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第1話「因果は巡る」

「これでお主の命運も尽きたな」1人の武士が眼前の者に刃を突き付ける、周囲には無残にも引き裂かれた町人や武士が散乱し今居る京の都も燃え盛っていた。


「おのれぇ、鬼の長であるこの酒吞童子がただの人間如きに不覚を取るとは」そう呟きこの地獄を作り出した元凶大妖怪酒吞童子は今自らに刃を突きつける武士を睨見つける。


「鬼沙羅(きさら)!今すぐ其奴を斬れ!」腕が千切れ掛けながらも立ち上がる位の高い武士が叫ぶ。


「そうかお前の名は鬼沙羅と言うのかククク、アハハハ鬼の名を持つ者に斬られるとは因果なものよな」酒吞童子が高笑いを上げる最中鬼沙羅と呼ばれた武士が横薙ぎに一閃する。酒吞童子の首が宙を舞い地面に叩きつけられる。


「やったのか!?でかしたぞ!」位の高い武士が鬼沙羅に近づく瞬間跳ねられた酒吞童子の首が再び宙を舞い武士に噛みつこうと飛んでくる。


「頼光様!」直ぐに鬼沙羅が武士を庇い腕を出す、そして酒吞童子の牙が鬼沙羅の腕を捕らえる。ミシミシと骨が軋み凄まじい激痛の中鬼沙羅は酒吞童子の脳天に愛刀を突き刺す。酒吞童子は力尽き牙が剥がれ落ちる。


「鬼沙羅!無事か!?」頼光が自らの傷の痛みもそっちのけで鬼沙羅に駆け寄る。


「焼けるような痛みと骨が逝っておりますが問題はありません」鬼沙羅が立ち上がり酒吞童子にトドメを刺すべく近づく。


「これが儂の最後の抵抗よ、お前には我が血が入った未来永劫お前の一族が滅ぶその時まで我が酒吞の呪血が蝕み続けるであろうアハハハ!」その言葉を最後に酒吞童子は討伐された。


700年後、、、


「無門止めなよ大人達に怒られるよ!」


「お堂には祭事の時以外入っちゃいけないんだよ!」


古いお堂の前で複数の子供達が集まり騒いでいた、無門と呼ばれた少年が後ろの友達の静止も聞かずお堂の扉を開けようとしていた。


「別に良いじゃないか!お前等も来いよ!」無門は必死に制止する友人達を笑い飛ばしながら扉の閂を外す。ゴトン!と大きな音を立てながら閂が外れる。


そして古い木製の扉に手を押し当てる、扉はギィィィと軋む音共に開かれる。


「無門戻って来いよ!」友人達の言葉を聞き流し無門は暗いお堂に一歩脚を踏み入れる。


突然生暖かい空気が身体を包む、なんとも言えない嫌な空気とお堂の奥から嗅いだことの無い御香の様な匂いが脳を直接貫く。「う、何だこれ?」無門は意識を保つ事が出来ず倒れ込む。


「無門!無門が!」


「誰か大人を呼んできて!」友人達が慌てた様子で里の方へと走って行く。意識が朦朧とする中お堂の暗がりから微かに少女の笑い声が聞こえる。だがそれを確かめるよりも前に無門の意識が遠のいていった。


「う、あれここは?」目を覚ますと見慣れた天井と梁があった。


「無門!」声のする方を見ると心配そうな表情を浮かべた女性が土間に居た。


「母さん?ここは家?」無門が起き上がるといつのまにか家へと運ばれていた。


「この馬鹿!一体どれだけ心配したと思うんだい!」


母さんが土間から上がるなり無門を抱きしめる。何時もの母さんの匂いがして無門の目頭が熱くなる。


「ごめんなさい、ごめんなさい母さん!」泣きじゃくる無門を母さんは優しく包み込む。


「あのお堂には行っちゃいけないの、あそこには大昔のご先祖様が封印した悪い化物が居るんだから。あの子達が教えてくれたから良かったけどもし貴方1人だったらと思うと」母さんも震え声で言う。


