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番外編 もしも、私達が現代日本で暮らしていたら

ージリリリリリリリ、カチッ


「ふあ、ぁ……もう五時かぁ。ソラの散歩にいかなきゃね……。」


私はベッドから起き上がる。


「レイラ、朝だよ!」

「はいはい、今行くよ父さん!!」


こんにちは、レイラです。

父は某会社の社長をしているが、普通の一軒家に住むごくごく普通の女子高生です。

早朝は、朝ごはんを食べてペットのソラの散歩に行くのが以前からの日課だ。

ジャージに着替え、自室がある二階から一階のリビングへ下りる。


「いただきます!」


ちなみに、朝ごはんを作っているのは父さんです。

病弱で入院しがちな母さんに代わり、家事全般は父さんと私でやっている。


本日のメニューは、お味噌汁に白ご飯、焼き鮭に父さん特製の漬物。

これでも父さんはかなり稼いでいるのだが、私は未だに信じきれていない。だっていつもこんな感じのメニューだよ?もちろん感謝してるけど、漬物や味噌を自分達で作ったり、スーパーの特売日には一人一パックの卵のために二人で走っているんだから、信じろと言われても無理な話だ。


「美味しいか?」

「うん。美味しい。また味噌改良した?前より香りが良くなってる。」

「よく気がついたな!さすが私の娘だ!」


そしてこんなに娘にデレデレな父が社長とか、正直心配になる。

多分私が反抗期を迎えようものならショックで引きこもりかねないのだ、この人は。

娘の行動に一喜一憂するこの人が、今や日本の財政を左右する会社の社長とか正直考えたくない。日本の未来が心配だ。


「ごちそうさま。それじゃあソラの散歩に行ってくるよ。」

「いってらっしゃい。気をつけるんだぞ。」


リードを持って、玄関から庭へ行く。


「ソラ!散歩に行くよ!」

「わんわん!!」


散歩のワードにしっぽを振るこの黒い犬がペットのソラだ。

野良犬だったんだけど、何もしてないのに懐かれた。どうゆうことやねん。


「おはよう。レイラ、今日も行くぞい。」

「祖父ちゃん。それにオーディンも。おはよう。」


実は、ソラの散歩と同時進行で行われる事がある。

それは祖父とその犬のオーディンと一緒に行われる訓練だ。

内容は、走り込みをしながら祖父から繰り出される攻撃をかわし、こちらからも祖父に攻撃する。先に走れなくなった方が負けで、訓練は終了。

何故そんなことをしているかと言うと、一応これでも私は社長令嬢なわけで、いつライバル社に狙われるかわからないような結構危険な立場なのだ。

そこで、自分の身は自分で守れるようにと訓練を買って出たのが祖父、というわけだ。

老人に攻撃するなんて……!と思う人もいるだろう。しかし、祖父はそんじょそこらの老人とは訳が違うのだ。

祖父は元警察官で、数々の難事件を追った実力者なのだ。

抵抗する容疑者を正当防衛の名の元にばったばったと張り倒し、銃を持った銀行強盗にも怖じけづくことなく人質を逃がし正面から切り捨て、偶然居合わせたハイジャックにもコンマ一秒で蹴りをつける、知る人ぞ知る名(迷)警察官だ。

そんな老人に攻撃している私を誰が攻める?

むしろ、ムッキムキの老人とただの女子高生では、圧倒的に前者の方が強いに決まっているだろう!

しかも祖父ちゃんはスパルタだ。毎日ハードできつい。


「それでは、スタート!」


合図と共に地を蹴る。

平行して走りながら、祖父に足を払う。しかし祖父は予想していたかのように難無く避けると、カウンターとばかりに鋭いパンチを繰り出す。

それを紙一重で避けると、風圧で髪が舞い上がった。これ当たったらめちゃくちゃ痛いよ!

地を強く蹴ってから手刀で意識を落とそうとするも、これも避けられる。

祖父に足を払われバランスを崩すも、地面に手をついてから一回転して持ちこたえる。


すると祖父は懐からあるものを取り出した。

それは、割り箸で作られた所謂ゴム鉄砲というやつだった。


……ん?


ーパンッ


「うお!?」


ゴムが飛んでくる。

慌てて避けるとバランスを崩した。


あ、しま……


ードスッ


溝落ちに拳がクリーンヒット。その場に崩れ落ちる。


「ほほっ。思わぬ自体が発生しても、常に冷静でいないとならんぞい。」

「うぅ、いたたたた。」

「しかしさっきの攻撃で落ちぬとは、成長したのぅ。前はコロッと倒れてわしが運んでいたのにのう。」


訓練中の鋭い眼光が嘘のように穏やかな笑みを浮かべる祖父。

まだまだ敵わんよ、こりゃ。


「さて、レイラは学校じゃろう?そろそろ帰るぞ。」

「はぁい。ああ、こりゃ授業中は確実に寝るね。」


疲労感が私を襲う。こうなると、後は先生の素敵な子守唄で夢の世界へと旅立つのはほぼ確実だ。

しかも一時間目は物理だ。起きとくのは不可能。大人しく寝る。


「さて、着替えないとウィルが来ちゃうな。」


ウィルは一つ年上の幼馴染みだ。お隣りさんなのだが、普通の一軒家に住んでいる私とは違い、彼は豪邸に住んでいる。父の会社に並ぶ程の巨大企業らしいが、夫妻はとても優しく明るい、素敵な人だ。

だというのに、そんな二人から生まれた息子があんなに腹黒なのは一体どういう事だろう。


「………今、何を考えてたの?」

「ヒィ!あ、ウィル、おはよ……何って、別に何も考えてないよ?あははっ。」


怖!?いつの間に背後に立ってたんだよ!!


