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第二十二話

さて、本日はデビュー当日。

一応、仮病でも使ってサボろうとは思った。思ったんだけど、先日ウィルが「まさか仮病なんて病魔がレイラを襲うなんてことないよね?(意訳:仮病なんて使ったらただじゃおかないよ)」と素晴らしい笑顔で言われたから仕方なく参加することになった。私だって命は惜しい。

今日の私の格好は紺色のドレスに黄色の宝石をあしらったペンダント、月をモチーフにした髪飾りという、一般的なご令嬢の社交界用の格好に比べると地味とも言えるような物なんだけど、皆は褒めちぎってくれた。今回のコーディネートをしたリタ(私の悪癖最初の犠牲者)は「レイラ様の魅力を最大限に引き上げるように致しました!」と言っていた。

うーん。自分じゃよく分からんな。ゲームではハデハデのデコデコな格好だったんだけど。

そして一週間くらい前から無理矢理肌と髪の手入れをされていたからプルプルのツヤツヤでサラサラだ。化粧も薄くしてある。それに早めに寝かされていた。夜更かしは美容の大敵だとか。ウィルからも、「寝なきゃ魔法で無理矢理寝かすよ?」と脅されたから寝るしかなかったんだけど。

とまあ、そんなこんなで今日の私は最高状態。隙無しだ。これならデビューも乗り切れるはずだな!


「…………。」

「…………。」


と思ったさっきの私を呪いたい。


デビューと言っても父様に引っ付いて挨拶をするだけでいいから、案外早く終わった。

普通ならここで気になった相手と話したりするわけだ。何せ、パーティーとは言ってもここは夜会。社交界なんだから、社交をするのが当たり前。

しかし私は壁の花になった。夜ご飯も食べていないからビュッフェ形式の料理を貪りながら。

さてさて、そんな私の前に偶然!偶然現れたのは婚約者(仮)様!

わーい最悪だ!何で会うんだよお前一年先にデビューしてんだろうが!ああでもこのパーティー遠縁とかを除く殆どの貴族が来るんだったよすっかり忘れてた!当主の子息ならそりゃ来るね!


「……何故お前がここにいる?」

「このパーティーは殆どの貴族が参加しますし、私も今年でデビューですからいてもおかしくはありませんよ?そんなこともお分かりにならないですか?」

「相変わらず口が達者だな。」

「お褒めにあずかり光栄です。」


ケッというような顔でお互いを見る。

犬猿の仲とはこういう事だろうなとつくづく思うね。


……ところで、さっきから異様に視線を感じるのだが。主にご令嬢やご婦人方から。

………こいつだろうな。どう考えても。腐っても攻略対象者、イケメンだし地位もいいから狙ってる人が多いんだろう。その隣にいる私は主に嫉妬の視線を受けている。ちょっと新鮮だな。前は男に嫉妬を向けられていたから。理由は言うまでもなかろう。


……あっ三人ほどこちらに来るご令嬢が。


「ごきげんよう、オリヴァー様。本日はお会い出来て光栄でございます。」

「オリヴァー様にお会い出来て嬉しいです。」

「今日も相変わらずお美しい。」


皆様、私の事は清々しいほど無視して話していらっしゃいます。

まあ私としては構わないけどね。馬鹿男からはなれられるし。


と言う訳で、迷惑そうなオリヴァーは贄として捧げますので失礼いたしますー。



★★★★★★★★★★




さて、私はパーティー会場であるホールを出て、庭園に来ています。

やっぱ今の時間はパーティーが最高に盛り上がる頃だからか人はいない。もうすぐダンスが始まるからね。私もそれを狙って来たわけだけど。一人でいたいし。

まあ完全に一人だと危ないからウィルを連れて来てるんだけどね。まあウィルはノーカンでいいだろ。


それにしても、この庭園は本当に美しい!

今日は満月で月がよく見えるし、手入れされた植物に光が射して、なんとも幻想的なのだ。なんで皆これを見に来ないんだろう。あんなチカチカするところに比べれば何倍も素敵なのに。


「やっぱ抜け出して正解だったよウィル。」

「あのさ、今日は一応デビューなんだよ?もうちょっと我慢出来ないとこれから社交界に出たときもっと大変なんだから。」

「大丈夫。最低限しか出ないから。それに仕事するつもりだし。」

「全く……。」


ウィルも隅っこに控えてたんだけど、いつまでたっても壁の花をしている私を見かねて抜け出すのはオッケーしてくれた。

本当に、いい執事を持ったよ。


「……だ………な…。」

「…ま……に…る…!」


……ん?話し声が聞こえる。私以外いないと思ってたんだけどな?


