冒険者たちが到着するはず。遅くても明後日くらいだろう。

 

 つまりその実力派冒険者たちが赤い魔物を倒しに行くのを尾行すればいい。

 どうせ冒険者如きが束になって協力したところで、すぐに逃げ帰るだろう。

 そのあとで俺がじっくりと戦えば問題ない。

 

 うむ。

 我ながらいい提案だ。

 

 まあ一番悲しいのが、そもそも救援が来ないこと。

 

 結構前の赤いオークが現れた時、一部のAランク冒険者たちはいともたやすくやられていた。

 実はあのあとかなり騒ぎになったからな。

 Aランクの人間ですら勝てないような魔物を誰がどうやって倒したのか?

 何故街から遠く離れた草原で死んでいたのか。

 

 数人の目撃証言から、フード付きの黒色の服を着た子供だったという話がギルド内で上がっていた。そう、かなり広まっているのだ。

 バレたかな? という考えが頭の中をよぎったが、まあ大丈夫だった。

 あの時、フードを深く被っておいてよかったと思う。

 過去の俺の判断に感謝。

 

 で、まあ何が言いたいかというと、もしかしたら実力者たちがAランクが一瞬でやられたという噂に怯え、そもそもここまで来ない可能性がある。

 となると、今からやろうとしている、ギルドの近くを張り込み作戦は無駄。

 ただ単に無駄な労力を使うだけという結果になる。


 いや、だとしてもSランクの方たちは来るかな?

 俺もほとんど見たことないんだけど……確か一人ものすごく強いおっさんがいたはずだ。

 あの人なら来るかもな。

 

 ……とにかく、今はこれしか案が無いんだし素直に待とう。

 

 ということで張り込み作戦を開始した。

読んでくださりありがとうございます。

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