「へぇ、そう。まあいいけど、着替えて来て。早くしないと遅刻するよ。」

「う、うん!分かったよ!」


さあて大魔王様が降臨する前にさっさと支度しないと。

あ、私とウィルは同じ高校に通っているんだよ。

まあ、お坊ちゃまお嬢様が通う、有名な私立高校だ。

エスカレーター式の学校で、小学校からあるらしいんだけど、私とウィルは公立の小中学校に通っていた。

だって財閥の令嬢とか有名企業のお坊ちゃまとか、絶対面倒だろう!

でも後継ぎとかの問題もあって、その学校に行くと帝王学とか経済学とかも学べるからせめて高校からはって言われたんだよねぇ……。


「よし!着替えた!それじゃ、いってきまーす!」

「いってらっしゃい!」


玄関で待っていてくれたウィルと一緒に歩く。

学校は案外近くにあるから、徒歩でも大丈夫なのだ。


「レイラ、課題はちゃんと終わらせた?僕いつも心配なんだけど。」

「心外だな。いつもキチンと終わらせてるよ。」

「本当に?レイラのイメージ的にしてなさそうだけどなぁ。」

「君、随分と失礼じゃないかい?」


私は授業以外は真面目にやっているぞ!授業以外はな!!


と、ウィルと会話していく内に着いた。

無駄に広い校門前には、リムジン等の高級車が沢山止まっている。

勿論私達のように徒歩でくる生徒もいるけど、車で送り迎えしてもらう生徒も多い。何せお坊ちゃまお嬢様がわんさかいるもんだからいつ狙われるとも限らないし、安全面を考えて許可してるんだろうけど、ただでさえ運動する機会が少ないのに、登下校まで動かなかったらメタボリックシンドロームまっしぐらだよ?


「レイラ、ウィル先輩、おはようございます。」

「あ、カミラ!おはよう!」


私の親友、カミラが優雅に微笑みながら歩いてくる。


「おはようございます、カミラさん。」


ウィルも外行きの笑顔で挨拶する。ウィルは基本的に猫かぶりだ。それもかぶっている猫は化け物クラスに剥がれない。


またカミラも、表向きはしとやかな令嬢。

しかし、その実態は


「ふふ、ウィル先輩って本当美形ねぇ。総攻めって感じたまらないわぁ。」


腐女子、だ。

ちなみに先程の台詞は私の耳元で言っていて、私以外には届いていない。

しかも表情は優雅な微笑みのままで言っている。

彼女が被る猫もまた、相当な物だ。


私?私はまだ腐っていない。偏見はないが、好んで見ている訳ではないよ?


「さて、教室へいきましょ?では先輩、また。」

「じゃあねー。」


ウィルとは別れて、下駄箱へ向かう。


ーバサバサバサバサ


そして開けた瞬間雪崩落ちてくる大量の手紙。


「相変わらず凄いわねぇ……。」

「はぁ……。」


内容は、所謂ラブレターというやつと同じだろう。最も、全部同性からであろうが。


「いいじゃない。誰かと付き合っちゃいなさいよ、お試しで。」

「無理だ……。」


手紙は鞄へ仕舞う。

捨てるなんてとんでもないから貯めてるのだが、最近量がハンパない事になっていて悩む。


教室へ着くと、机の中にも入っている手紙も仕舞う。この時、男子生徒から凄まじい怨念を感じるのだが気にしてもしょうがない。


「おはようレイラ。今日も随分と手紙が多いね。」

「ああ、セシルか……おはよ。」


こいつも猫かぶりの一人だよ全く……。

クラス委員長をやっているセシルは人当たりも良く、女子からも男子からも人気がある。


「そんなにゲッソリするなら女の子に言い寄るの止めればいいのに。ねぇ、姉さん?」

「そうよねぇ。結構可愛い見た目してるのに男子からは嫉妬されるって異常じゃない?」

「まあそうだね。でも可愛いさなら姉さんの右に出るものはいないよ?」

「あら、嬉しいわ、セシル。」

「おい話し飛躍してんぞそこの姉弟。」


全く少し油断するとすぐにこうなる。


「あ、もうそろそろホームルームよ。」

「じゃあ私は寝る。」

「何でだよ。」


さぁて、おやすみ……



★★★★★★★★★★



「レイラ、起きて。」


ん?あれ……


「もう朝だよ。これから訓練あるから、支度して。」

「ん……?授業は……?」


私の前には、呆れたような顔をしている執事服を着たウィルがいた。


「何寝ぼけてるの?ほら、紅茶。」

「……夢、か……。」


随分とリアルな夢だったなぁ……。


「ほら、ボーっとしてないで支度。」

「あ、分かった分かった。」


「レイラー。」

「ん、ソラ。………ソラが犬か。」

「ん?ボクは竜だよ?」

「ああ、うん。そうだよね。さて、今日も頑張りますか!!」






さて、今回の番外編はレイラの夢の内容ですね。

もし自分の周りにレイラ達登場人物がいてくれたら面白そうだなぁと思い、今回の話しを思いつきました。

でも関わるのは遠慮します。レイラとは仲良くしたいけど、それにより近づくヤンデレ予備軍達はお断りしたいですね。遠くから眺める分には構わないけど、近くは、怖いなぁ……。

まあそれはそれとして、次回の本編から一気に時間を飛ばしてレイラ十四歳です。

本格的にゲームが始まる、つまり魔法学校入学まで後二年!ウィルは後一年!という微妙な時期です。

それでは次回からもよろしくお願いします!

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