「ごめんなさいもう絶対に母さんを心配させないから」


無門が言うと母さんが優しく微笑む。


「お腹減ってるでしょ?早くご飯食べて明日のお祭りの準備をしにいきましょう。お父さんを持たせちゃいけないから」無門は頷くと母と共にする最後の夕食を食べた。


「父さん、ごめんなさい」村の中央で櫓を建てる男衆の1人に声を掛ける無門、「無門!お前怪我はないのか!?」すると1人の男性が無門に近付き持ち上げる。


「わぁ!父さんごめんなさい俺お堂に入ったんだ!」


無門の謝罪を聞きながら父さんが笑い飛ばす。


「何だそんな事か、心配するな俺もよく忍び込んでばあちゃんに大目玉食らってたからよ逆にお前は俺に似て元気で良かったぜ!」父さんは無門を肩車しながら笑う。


「もうあんたがそうやって無門を甘やかすから、私の心労が消えないんだよ?」母さんが父さんに悪態を突く。


「悪い、悪い、お前にも苦労ばかり掛けちまうな」その親子のやり取りを見て周りの村人達も笑う。


「まぁた、亜門(あもん)の奴が千里(ちさと)に怒られてんのか!」


「千里ちゃんも気苦労が絶えないわね」


「おい、喜助!後で覚えてろよ!そこの婆さん方ももうすぐポックリ逝っちまうんだから人の心配より自分の心配をしてろよ!」亜門が言い返すとあちこち等から野次が飛ぶそして亜門は無門を降ろし千里に預けると、野次を飛ばす男衆に突っ込んで行った。


「喧嘩だ喧嘩だ!祭り前の余興にはちょうどいい!」


「亜門!久しぶりに暴れようぜ!」


里全体が活気に溢れ喧嘩が始まる中千里は呆れた顔で無門を連れて女衆と子供達がいる方へと向かった。


「乾杯!今年の前夜祭は大いに盛り上がった!」


里の村長の屋敷は大きな宴会場と化していた、男衆は傷だらけになりながらもさっきまで殴り合っていた者同士酒を注ぎ合いながら親睦を深めていた。女衆はバタバタと酒と料理を運びやぜがらみしてくる酔っ払いには酒瓶で応えていた。


「しかし無門も昔の亜門と同じやんちゃ小僧になってきたな」隣に住む喜助が話て来た。


「良いじゃねえかそれでこそ俺の息子だぜ!」亜門は自らの膝に座らせた無門を撫でながら上機嫌に答える。


「父さん毎年ある祭事ってなんのお祭りなの?」無門が聞くと隣の喜助が答える。


「知らねえのかい?それじゃあおじちゃんが教えてやるよ」喜助が酒で真っ赤になった顔で語る。


今から700年前京の都を荒らしていた妖怪が居た、名を「酒吞童子」、鬼の棟梁として鬼の軍勢を率いて京の都に進軍してきた都は燃え盛り町人は鬼達に食われ蹂躙、武士ですら刃が立たず帝にまで危機が迫っていた。


そんな時に「源頼光」率いる軍勢と、京の都の守護に当たっていた陰陽寮から平安最強と名高い陰陽師「安倍晴明」が共闘し鬼の軍勢に立ち向かった。双方多大な犠牲を出しながら遂に鬼の総大将酒吞童子を討伐する事が出来た。


その時に酒吞童子を仕留めた者の名は「鬼沙羅(きさら)右京」(うきょう)無名の怪異狩りの男だった。酒吞童子の首を跳ね安堵したのも束の間、突如斬り落とされた酒吞童子の首が舞い源頼光に襲いかかるその際主人を庇い手傷を負った鬼沙羅右京は酒吞童子により呪いを掛けられる。


呪いの名は「酒吞の呪血」鬼沙羅右京は人の身でありながら鬼の血を引く半妖となった。やがて右京は猛烈な渇きに襲われこのままでは自らが忌まわしき鬼になると悟った。右京は京の都で英雄としての名声と地位を捨て自らを慕う仲間数人を連れて都を去った。


