第三十六話【体力テスト・壱】
少しして。
教室には生徒が全員揃い、体格のよいクロード先生が力強くドアを開けて教室の中へと入って来た。
「‥‥‥よーし、見た感じ全員揃っているみたいだな。じゃあ早速だが黒板に書いてある通り、今から俺が校内を案内してやる。適当に一列で並べ」
「「「はーい!」」」
俺を含む生徒たちは元気よく返事をし、下のドア付近に集まる。
俺は‥‥‥あまり目立たない後ろの方でいいや。
おおかた自己中の貴族どもが前を占領するだろうしな。
そう考え、自然と出来ていく列の最後尾に並んだ。
よーし、これで広いし気分が楽だぜ。
とか思ったら、俺の後ろに一人の生徒が来やがった。
誰だろうと思い振り向くと、茶頭のティナさんが口元をにっこりとさせながら俺の方を見ている。
「よっ、レインくん!」
「あ、おはよう」
俺は小さめの声でそう答えた。
「おーい、全員静かにしろー。これから学園内を歩いて行く訳だが、絶対離れないようにしろよ? ‥‥‥あー、あと他学年は授業中だから大声を出したりはしないようにな? じゃあ行くぞー」
ということで俺たちFクラス一同の学園内探索が始まった。
体育館。
学生寮。
食堂の建物。
闘技場。
図書室。
運動場。
校舎。
実習室。
訓練場。
その他色々。
おおよそ見終わって思ったことがある。
うん、やっぱり広すぎだろ!!
日本の学校では考えられないサイズだわ。
でも、まあこれだけの施設を用意しても潰れていないところを見ると、しっかりした収入があり経営も安定しているんだろうな。
その後俺たちFクラスの生徒は教室で十分間の休憩を取り、四限目の身体測定を保健室で終えると、それぞれ各自で昼食を済ませることになった。
午後からは体力テストを行う為、昨日購入した体操服に着替えて予鈴のチャイムがなった直後くらいに外の運動場へ集まれとのことだ。
俺は食堂でいつもより少なめの食事を済ませ、体操服に着替える為に一度男子寮へ戻った。
そして制服を脱ぎ、体操服を身に着けていく。
少々お待ちください。
やがて着替え終わると。
‥‥‥えーっと。
これは流石に目立つよな?
体操服ってまさかの半袖、半ズボンかよ!?
買ったあとに確認しなかったから、全く気付かなかったわ。
‥‥‥皆さん、俺の右腕を見てください。
まあ、何ということでしょう。
古い切り傷やあざがたくさんあります。
左腕も同様、ものすごい傷の数々ですね。
次にズボンから出て来ている下半身を確認してみます。
まあ、何ということでしょう。
腕と同じように古い傷跡とあざでいっぱいです。
更に首は異様に太く、頑丈そうですね。
うん、やばいだろ。
絶対目立つわ。
でも‥‥‥仕方ないよな?
他の生徒に何か言われたら、父親とのトレーニングでついた傷だと言っておこう。
実際は落下のダメージや魔物の攻撃によるものがすべてだけどな。
俺は部屋を出てポケットに手を入れると、歩いて運動場へ向かった。
やがて到着すると、もうすでに数人の生徒たちが集まっている。
一応全員見覚えがあるので、Fクラスの子たちで間違いないだろう。
さて、じゃあ始まるまで目立たない所で過ごそう。
そう考え、俺は運動場の近くに生えていた木の陰に座る。
「あー、結構涼しいな」
吹き抜ける風が気持ちいい。
正面には、生徒たちが会話をしながら肩パンみたいなことをしている姿が見える。
ほう、楽しそうじゃないか。
レベルは低いけど、わきあいあいとしているのもいいな。
俺もあんなことして遊んでみたいけど、する友達が‥‥‥まだ、いないぜ。
と、その時。
予鈴のチャイムが聞こえて来た。
それと同時に体操服を着たたくさんの生徒が、この広い運動場へと集まって来る。
その集団の中には体格のよい強面なクロード先生もいる。
改めて思うけど、あの先生‥‥‥ヤクザみたいだな。
めっちゃ怖いやん。
絶対裏の人間だろ!
案外、裏闘技場のトップ10位選手だったりしてな。
いや、まさかな。
そんな訳ないよな?
おん?
