第七十三話【謎の男性集団】
うん、飽きたからもういいや。
俺は飛んでくる蹴りを無視してその場に立ち上がりつつも、
「じゃあ、そろそろ帰りますね?」
「は?」
「何だてめぇ!?」
俺が真顔なのが不思議らしく、二人は驚きの声を上げた。
いや、ゴキブリに殴られて痛さのあまり悲鳴を上げる奴なんておらんやろ?
‥‥‥あ、俺‥‥‥叫ぶかもしれん。
て、そんなことはどっちでもいい。
とにかく今言いたいのは、こいつらの攻撃がワンパターンすぎて飽きたってこと。
「俺、こう見えて結構忙しいんで」
俺はそう言って一度微笑むと、歩いてその場をあとにした。
「ふ、ふざけんな!」
「待てや、こら」
二人は勿論俺を引き留めようと頑張っていたが、無視。
しばらく歩き続けて、見晴らしのよい場所に辿り着いた辺りで諦めおった。
さて、一つ宣言しておくぞ?
一度目は許す。
けど二回目があると思うなよ?
俺に喧嘩で関わるなら、強くなってからにしろ。
弱い奴とやったところで、退屈だ。
それから数日後。
授業も一通り終わり、放課後。
俺は今日、リディさんと一緒に街中へ遊びに来ていた。
「で、今日は行く場所を決めてないけど、どこに行く?」
街中を歩きつつも横にいる可愛いリディさんにそう尋ねると、彼女はにっこりと笑い、
「あ、まだ言ってなかったっけ? 今日はちょっと行きたいところがあって」
「へぇ、どんなとこ?」
「それは着いてからのお楽しみ‥‥‥」
何だよ、もったいぶりやがって。
俺に隠しごとをしているのかね?
可愛いから許すけど。
にしてもやっぱりリディさんと一緒に遊んでいたら、楽しいや。
全然ストレスが溜まらない。
悪口とかを言われてもすぐに許せてしまう。
多分他の子ならこうはいかない。
下手したら手が出るわ。
うん、楽しい。
街中を一緒に歩いているだけで楽しい。
けど、一つ気になることがある。
今日のリランディさん‥‥‥なんか違うような。
気のせいだったらいいんだけどさ。
なんていうか、雰囲気が微妙に異なっている。
まるで何かに気を取られているかのような。
門を出た辺りから、俺に気付かれない程度の頻度で後ろを気にしている。
確か前にもこんなことがあったんだよな。
誰かにスカートの下を覗かれないよう警戒しているのならいいんだけど‥‥‥そんな訳ないよな?
でもまあ、気にしないでおこう。
あまりしつこく聞いたら彼女に悪い。
だけど向こうから相談してくれるなら全力で何とかしてあげる。
それが俺の考える、自分を好きだと言ってくれている女の子への正義だ。
俺とリディさんは、しばらくの間会話をしつつも歩き続けた。
少しして。
「レインくん‥‥‥つ、着いたよ?」
横でそう言ったのは、リディさん。
‥‥‥ふむ。
ここは見覚えがある。
行き止まりになっていて、大通りへ続いている通路が一つあるだけだ。
周りを囲んでいる壁が高いせいで、ほとんど日の光が入らない。
そう、ロストが俺を倒す為にお姉さんであるアンナさんを連れて来た場所。
リディさん‥‥‥どういうつもりだ?
人気のない場所でいいことをしようって雰囲気でもないな。
彼女は若干動揺していて、緊張も見られる。
穏やかではない何かがあるのは間違いないだろう。
「ここは?」
一応そう聞いてみた。
すると彼女は申し訳なさそうにする。まるで謝っているかのような表情だ。
「わ、私の彼氏に会いたいっていう人がいて‥‥‥もうすぐここに来ると思う」
なんかロストの時と同じようなパターンだな。
俺に会いたいとかいうその誰かが穏やかな人であれば、まずこんな所へ呼び寄せたりしないだろう。
「そっか。じゃあ待とう」
俺はあえて優しくそう呟いた。
まだ彼女が悪いことをすると決まった訳ではない。
もしかしたらリディさんの親が、俺に会いに来るという可能性もあるかもしれん。
そうなったらちゃんと挨拶しなきゃな。
少しして……。
唯一の大通りへと続いている通路から、十人程度の男性が歩いて来た。
全員が黒色の半袖を着ている。
わおっ。
すごいな。
狭い道路いっぱいに広がっていて、なおかつ数人が後ろの二列目になっている。
この中にリディさんのお父さんがいるとは思えんな。
全員の表情からして穏やかではないことは確かだ。
横にいるリディさんは、怯えたような顔をしている。
どうやら俺の視線にも気付いていない様子。
てか、多すぎやろ。
誰やねん、こいつら。
‥‥‥あれ?
えっ?
ん?
端っこ付近にいる奴‥‥‥見たことあるぞ?
どうやら向こうもこちらの存在に気付いたらしい。
あっという表情をしている。
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