「ねぇウィル、私たち以外にも誰かいるらしいよ。ちょっと見ていかない?」

「なんでわざわざ首突っ込むの?……誰かの逢瀬だったらどうする?」


ちょっと悪戯っ子な顔をしてそういうウィル。こいついい性格してるよな。


「むしろ歓迎。面白そう。」

「悪趣味だね。まあ僕も興味あるけど。」

「お互い様じゃん。じゃあ行こう。」


気配を消し、コソコソと話し声がする方向へ二人で向かう。

植物の影から影に移動しながら確実に距離を縮める。

ちなみに、この間私達の顔は終始ニヤニヤしていた。二人ともスキャンダルはわりと好きだ。弱みを握れるから。


そして、ハッキリ声が聞こえ、姿も見える位置まで到達した。でも私達二人とも幼少期からの鍛練で視覚聴覚共に最高レベルだからわりと距離はある。これなら、もし見つかっても逃げられるとウィルと目を合わせゲスい顔をした。


そして、どうやらいるのは二人の男らしい。このパーティーの参加者だね、身なり的に。

痴情のもつれじゃないなと若干がっかりしながら会話を聞く。

もしかしたら、女の取り合いかもしれない。目を汚したくないからその人には内緒で、とか。


「よし、連絡が取れた。一軍はいつでも進入出来るらしい。」

「ああ、そこで俺達が適当な令嬢とかを人質に取って交渉開始だな。」

「成功したらボスがトップだぞ。この国を牛耳るのも時間の問題だな。」


……予想してたのとは別の意味でヤバい会話だった。

ひゃーえらい事になってるぞ。私達はそれなりに戦闘出来るけど大多数は相手出来るか分からないしやれる事も少ない。

取り合えずウィルと相談だ。


「ウィル、どうする?想像以上にヤバいけど。」

「こいつらだけ倒しても言葉から予想するにメンバーはたくさんいるらしいから無意味だ。多分、噂になってる反乱軍の奴らじゃないかな?」


反乱軍って、さっきも話題によく上がってたあれ?確か、今の王政に不満があるとか。何でだよ?特に戦争も起こってないし、他国との歓迎もうまく築いてるし、物価もそれなりだし、何の不満があるんだろう。少なくともアクロイドの領民に不満はないようだけどな。


「ああ、最近噂になってるあれか。今日は有力貴族が沢山集まってて、尚且つ王族も出てるから存在を知らしめるには調度いい機会だろうね。うまく行けばそのまま倒せる可能性もあるし。まあそんなにうまくは行かないだろうけど、みすみす進入を許すのもなんだかなぁ。でも下手に動くと目をつけらそうだから厄介だし。」

「王宮の戦力は会場の中に配置してるだろうから応援は無意味だし、一先ず戻ろう。人混みの中に紛れてたら目立たないだろうし、いざというとき動きやす……」


ーガシャァァァン

『キャァァアアア!!』


…………………。


「もう遅かったね。」

「そうらしいね。あそこの二人はほっとくと人質とられちゃうから落としとくね。」


そう言ったウィルは、呪文とか無しで闇属性の《夢魔》を発動したらしく、宣言通り会場に入って人質をとろうとしてたらしい二人は倒れた。

《夢魔》はかけた相手を悪夢に閉じ込めるといった魔法で、相手の精神と魔法の強さによって発動期間が変わる。ウィルは強いし、相手の精神もそんなに強くなかったようで、しばらくはおねんねだ。ちなみに、見る夢は決められるらしい。


「さて、これで人質要員は減らせたし、会場に入ろうか。」

「う、うん……ところでさ、どんな夢を見せてるの?」

「多分レイラじゃ理解出来ないと思うから言わないよ。理解したとしても決して良いことはないけど、それでも聞く?」

「いや、やめておく。」


さて、恐らく恐怖に包まれているであろう名前も知らない二人に心の中で合掌。そしていざ、パーティー会場へ。



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