番外編 竹内家のとある一日
こちらは、「誰か平穏を下さい」の、番外編で、主人公レイラの前世の話となります。
読み飛ばしても特に支障はないとは思いますが、何せ作者は行き当たりばったり更新。何が起こるか分かりません。
以上の事を覚悟してから、お読み下さい!
私こと竹内 優には、二人の兄と二人の弟がいる。
五人兄弟の中の紅一点である私は、親兄弟関係なく、可愛いがられていたと思う。
兄達は時に厳しくも優しく、よく甘やかしてくれるし、弟達はよく甘えてきて、しかし時には凛々しく守ってくれる。
世間一般では、兄弟とは喧嘩ばかりするものが多いと聞くが、竹内家に限っては、その例に当てはまらない。言いたい事はハッキリ言うが、喧嘩は不思議とあまり起こらないのだ。兄弟仲がいいのはよろしいと思う。
さて、そんな竹内家兄弟だけど、他にはない大きな特徴が一つある。
それは、兄弟全員何故か、美形揃いという事だ。
タイプは違うものの、総じて見目が整っているという事には変わりない。
普通、どんなに顔が整った両親から生まれた子供でも、パーツの配置が少しでもズレれば美形にはならない物だ。それ故に、美形が生まれる可能性は低く、また重宝されるのだろう。
しかし、家の兄弟はそうではない。五人共、好みは別れるだろうが、十人中十人が美形と答えるような容姿をしている。
別に両親が特別美形という訳ではない。薄い色彩で垂れ目な優男風な父と、黒髪黒目でパッチリとしたつり目を持つ母。それなりに整っているが、群を抜いているという程のものでもないのに、何故か子供は超絶美形なのだ。
まあ何自惚れてんだナルシがwwwと思う人もいるだろう。
しかし、兄弟全員合わせてストーカー(程度、男女問わず)の被害件数が三桁超えて、馴染みの警察官達(中年のノーマルな男性限定)から同情の目を向けられた頃から単なる事実として認めざるを得なかった。
勿論私にもいた。そして、殆ど接触した事がない同性の女子の方が圧倒的に多かったのは解せない。
そんな感じで日々騒がしい私達の中の一人が今日、私達には普段馴染みのない物を持ってきた。
「なあなあ、今日友達からこれ貰ったんだけど。」
現在時刻は六時半。何よりも兄弟との時間を優先する私達だと、もう全員揃っている頃である。
何時も通り、制服からリビングに全員集まった時、下から二番目の弟があるものを取り出した。
「え?何それ、ゲームのソフト?」
「『ブラックorホワイト』って乙女ゲームだって。略してブラック。友達の妹がもう全部クリアしたから要らないって。」
私の問いに対して答えたのは、二つ年下で双子の四男、竹内 海。
フワフワした明るい色の猫毛で、カラフルなピンでアレンジしている。猫目の綺麗で可愛い系の顔とあざと可愛い仕草で女の子をトリコにし、リアルハーレムを作り上げている、言わば小悪魔系男子という奴だ。
「優姉、このゲームの本体持ってたでしょ?一緒にやろ!」
「はいはい、分かったよ。」
やはり小悪魔らしく、兄弟の中で一番甘え上手だ。まあやる時にはやる弟なので、許すけど。
「何で略してブラックなんだ?ブラホワとかでいいだろ。」
そう鋭く突っ込んだのは、私の二つ年上の次男で、黒髪の短髪にかなり鋭い目を持った当然美形の竹内 隼人。
このあたりではトップの族の総長(本人曰く勝手にやらされてた)で、頭を使うより身体を使う事の方が得意。
ぶっきらぼうで無愛想な態度で、特に群がる女の子に対してはそれに輪をかけて態度が酷くなるが………
「……隼人兄、私もそろそろ重くなるだろうし、膝から降ろしたら?」
「別に重くない。優の定位置はここだろ。」
何故か兄弟の中で一番私にデロ甘なのがこの人である。
「こらこら隼人、そんな様子じゃいつまでたっても妹離れ出来ないよ?もし優に彼氏とか出来たら殴りかかっちゃうかもよ?ねぇ、優。」
そう隼人兄に言いながら私の頭を撫でるのは、三つ年上の長男で、父さんに激似の優男風、だが父さんよりも麗しい見た目の竹内 真也。
見た目の通り、誰にでも優しく紳士的で穏和な性格。そして兄弟一の秀才で、現在難関大学への受験が控えているにも関わらず余裕が見える。
