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第二十三話

パーティー会場の空気は凍りついていた。

武装した人間の五人が王座の前に立っている。その他の仲間は人質に武器を突きつけていたり、警戒しながら周囲を見渡していたりしていた。


うん。やっぱあの二人倒した程度じゃどうにもならなかったね。まあ人質要員が減っただけでも良しとするかな。


さて、それにしても。


「動くな!」


私まで人質になってしまったのだがどうすればいいだろうか。


うん。会場に入って、人混みに紛れようとしたんだけどさ。どうも運悪くぶつかったのが向こうの人だったわけで。

まあ私見た目だけはちょっと生意気そうな顔をしたご令嬢だもんな。人質に調度良かったんだろう。

本当は自力で抜け出せる程度には鍛えてるんだけど、騒ぎを起こしたら面倒だもんなぁという事で大人しく人質になってあげているのだ。ありがたく思え。


しかし、私は人質になった経験なんてない。いや当たり前だけどね。むしろあったら嫌だけど。

そこで、人質とは一体どんな風にすればいいのか分からない。

泣けばいいの?震えればいいの?それとも相手を罵倒すればいいのか?

私は今、非常に悩んでいる。


「あの、」


ということで、聞いてみる事にした。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とも言うんだし、前世でも小学校の先生は「分からない事があったら、何でも聞いてね!」と言ってたんだ。聞いてもオッケーでしょ。


「この場合私はどんな行動をすればいいんですか?」

「あぁ?大人しくしときゃいいだろ。」


私にナイフを突きつけている彼は律儀に答えてくれた。


「ええ、そんなの嫌ですよ暇そうじゃないですか。大体自分より弱そうな人に従う必要なんてどこにあります?」

「……黙って聞いていれば嘗めた口叩きやがって!」

「あれ、別にそんなつもりじゃないですよ。ただ思った事を話しただけで。」

「減らず口が!」

「貴族はお喋りが仕事ですから、減ったら困りますねぇ。」

「……!」


あはは、私が喋れば喋る程青筋が立ってる。面白い面白い。

人質を傷付ければ交渉に亀裂が入りかねないから我慢してるんだろうね。

大人しくしてるだけってのはつまらないから怒らせるよー。ちなみにこの手腕はウィル直伝です。いらつく相手にこんな対応するんだよあいつ。


「我々の要求は、王座と王以上の権利である!!聞かなければこの会場にいる貴族どもを皆殺しにするぞ!」


あ、話し合い始まったんだ。

やっぱり金品の目的じゃないんだね。

反逆者の可能性が高くなったなぁ。


「歩け。」


お、移動するっぽい。


………おい、何王座の前に行かせてるんだよ!!

うわっめっちゃ注目されてる!?王様や王妃様にも見られてる!?


「まずは、このご令嬢から殺すぞ。」


え!?私から!?


「レイラ!?」


うわっやばい父様に見つかった!げっウィルもいる!?

まずい。この会場が血に染まるカウントダウンが開始したよ!!


「ちょっと!君ら早く私を離した方がいいって!命が惜しいならさ!」

「はぁ?」


ちょっ父様剣抜かないで!!ウィルは魔法の発動準備しないで!!

ここ深窓のご令嬢とかいるんだよ!!血とか見せちゃ駄目なんだよ!トラウマになっちゃうからね!

さすがに分かってるよね?いくらなんでも分かってるよね?

……駄目だあの顔は分かってない!!


「………仕方ない。」


私がなんとかしなきゃな。


まずはこの会場にいる反逆者(仮)の武器を魔法でこっそり壊す。これで危険はいくらか減った。

そして次は……結構荒業だけどやるか。


「《放電》」


バチバチバチッと稲妻が会場内を駆け抜けていく。

私にナイフを突きつけていた人を初め、次々と人が倒れていく。

それは反逆者(仮)だけでなく、ご令嬢やお坊ちゃん、太っちょな貴族に騎手までもが倒れていく。

最終的に立っていたのは、範囲を設定していなかった王座の方にいた人以外では、父様やウィル、鍛えてそうな貴族が何人か、それと騎手の人何人かだった。


……反逆者(仮)さん達がそんなに強そうじゃなかったからその人達レベル以下が気絶する程度の電気を流したんだけど、思ったより効果があったねぇ。

これなら一度で終われるし、死にはしないからいい魔法だと思ったんだよ。雷属性に適正があるし、調整は得意だからさ。昔からしごかれてるし。


「陛下の前に立つというのに礼の一つも出来ず、申し訳ありませんでした。」  


今更ながら、王様に礼をする。

さて、この場をいかに切り抜けようかな。

 

「それと、魔法でご覧の通りに殆どの人を気絶させました。後は、騎手の皆様にお任せします。ああ、魔法を使った事はどうかご内密に。では、私はここで失礼致します。」


うん。トンズラするに限るね!!


