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第三十五話【食堂】

 裏闘技場での戦いを終え、学園に戻って来たのだが‥‥‥。

 

 やはり今現在俺の目の前に、閉ざされている門が立ちはだかっていやがる。


 この野郎、外にこんな可愛い生徒がいるのにも関わらず閉めやがったな!

 

 辺りはもうすっかり真っ暗である。

 所々にある照明と月明りが嬉しい。

 

 今日の対戦相手は俺よりも順位が下の人で、普通に余裕だった。

 適当に数回体を殴ったあとで首元に鉄の剣を押し付けたら、すぐにギブアップをしやがったぜ。

 

 因みに二日ほど前、武器屋で鉄の剣を購入したのだが、持ち運びが面倒くさいし、何より置く場所がないことに気付き、マリシャス様こと裏闘技場支配人のおじいさんに相談してみたところ「特別にわしの部屋で預かっといてやろう」と言ってくれた。

 なので今日もおじいさんの部屋に、その鉄の剣を置いて来たのである。

 

 さてと、問題はここからだな。

 そう、どうやってアラストル学園の敷地内に入るのか。

 正直言って今日の対戦相手に勝利するよりも格段に難しいわ。

 

 今の所俺が考えている策は、学園を囲んでいる壁の周りを一周してみる。

 もしかすると壁が低くなっていたり、秘密の隠し通路があるかもしれない。

 

 ということで俺は静かに歩き出した。


 

 少しして。


 

 正門の丁度真反対辺りに行った所で、なんの意図があるのかは分からないけど一部だけ明らかに壁が低くなっている場所があった。

 しかも木箱や樽が地面に置かれている。

 樽がわざとらしくこの配置にあるということは、俺以外にも夜遅くまで遊んでいる上級生がいる可能性があるな。

 

 何にせよ好都合だ。

 

 俺は助走をつけると、木箱を踏み台にしてジャンプをし、低くなっている部分を飛び越えた。

 

 そして地面に着地をするタイミングで音を立てないように前回りをし、そのまま校内を歩き出す。

 

 成功だ。

 

 さて、どうやってあの寮に戻るんだ?

 あえて廊下ではなく建物外のアスファルトの上を歩きながらそんなことを考える。

 

 この学園の土地は本当に広い為、まじで自分がどこにいるのか分からない。

 一応初日で正門と体育館と寮周辺の地形は把握したけど、その反対側となったら分かる訳がないわ。

 

 俺は建物の窓から漏れて来ている光に当たらないよう、壁際を歩いて行った。

 

 しばらく進んで行くと、どこからかいい匂いが漂って来た。

 

 辺りを見回してみると壁がすべてガラスで作られている建物がある。

 中にはたくさんの机や椅子があり、とても広い。

 そして生徒たちが会話をしたりしながら黙々と食事をしている姿が見える。


 そういえば説明会の時、朝昼夜のご飯は各自で自由に食べなさいって言ってたな。

 

 この時間にも結構な生徒がいるし、ちょっと行ってみよう。

 一応裏闘技場から戻ってくる時に鶏の手羽先を食べ歩いたけど、あんなので足りるはずがない。

 

 俺は一目散にその明るい建物へ向かい、中に入った。

 おお、すごい。

 めっちゃ食堂やん。

 イメージ通りだわ。

 色んな所から生徒同士の会話が聞こえる。

 入ってすぐの場所にカウンターがある為、そこで注文をするのだろう。

 

 俺は誰も並んでいないカウンターのような場所へ行く。

 

 すると向こう側に立っている白い帽子を被ったおばちゃんが、俺の存在に気付き口を開く。


「あら、いらっしゃい。‥‥‥あんた初めて見る顔だね。今日入った新入生かい?」

「あ、はい。そうです」

「やっぱりねぇ。じゃあ簡単に説明してあげるわ。まずこのメニュー表に料理名と金額が書いてあるから食べたい物を選んでおくれ」


 おばちゃんはそう言って目の前にある厚紙を指さす。

 ほう、色んな種類があるんだな。

 これだけあったら悩まなくてもいいわ。

 