「俺より強かったら問題ねぇだろ。それに、妹離れ出来てないのはそっちも同じじゃねぇか。先週辺り、優を誘拐しようとしてた俺の族を勝手に敵視してる雑魚雑魚を見つけた時、笑顔で殲滅してただろ。」
「アハハ。」
「え、何それ。私初耳なんだけど。ねぇ、ちょ、真兄?」
そして、兄弟の中で一番怖いのが、実は真兄だったりする。
「優姉ちゃん、兄ちゃん達とばっかり喋ってないで、ボク達と一緒にゲームしようよ。」
そして、私の二つ年下で海の双子の五男、竹内 空。
海そっくりな外見だけど、女の子はあまり好きではないらしく、むしろ苦手な感じだ。というかあまり人とも関わらない。
馴れない人が近づいてくると、威嚇する猫のように警戒する。馴れても、つっけんどんな態度を基本崩さない。が、どうも姉である私に対してだけは海のように甘えてくるのだ。なんかこう、なかなか懐かない猫が懐いてくれた感じで嬉しい。
「おい、いい年していつまでも姉にべったりしてんじゃねぇよ。」
「ふん。隼人兄ちゃんだけには言われたくない。」
しかし、他の兄弟、特に隼人兄にはツンツンしているのだ。まあツンデレ属性と思えば可愛い。
「んで、ゲーム機あるし、さっそくやっていこうか。ブラックってやつ。」
そして私を中心に、ゲームが始まった。
男ばかりなこの家で、乙女ゲームなんていう物は珍しい。というかない。
漫画なら少年漫画、ゲームならRPGもしくは美少女ゲーム、小説なら冒険物。
まあそんなだから、恐らく声優さん達が歌っているであろうオープニングは背中がむずがゆくなったのでスキップした。誰も止めなかった。
そして世界観や主人公の生い立ちを見終わった。
どうやら王道のファンタジーものらしく、中世ヨーロッパ『風』(ここ大事)で魔法や剣や妖精や神なんかもある感じ。
「私こういうファンタジーな世界観好きだなぁ。というか、ヒロインのスチル可愛すぎる。何これ。」
「確かに可愛いねー。」
「「優(姉ちゃん)の方が可愛い。」」
「……いや、少なくとも私は可愛くはないし、そういう意見は求めてない。」
そして、一番最初に遭遇した攻略対象が、メインキャラである俺様系ヒーロー、オリヴァー。
短い赤髪と鋭い赤い瞳で、剣の腕が一流らしい。
「へー、俺はこういうの詳しくないけど、これが俺様系ってやつなの?別に人の性格をどうこう言う趣味はないけどさ、女の子に向かってその高慢な態度は良くないよね。」
「うん、私同感。俺様キャラというより、そのオリヴァーみたいな傲慢で人見下すようなやつ無理。というか女の子に優しく出来ない奴なんか男じゃない!」
「まあ姉ちゃんは僕より女の子タラシだからねー。」
その後、クラスの委員長という腹黒ドSキャラセシルに遭遇。
常に笑顔の爽やか好青年。誰にでも分け隔てなく接するけど、ヒロインがやや不信がる。
「胡散臭せぇぇ……何だよずっと笑顔って。逆に気持ち悪い。」
「全くだ。」
「優と隼人はそういう腹の内の探り合いとか苦手だもんねー。」
「真兄は………うん。聞くまでもないね。」
「そうだぞ、優。真也に関しては本当に聞くまでもねぇからな。」
「はは、どういう意味?」
「「何でもありません。」」
そして、危ない所を魔法で助けてもらった、ヒロインと同じ庶民の出身だけど、魔法の腕を買われて入学したという、クーデレキャラのウィルに遭遇。
「あ、ウィルの気持ちよく分かる。素直に可愛くお礼言ってくれる可愛いヒロインとか、もう惚れるしかないよね。あぁぁぁあ可愛い!!」
「へー、そう?」
「空は女の子に興味ないもんねー。僕からしたら信じられないよ。」
「うん。本当にそうだよ。もったいない。」
「ボクは姉ちゃん以外の女の人必要ないもん。」
「全く空は……」
そんな空に苦笑しつつも頭を撫でてあげると、すごく嬉しそうにしてくれた。まあ懐いてくれるのは嬉しいけど、姉離れしないと彼女出来ないぞ。空。
そうして、全てのキャラクターに遭遇した。
後は同い年の頼れる兄系キャラと、お色気チャラ男キャラだった。
