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第2話「浪漫ガール」

「号外!号外!今朝水道橋の河原から土左衛門(どざえもん)が揚がった!」街の歩道で新聞を配る男の周りに多数の人が群がっていた。「水道橋だって!?俺の地元じゃねえか!」「最近物騒ね安心して外も出られないよ」


人々が男から買った新聞を読みながら言う。「おじさん私にも頂戴。」「毎度!って楓(かえで)じゃねえか姐さんは元気かい?」男が一人の少女に新聞を渡しながら聞く。「先生なら他の事件を追ってるよ」「そうかい面白そうなネタがあったら教えてくれよ高く買うぜ?」


「先生に言っておくよ」少女は男に礼を言って歩いて行く。彼女の名は孤月楓(こげつかえで)歳の頃は17才、肩程に切り揃えた髪をなびかせ、服装は最近流行りのハイカラさんと呼ばれる赤を基調とした着物に黒い袴を合わせた服にブーツと呼ばれる西洋の履物を履いていた。何処にでも居る女学生にも見えるが彼女には一際目を引く特徴があった。それは雪の様に白い肌と美しい白い髪だった。彼女は生まれつきこの見た目をしており幼い頃から好奇の目に晒されてきた。


両親は物心つく前から居らず彼女は村の長に育てられた。そして約2年前病に倒れてしまいこの世を去った。そして彼女は村を出て上京し現在の師匠と出会い探偵見習いをしていた。


「土左衛門は若い女、身元は先週から行方不明になっていた斎藤梅。彼女の遺体は異様で腹の内側から破裂して死んでいた。これは先生に相談した方が良さそうね」


楓は新聞を持って探偵事務所へと向かった。


「おはようございます!」挨拶をしながら入って来るが。「あれ?先生今日は居ないのね」事務所の奥の机を見ながら楓が呟く。何時もなら優雅に珈琲を嗜みながら本を読む先生が居ないからであった。


机の上を見ると一枚のメモ書きがあった。


「楓へ急遽依頼が入った為出掛けるよ、明日には戻るから今日は帰ってもいいよ九条阿闍梨(くじょうあざり)より」メモを読み上げ楓が溜息を付く。


「先生ったら何の相談も無しにふらっと出掛けるんだから」楓が今日は店仕舞いだと思い出て行こうとすると。


事務所の扉が勢い良く明け放たれる。そして眼鏡を掛けた少女が鬼気迫る勢いで入ってくる。


「誰か、誰かいませんか!?」楓が直ぐに彼女の応対をする。「どうかなされましたか?」楓に気付くと少女が縋るように楓の手を掴む。


「姉が、姉さんが3日前から帰ってこないんです!」少女はそう言いながらその場にへたり込んだ。


「落ち着きましたか?」楓が珈琲をテーブルに置きながら語りかける。


「はい、いきなり押しかけてすいません」少女が深々と頭を下げる。


「それで貴方の名前と依頼内容を教えて貰える?」


「はい、私の名前は三島由紀(みしまゆき)3日前から家に帰って居ない姉の三島薫(みしまかおる)の捜索依頼できました。」


楓がメモを取りながら聞く。


「お姉さんの特徴は?後失踪する前何処に行くか聞いてない?」


「姉さんの特徴は黒髪を長く伸ばして、何時もお気に入りの菊の花をあしらった簪をしていました。失踪する前は姉が通っていた女学院の友人のところへ行くと言っていました。」一通り聞くと他にも質問する。


「その御学友の方には聞きましたか?」


「はい、彼女に聞いた所姉は家に帰ると言って夕暮れ前に家を出たと言ってました。」


「最後にお姉さんの私物だったり持っていませんか?」


楓の問いに由紀が持っていたポーチからある物を渡す。


「私が姉さんに贈った櫛です、よく姉が髪を梳く際に使っていました。」楓が手袋を外し手を添え目を閉じる。


そして再び目を開けると紫の靄の様な物が見えた。


楓には昔から不思議な力があった、普通の人よりも感が鋭いと言う物から今のように触れた物からその持ち主の残留思念が見えるのだ。それを用いて村でも探し物や形見の品、果てには行方不明の人間の捜索等を行っていた。


「見つけてくださりますか?」由紀が不安げな表情で言う。


「最善は尽くします、ですが最近帝都を賑わす怪死事件もありますので覚悟はして下さい。」


楓が由紀の瞳を見つめて問う。


「はい、どうかよろしくお願い致します。」


由紀は深々と頭を下げ帰って行った。


「さてと先生は明日しか帰って来れないけど、その間に事態が悪くなるかも知れない。今回は私1人でやろう」楓は身支度を整えると探偵事務所を出た。


紫の残滓を追って楓は駅の付近まで来ていた。


「この大通りじゃあ分かりづらいな」楓が何とか紫の残滓を追っている時だった。


突如楓の身体が震え出す、これは前にも経験したことがある先生が何時も相対する異形の者達と同じ気配。まるで極寒の雪の中を裸で放り出されかのような寒気。


楓は強張った顔で恐る恐る気配の出所を見る。


丁度駅の改札口1人の少年が立っていた、無造作さな漆黒の黒髪と冷徹で冷たくも鋭い瞳、左目は怪我をしているのか黒い布製の眼帯で覆っている。


服装はも異様だ煤竹色(くすんだくろ)のシャツの上に

赤黒く汚れた外套を羽織っている。そして下には暗い赤の袴を履いている。


だがその中でも一際目を引くのが胸から首に掛けて巻かれた包帯と腰に差した漆黒の鞘の刀だった。


その刀からは数多の邪念が漏れ出していた。


楓が怯えながら見るとその少年もゆらりとこちらを向く。少年の目には暗い憎悪と哀しみが写っていた。


楓は直ぐに目を逸らし少年を避ける様に雑踏へと消えていった。


「あの小娘どうやら半妖のようね」


「俺の気配を感じとっていたな、どうする追うか?」


少年が1人で誰かと会話を交わす。


「今はほっときましょう、それより最近帝都で噂の怪事件を追った方がいいわよ無門」


無門は1人頷くと改札口を出る。


「ああ、この帝都に奴が居るはずだからな」


無門は形見の夜鷹を握り締め呟く。


「必ずお前を殺す昼膳」


「又あの女の事か忘れないでよ貴方は私の物なんだから」脳内で囁くルカの声を聞きながら。鬼沙羅無門は帝都へと降り立った。


第2話 完


第3話に続く。


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