「えーっと、じゃあ‥‥‥オーク肉のあんかけと、小麦パン四つと、野菜スープと、鹿肉まんじゅう三つと、兎肉のくるみあえ二つで」


 俺が早口で注文していくと、おばちゃんは笑いつつも驚いたような表情をする。

 

「ちょっとあんた‥‥‥そんなに頼んで大丈夫なのかい?」

「大丈夫です。こう見えても胃袋の大きさには自信があるので」


 俺の言葉におばちゃんは若干悩みつつも頷く。


「分かったよ。じゃあ横にずれてちょっと待ってな」

「はい」


 ということで俺はお金を払った後、料理が完成するのを待ちやがて次々と出て来たので、近くにあった空いている机に運んで行った。

 

 それぞれ料理はおぼんに乗せたのだが、量が多すぎて結局三往復もしたぜ。

 いやー、にしても全部美味しそうだな。

 俺は手を合わせて小さい声で「頂きます」と言うと食べ始めた。

 

 うん、普通に美味しい。

 かなりお財布に優しい値段だし、ここ気に入ったわ。

 

 ‥‥‥てか周りの生徒たちがこちらに目を向けて来ているんだけど‥‥‥何か用かね?

 

 俺は周りの視線に気付いていないふりをして食べ進めていく。

 

 おっ、この鹿肉まんじゅうって初めて食べたけど、かなりうめぇ。

 外はしっとり中はジューシー。

 

 オーク肉はどこの店でも安定の味だな。

 

 そんな感じで食事をしていくこと数分‥‥‥。

 

「あのー、ここいいかな?」


 突然そんな声が聞こえて来たので、口に運ぼうとしていた小麦パンを遠ざけ正面を向くと、おぼんを両手で持っている女の子がいた。

 そのおぼんには野菜スープと小麦パンが一つずつ乗っている。

 

 あれ?

 この子どこかで会ったような‥‥‥ってこの前に説明会でちょっと会話をした子だ。

 俺と同じ茶髪で、ボサボサの頭。

 目元は髪のせいでよく見えない。

 

 俺はすぐに机の向こう側のお皿をこちらに寄せ、答える。


「どうぞ。えーっと、ティナさん」


 するとその女の子は口元が緩み、ふふっと笑いながら正面の椅子に座る。


「レインくん、私の名前覚えててくれたんだ」

「うん、そりゃーまあ」


 この子以外の名前は知らないし、流石に一人くらいなら覚えられるわ。

 

「にしてもよく食べるね」

「このくらい食べないと強くなれないから‥‥‥あ、欲しいのがあったら自由に食べていいよ?」


 俺はそんなにケチ臭い男ではないのでな。

  

「ふふっ、優しいんだね」

「いや、そんなことはないよ。ただ俺、冒険者ギルドで結構稼いでいるから平民の割にはお金をたくさん持っているんだ」


 実際俺はCランク冒険者なので、この一週間程度でかなり稼ぐことが出来た。

 俺の言葉にティナさんはとてもびっくりしたような表情を見せる。


「えっ!? 冒険者ギルドのハンターなんだ。すごいじゃん」

「まあ昔からある程度鍛えていたからね。それよりティナさんはこんな時間にどうしたの?」


 一年生の女の子が夜中に一人で外出とは、あまりよろしくないと思うぜ?


