第七十七話【絶交】
ティナさんは呆れているようにも見える表情で口を開く。
「実は私気付いていたんだ。最近レインくんに邪魔だと思われていたこと」
俺の気持ち……バレていたのか?
「……」
「ごめんね。今まで分かっていたのにしつこく話しかけたりして」
「……」
「私、嫌がらせのように二人の間に入ろうとして最低だよ。だからもうレインくんの友達でいる資格なんてない。これからはただのクラスメイトってことでいいかな?」
「……いや───」
……。
ダメだ、言い返せない。
彼女の言っていることは当たっている。
俺はティナさんを鬱陶しく思っていた。それは事実だ。
「───大丈夫。今度レインくんに新しい彼女が出来た時は、陰ながら応援してる。……頑張ってね」
ティナさんはそう呟いて立ち上がり、俺と目を合わせることなくドアへと向かって歩き出した。
彼女の頬から、一滴の涙が落ちるのが見えた。
その涙が、まるで悲しみを表現するかのように、床に染み込んで広がって行く。
「ま、待ってよ!」
とっさにそんな言葉が出た。
何も言うことなんて考えていない。
けど、何となくこのまま行かせたら負けのような気がしたのだ。
彼女は俺に背を向けたまま立ち止まる。
「……な、何かな?」
「勝手に作り話をしないでもらえる?」
後先も全く考えないままそんなことを口に出してしまった。
「え……」
「俺はティナさんを嫌ってなんかいないし、邪魔だとも思ってなかった。だからこれからも友達でいいよ?」
ダメだ、もう引き返せない。
嘘はつきたくなかったのに……。
どうして俺はこんなにも軽く嘘がつけるんだよ!?
でも、これでよかったのかもしれない。
ここでティナさんを失ったら、俺は本当のぼっちになる。
「ど、どうして……」
「ん?」
俺が聞き返したのと同時にティナさんはいきなり俺の顔を見て、
「どうしてそんな嘘がつけるの!?」
いつもとは全く異なる、大きくて鋭い声だった。
は!?
「いや、嘘なんかじゃ───」
「───嘘だよ。大体分かるもん!」
「で、でも……」
くそ、なんでこんな子に追い詰められなきゃいけないんだよ!
「あのさ、私今のレインくんのこと……嫌い」
「……」
いきなりなんだよ。
今言うことか?
「上辺だけの笑顔で、心の底では私を嫌いだと思っているレインくんが嫌い」
「……」
「廊下で絡んで来ただけの子に暴力を振るうような気の小さいレインくんが嫌い」
「……」
「体育館裏で上級生の人たちに殴られていても、どこか嬉しそうにしているレインくんが嫌い」
「……やめろ」
見てたのか?
「嘘つきのレインくんが嫌い」
「……もういい」
「最低なリーフさんと付き合っていたレインくんが嫌い」
「うるさい」
てか、最低なリランディさんと付き合っていた俺が嫌いって、どういうことだよ。
意味分かんねぇよ。
「文句があっても直接言ってくれないレインくんが嫌い」
「だから、うるせぇ!! もういいって言ってるだろ?」
思わず大きい声を出してしまった。
ティナさんは驚いたのか、一度体をビクッ! と反応させつつも、顎に涙を溜めて喋り続ける。
「もう、関わらないからさ……関わって来ないでよ…………お願い」
そんな悲しい声と共にティナさんは後ろを向き、片手で顔を抑えながらドアを開けて下へと降りて行った。
……うぜぇ。
あんな奴こちらから願い下げだ。
何度、嫌いって言えば気が済むんだよ。
あれだけ言われて腹が立たない奴なんていない。
……決めた。
俺はもうあの子と関わらない。
それがお互いの為だ。
もうあの子がどれだけ困っていようが、話しかけもしないし、救ったりもしない。
にしても、まさかあそこまで口が悪くて、あれほど洞察力があるとは思わなかった。
完全に俺の心情がバレていた。
それこそ、俺のこの気持ちが一人称小説になって読まれているんじゃないかってくらい。
……あー、なんか腹立って来た。
あいつまじで何なんだよ。
いきなりリランディさんにビンタをしたかと思ったら、急に逃げ出して。
それで追いかけたら、今度は俺のことをめちゃくちゃに言って。
……俺の周りって、まともな奴いねぇの?
読んでくださりありがとうございます。