「えっ?ちょっ」

「失礼しましたぁぁぁぁぁ。」


ースタタタタタタタ



★★★★★★★★★★




「レ・イ・ラ?」

「………………。」


はい、あの後馬車に飛び乗ってから一夜明けました。ただ今我が家です。

そしてウィルに正座させられています。


……あの、私一応主人なんだけど。


「なーにやってんの?そのまま大人しくしてれば僕や当主様で助けたのに。わざわざ目をつけられるようなことして。」

「いやいや、だってほっといたらパーティー会場が血みどろになったでしょ!あそこには繊細でデリケートな女の子が一杯いるんだよ!!トラウマになったら可愛そうじゃん!!」

「まあ血みどろにしないとは言い切れないけど。」

「ほらぁ!」

「というかあんな騒ぎになった時点で充分トラウマだと思うけど。」


あっ。

……こ、細かい事は気にしなくていいんだよ。うん。


「まあそれはともかく、この後多分王家から招待状とか来ると思うよ?褒美とかなんとかに関して。まあ反逆した奴らを倒したんだからお手柄だし、会場内の人達まで気絶させたのを差し引いても充分な功績だからね。」


あ、そうなんだ。私はトラウマにさせたくなかったのと早く抜け出したい思いであれやったんだけど。


「でもさ、褒美とかで領地とか爵位とか貰っても困るでしょ?レイラは。」

「う、うん。まあそうだね。」

「でも金品とか言っても、アクロイド家には腐る程あるから要らないよね。」

「……腐る程はないと思うけど、まあ要らないかなぁ。」

「そうなると、最悪王家の血筋に連なる家とかとの縁談になるかもよ?」


……………はぁ?


「え、嫌だよ。じゃあ褒美適当に貰う。金品とかで。」

「いやでもアクロイド家だからそんなの要らないだろって分かるよ、普通。それに当主もレイラも散財してるなんて話ないから向こうが気を使って領地や爵位、はたまた縁談、とか用意するかもよ?」

「なにその迷惑な気遣い。」

「だから騒ぎを起こさない方が良かったのに。僕なら金品要求しても不自然じゃないからさ。

それなのに君は……。」


うっ。そ、そこまで考えてたのか、ウィルは。


「いや、ごめん……でもどうしよう。褒美要らないなんて言うのは?というかそもそも褒美なんて貰えるの?」

「今の王様と王妃様は慈悲深いなんてもっぱらの噂だから無理にでも貰うと思うよ。申し訳ないって。」

「えぇ……どうしよ。領地とかもらっても父様に任せる事になるだろうから負担増やす事になるもんなぁ……。」


さて、困った事になったぞ。

 

褒美なんて要らないんだけどなぁ。元日本の庶民からか今の生活に不満なんてないし、むしろこれより質が落ちた方が逆に落ち着くと思うんだけど……。


「本当にどうしよう……。」

「レイラって貴族の令嬢にしては無欲だよね。貰う物に困るなんて。レイラくらいの令嬢ならいろいろ出てくると思うよ。あいつら仮面の下に欲を隠してるから。ハッ!胸糞悪いったらありゃしないよ。」


ウィル、随分と毛嫌いしてるけど何かあったのか?

……そういえば、ウィルってかなりイケメンだから色んな女の子に囲まれてたな。もしかしてあれが原因?

イケメンも苦労するんだね。分かるよ、私も経験あるからさ。


……さて、話題を戻すけどどう回避しようか……。


………駄目だ、思い付かない。


「そ、そもそも招待状なんて来るのかな?ひょっとしたら、私が誰だか分からないって可能性も……。」

「現実逃避しても無駄だと思うよ。」

「い、いや!私はその可能性に賭ける!!賭けるんだ……!」


よし、逃げだ、思考から逃げるぞ!!



そして、王家の紋章が入った手紙が我がアクロイド家の屋敷の門をくぐったのはそれから数時間後の事だった。


大変遅れました申し訳ありませんんんんん!!(土下座)

リアルが多忙でしたこれからも遅れます本当申し訳ありません!

それでも待って下さっている読者様、いや神様には感謝しています!

これからもよろしくです!

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