そして、現在鬼沙羅右京の末裔である我ら鬼沙羅一族は代々酒吞の呪血の呪いを抑えるためと、先祖達の供養の為に毎年こうやって祭事を行っている。


喜助の話が終わり無門が目を輝かせる。


「それじゃあ俺にも父さん母さん、おじちゃんにも鬼の血が流れているの?」


「そうさ、まあ長い年月とご先祖様達の尽力のお陰で血は薄まり、今では普通の奴等より力が強かったり身体が頑丈なくらいで鬼の力なんてのは使えねえけどな」


「それじゃああのお堂に封印されているのはその悪い鬼なの?」無門が聞くと父と喜助が首を傾げる。


「それが俺達も知らねえんだよ」


「お前もか喜助?俺もお袋と親父に近づくなと言われていたんだが、何が封印されているのかは知らなえんだよ」あのお堂で感じた嫌な気配と強烈な御香の匂い、そして微かに聞こえた少女の声、無門は頭から考えるのを辞めて宴会を楽しんだ。


祭事当日

「これより清めの儀式を行う」村長の名乗りと共に正装した亜門が舞台に上がる腰には鬼沙羅一族に伝わる銘刀「夜鷹(よだか)」を携えていた。


亜門は静かに立ち待つ、「それでは鬼沙羅一刀流師範、鬼沙羅亜門始めよ!」村長の合図と同時に亜門が抜刀する、刀は美しい輝きを放ちそれを振るう亜門の剣閃も達人だった。「ハっ!」最後に両断の型を終え鬼沙羅一刀流の殺陣が終わった。


「相変わらず見惚れちまうなぁ、当代の男衆でもアイツには敵わねえよ」周囲の観客から感嘆の声が上がる。


「母さん顔が赤いよ」亜門の殺陣に見惚れていた千里に無門が言う。


「え?ああ、何もないよそれじゃあ儀式も終わったし父さんの所に行こうか」二人は亜門と合流し村の中央へと向かった。


広場では中央の櫓を中心に老若男女問わずに酒を飲んだり踊りを踊っていた。


「無門!一緒に踊ろうよ!」近所の友人達も無門を誘ってくれる。


「行ってきなさい無門」


「ああ、俺と母さんは逢瀬でもしてるからよ」


千里に叩かれる亜門を見ながら無門は子供達の輪に入った。


「無門のお父さんカッコよかったね」


「俺もいつか剣術を極めたいよ」


子供達が口々に言う、友達からの父への賛辞を聞き無門も嬉しそうに笑っていた。


「あの人達誰だろう?」子供の一人が広場の入口を見ると白い狐の面を付けた者達が入って来た。


「私もあれ欲しいな貰ってくる!」


少女の一人が仮面の者達の方へと向かう。


「おじちゃん、そのお面何処でもらえるの?」少女が無邪気な笑顔で聞く。


「、、、、」男は無言のまま少女の方を向く。


「おじちゃん?」少女が再度聞くと腰に差していた刀を抜刀し少女に斬りつけた。少女の首が宙を舞い小さな身体から血が噴水の様に噴き出す。


「何だお前達は!男衆斬れ!」お祭りの楽しい雰囲気から一転して騒ぎが広がる。男衆達が腰に差していた刀を抜刀し仮面の者達に斬りかかる。


仮面の者達はたちまち斬り倒され倒れ伏す。


「こいつら何者だ?仮面を剥げ!」男衆の一人が仮面を剥ぐと。


「喜助?お前喜助じゃないか!」それは昨日まで楽しく酒を酌み交わした男衆達だった。皆目が虚ろで生気の感じられない無の表情のまま息絶えていた。


「何で、どういう事何だ!」男衆が嘆いていると村の入口から祭囃子が聞こえる。


「無門!逃げようよ!」無門も急ぎ隠れる、息を潜めながら広場を見る。


その間にも祭囃子が大きくなる、「あれは、ウワァァァァ!」男衆の悲鳴と共に異形の怪物達が現れる。


「物の怪だ!皆剣を抜け!」号令と共に一斉にに抜刀する、広場の提灯に照らされ異形の怪物達が姿を現す。


男衆は皆果敢に挑んだが圧倒的な物量と力により蹂躙される、そして隠れていた村人達の悲鳴が響き渡る。


1人また1人と襲われ続け広場は魑魅魍魎達の狂宴の場と化していた。生きたまま手足を引き裂かれ泣き叫ぶ男衆、腹の子供を引き出される女、そして生きたまま丸呑みされる友人達。この世の地獄が溢れかえっていた。