「私は今まで図書館にいたよ? うちは貧乏だから高価な本が珍しくて、ついこんな時間まで読んでいたんだ。‥‥‥レインくんは何をしていたの?」


 商店街をぬけた先のスラム街にある裏闘技場で戦っていました! とは言わないでおこう。


「ちょっと校内を探索したり、トレーニングをしてた」

「そうなんだ」


 その後俺はティナさんとたわいもない会話をしつつも料理を食べていき、やがて完食したのでティナさんにお別れを言い、若干迷いつつもFクラスの男子寮へと戻った。

 

 部屋の中へ入ると、パートナーの大人しい男の子は二階建てベッドの上で眠りについている。

 なのであまり音を立てないように二階建てベッドの下に入り、布団を被って自分を軽く殴った後眠りについた。

 

 

 次の日。

 

 

 朝を知らせるゴォォォン、ゴォォォンという鐘の音で目が覚めた。

 

「ふぁぁぁ」


 緊張のせいかあまりぐっすり眠れていないな。

 目が覚めて一秒で眠たくなったわ。

 

 俺は一度背筋を伸ばしてベッドから降り、早速制服に着替えてみる。

 ‥‥‥てかパートナーの姿が見えない。

 もう朝ご飯を食べに行っているのだろうか。

 それとも朝一で図書室とか?

 まあ、どっちでもいいわ。

 そんなことを考えつつも制服を身に着けていく。

 

 ‥‥‥おーん?

 

 これはやばい。

 このシャツ、一番上の第一ボタンが留まらないんだが‥‥‥。

 多分俺の肩と首が太すぎてシャツが張っているせいだ。

 弱ったな。

 第一ボタンが留めれないとなると、ネクタイがきちんとつけられない。

 つまり不良っぽく見られるやん。

 それは嫌だけど‥‥‥でもどうしようもないしな。

 仕方ない、ネクタイは緩めに巻いておこう。

 もし先生に注意された場合、ボタンが留まらないことを素直に言えば何とかなるだろ。

 

 ということで着替えを済ませると、授業に必要な物と貴重品を鞄に詰め、部屋をあとにした。


 

 そして男子寮のトイレで用を足し、昨日の晩御飯を食べた建物に向かって朝ご飯を済ませると、一年Fクラスの教室へと移動した。


 

 教室のドアを開けて中に入ると、先生はまだおらず机に生徒が数人いる。

 昨日俺をいじめて来やがった赤髪と金髪と緑髪の三人組もいる。

 なんかこちらを睨んでいやがるが‥‥‥まあ、ほっとこう。

 

 俺はまず黒板の端っこに書かれている時間割を確認する。

 ふむふむ、一限目と二限目と三限目は連続で校内案内か。

 学園全体の場所を回れるし、退屈ではなさそうだな。

 

 さてと、もう少しで始まるだろう。

 大人しく席についておくか。

 

 そう考え机の間の階段を上り、一番後ろの端っこの席に座った。

 

 周りには、もうすでに友達になったのか数人の生徒たちが会話をしている。

 はぁ、俺は一人だぜ。

 一応友達? っぽい女の子は出来たけどな。

 

 そういえばあのティナさんはまだ来ていないのか?

 少し教室全体を見渡し、茶髪のもじゃもじゃ頭を探す。


 すると‥‥‥あ、いた。

 

 俺と同じく一番後ろの席だ。

 俺とは反対方向の端っこにいて、一人静かに本を読んでいる。


 あの子もまだ仲良しな子がいないのかな?

 

 う~む。

 となると、この世界はやはり平民と貴族の差が大きいのだろう。

 

 今まで森に住んでいたから分からなかったけど、よく考えたら入学試験とかで平民っぽい身なりをしていた俺に話しかけて来た子って全然いなかったわ。

 ということは見下されている、もしくはそもそも相手にされていないらしい。

 

 ‥‥‥あー、じゃあつまり、俺のハーレム生活は厳しいということかね?

 お金持ちの女子やカラフルな色の髪を持っているお嬢様に囲まれて、薔薇色の生活を送っていくという夢を見ていたのは間違いだったのかね?

 てかそもそもこの学園に数少ない平民同士でしか、仲良くしたらいけないのかね?

 何か前世の学校生活とさほど変わらないような気がするのだが‥‥‥。

 

 いや、何弱気になってんだよ。

 まだ始まって二日目じゃねぇか。

 まずは友達を五人作ることから始めるぞ!

読んでくださりありがとうございます。

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