「じゃあ、どのキャラ攻略する?それとも逆ハー狙う?」
「乙女ゲームに関しては全員初心者だから一人を狙った方がいいんじゃねぇか?」
「ていうか、初心者って言ったけど、僕達に関してはリアルが経験豊富じゃないの?」
「いや、例外もいるから一応一くくりに初心者としておこう。で、誰にする?」
「最初は俺様と腹黒はパスしたい。」
「じゃあ、この兄弟の中でいない、クーデレのウィルにしない?」
「ん?クーデレなら空か隼人兄がいるんじゃない?」
「いや、隼人兄は俺様じゃない?空は、クーデレというよりツンデレでは?」
「ああ、なるほど。」
という訳で、早速皆でウィルを攻略しよう。
「えー、この台詞もっと言い方あるんじゃない?」
「んじゃ海だったらどう言うんだ?」
「『僕の瞳の熱で君を溶かしたい』」
「ごめん。実の弟に言われても、というか男に言われても全くときめかない。」
「えー!優姉ひどい!」
等と盛り上がりつつも、皆で意見を出し合い、攻略していく。
「うん。好感度かなり上げたし、攻略出来るんじゃない?」
「だね。図らずも他の攻略者の好感度もちょっと上げちゃったけどね。」
「いや、俺はあれで好感度が上がる奴が理解できんが。」
「ボクも。」
「じゃあさ、二人とも。優にあんな事言われたらどう?」
「嬉しくて死ねるかもしれん。」
「抱き着く。」
「……君ら、一体何の話してるの?……ん、あれ?何か雲行きが怪しくなってきたような……?」
「気のせいじゃない?」
そして、そのままゲームは進み、エンドロールが流れている頃、両親が帰ってきた。
「ただいまー……って、どうしたのあんた達。そんなに静かになって。」
私達は、うなだれていた。
「………いや、え?何で?最後ウィルに悪役もろとも殺されたんだけど。いや、こっちは直接だけどさ。何かトチ狂った事言われて。え?」
「胸糞わりぃ……。」
「……あー、今ネットで調べたんだけど、このゲームって、好感度が一定水準を超すとブラックモードってのに入って、攻略対象がヤンデレになるらしい。それで、ブラックモードになった攻略対象の他に好感度が高いキャラがいると、嫉妬に狂って殺される。つまり、バッドエンドになるんだって。」
「あー、僕達、説明とか録に見ずに初めちゃったもんね。あと、オープニングでそういうスチルがあったら分かったかも知れないけど、飛ばしたもんね……。」
「ヤンデレ怖い。」
この日、兄弟全員がヤンデレを嫌った。
「何か知らないけど、あんた達ご飯にするよー!」
「さ、皆、取り合えずご飯食べよ。」
「さっきの見て食欲湧くわけねぇだろ。」
「次からはホワイトルートにしようね。」
「勿論だよ。でも暫くウィルとか言うキャラ見たくないなぁ……。」
「優姉ちゃん慰めてー。」
皆ぶつくさ言いながらも、食卓へと移動する。
「何あんた達、また皆でゲームやってたの?別に構わないけど、食事前のホラーゲームは止めた方がいいって言ったじゃない。特にグロ系。」
「いや、お母さん、本当は甘酸っぺー気持ちになる予定だったんだよ……。」
「まあよく分からないけど、皆、座って座って。」
お父さんがほんわかと笑いながら着席を促す。
そして、お母さんが何時もの挨拶をする。
「それじゃ、ご飯を作ってくれた真也に感謝して、いただきます!」
『いただきます!!』
兄弟達の元気な声が、近隣に響いた。
こうして、今日も竹内家の騒がしい日常は過ぎて行く。
何か、スピンオフとか作れそう、と激しく思いました。
やべえ、隼人兄とかもっと書きたい!と思っちゃいました!しかし、恐らくすぐ煮詰まるから書きません。
さてさて、次回からいよいよメイン!やっとこさメイン!長かった!思った以上に長かった!
何か適当にウィルとの仲進展させて、それとなく他の攻略対象を接触させるくらいでいいかなと思ってたのに、どうしてこうなった……。
まあそんなこんなでいろいろありましたが、ようやく入学させます!
まだまだ至らない所が多い、むしろ至らないところしかない作品ですが、どうぞぬるーく見守っていただけると!ありがたいでございまする!