少しして‥‥‥。
Fクラスの生徒全員が揃い、クロード先生の指示により体力テストが始まった。
まず最初は立ち幅跳び。
その名の通り、両足を揃えて立ち止まった状態からどこまで遠くに飛べるかというものである。
今この運動場には、Fクラスの担任ことクロード先生を含めた五人の先生がいる。
生徒たちはそれぞれ五グループに分かれて測っていくらしい。
一見先生の人数が多そうに見えるのだが、現在ここには俺たちFクラスだけでなくDクラス、Eクラスの生徒も集まっている為、およそ三百人程度いるのだ。
うん、多い。
さて、そろそろ俺の飛ぶ順番がやって来るのだが‥‥‥どれくらいの記録を出そうか悩むな。
おおかた本気を出せば目立つし、かといって手を抜いたら先生にばれそうだな。
運の悪いことに俺のいるこのグループを担当している教師は、クロード先生なのだ。
あの先生には、俺が強い理由は昔からお父さんに厳しく育てられたからということにして話をしている。
つまり半端な記録を出したりなんてしたら、逆に目を付けられそうだ。
う~ん。
俺の天才的な頭脳よ、思い付け!
そして良いアイディアを寄越さんかい。
‥‥‥。
あ、いいこと思いついたかも。
俺の一つ前に並んでいる、体格が大きめの男の子の記録よりも一メートルくらい多く飛ぼう。
そうしたら俺はいい感じに身体能力のよい子供という印象になるだろう。
と、そこで前の子の出番がやって来た。
「Fクラス。マルス=シャーロットです」
黒いショートヘアーの前の子はそう言いつつ白線へ進んで行く。
体格が大きいからか、足取りも重く力強い。
あの子、飛べるのか?
「おーし、シャーロットだな。‥‥‥いつでもいいぞ」
前のシャーロットくんは白い線の前に足を揃え、二、三回膝を曲げたあとで砂場に向かってジャンプした。
わおっ。
見たら分かる‥‥‥他の子よりもすごいやつやん。
ものすごく力強い飛び方だ。
普通ならあんなに力を込めたら効率が悪いのだが、彼の場合は自身の脚力でその不利を乗り越えている。
あれだけ筋力があるんだから、もっと効率のよい飛び方をすればいいのに。
「すごいな。3メートル10センチ」
そんな先生の言葉が聞こえて来る。
いや、十歳で3メートル越えはやばいだろ。
他の子たちは大体1メートルから2メートルの間くらいだったぞ?
この子何者だ?
‥‥‥まあ俺の方が飛べるんだけどね。
森の中でバランスよく体を鍛えていたから、どんな筋力もずば抜けている自信がある。
加えてフォレストの血が流れているからな。
このシャーロットくんは確かにすごい。
だが、一般的に見たらっていうだけなんだよな。
大事なのは体格じゃなくて中身だぜ?
‥‥‥てかさ、なんで俺って身長伸びないの?
小さい頃から厳しいトレーニングをしすぎたせいで、身長にいくはずの栄養が全部筋繊維に分け与えられていたのかね?
てか分け与えられていたにしても、そこまで筋肉とかは大きくないんだよなぁ~。
普通にシャーロットくんの方が大きい。
おい神様!
身長を寄越せ!
‥‥‥。
うん、まあいいや。
願ってもどうせ届くはずがない。
俺はいっそのことちびで最強を目指すぜ!
て、そんなことを考えている場合じゃねぇ。
次は俺の番だ。
「Fクラス。レイン=アルトリアです」
そう言って砂場の前まで向かう。
「おう、アルトリアか‥‥‥ってお前、なんだその傷!?」
クロード先生は俺の腕や下半身を見るなりそんなことを言って来る。
「この前言った通り、お父さんとの厳しい訓練によるものです」
「フォードってそこまでするような奴だったかな‥‥‥‥‥‥まあいい、何にせよ絶対手を抜かずに飛べよ?」
「あ、はい」
釘を刺して来やがった。
よ〜し、力を抑えて行くぞ!
さっきは1メートル多く飛ぶとか考えていたけど、予定変更だ。
シャーロットくんにギリギリ勝てるか、負けるかっていう所くらいにしよう。
予想以上に前の奴がすごかったからな。
俺は白い線の上で一度膝を曲げ、勢いよく見えるようなジャンプした。
そして綺麗に着地を決める。
「えーっと、3メートル24センチ。お前‥‥‥今のが本気か?」
「そうですよ? 個人的にはもう少し行けるかと思ったんですけど‥‥‥」
「そうか。でもいい結果だと思うぞ?」
よし、いい感じに調節出来たし、先生も信じてくれた。
読んでくださりありがとうございます。