母さん、父さん!助けて!亜門が心の中で祈っていたのだが。


「スン、スン、美味そうな鬼の子の匂いがするなぁ!」


次の瞬間無門の隠れていた納屋の扉が壊され、毛むくじゃらの腕が無門の脚を掴み引き摺り出す。


「美味そうな獲物だ俺に寄越せ!」


「馬鹿言え!俺が先に見つけたんだぞ!」


無門の身体を振り回しながら化物達が取り合う。


「おい!その子供はあのお方の供物にするんだぞ!」


人型の怪物の制止を受け他の化物達が黙る。そして無門は村の櫓の前に連れて行かれる。


「離せゆ!母さんは何処だ!父さんは!皆はどうしたんだ!」無門が押さえつけられた状態で必死に叫ぶ。


「お前の仲間は皆食っちまったよ!ホラ見てみろよ!」


一匹の化物が無門を立たせ広場の端を見せる、其処には山積みになった村人達の亡骸と女衆が生きたまま解体されていた。


亜門はその光景を見て嘔吐する。


「痛い!痛いぃィィ!止めて!早く殺して!」


「アハハハ!皆死ぬんだアハ、アハハハ!」女衆達は目の前の恐怖と痛みに耐え兼ねて狂乱していた。


そして、怪物が持ち上げた生首を見て無門が絶句した。

それはさっきまで側に居た千里の生首だった。


「う、ウワァァァァ!母さん!母さん!」


無門は狂乱しながら泣き叫ぶ。その姿を見て化物達も高らかに笑う。


「お前も直ぐに連れていってやるよ」化物達の嘲りを聞き無門が鬼の形相になる。


「殺してやる!お前等全員絶対に殺す!」


シャラン、シャラン、シャラン、広場の入口から鈴の音色が聞こえるその音が響くとさっきまで高らかに笑う化物達が黙り込む、よく見ると皆顔が引きつりこれから来るものに恐怖心を抱いているのが見て取れた。


シャラン、シャラン、鈴の音色と共に一直線に化物が整列し提灯を持つ、鈴の音色が近づくにつれ提灯に火が灯る。そして無門の前に鈴の主が現れる。


「ほう、これはこれはとても愛らしくも美味そうな子供じゃな」その声は地の底から響く声で人間のそれとは違った。


「面を上げよ小僧」顔を上げると白い狐の面が覗いていた。


「お前が、お前がこれをやったのか!」無門が泣き叫びながら問う。


「随分と威勢の良い小僧よな、今からお前は妾の贄となる」そう言うと狐面のそれは無門の首を掴むと持ち上げる。


「う、ぐ!」無門は必死に抵抗するが尋常じゃならざる力で離すことができない。


「活きが良いのは褒めてやろう、さあお前の血であの悪魔を蘇らせよう!」ここで死ぬのか、無門が諦めかけたその時だった。


「俺の息子に触れんじゃねえ!」死体の山から亜門が飛び出し狐面の化物に斬りつける。亜門の刃は狐面を捕らえ仮面が斜めに割れる。


「・・・・見事」


そう言うと狐面の化物は胸元から鉄扇を出し亜門の体を横薙ぎに切り裂いた。


亜門の体は二つに分かれ崩れた。


「妾の面に傷を付けるとは中々やるではないか」狐面を外しそいつは素顔を見せる。


白銀の髪にピンと出た狐耳、花魁の様に着崩した赤と黒を基調とした豪華な着物、そして妖艶な顔立ちと獣の様に縦に割れた美しい黄金の瞳。


仮面の下からこの世の者とは思えない美女が現れた。


「殺してやる!絶対にお前を殺す!」無門を皆がら女が艶のある笑みを浮かべる。


「妾の素顔を見ても落ちぬ物が居るとはな、まあよい余興としては楽しませてもらったぞ。」

女が顔を近づけ無門に言う。


「良いか覚えておけ小僧、妾の名は昼膳(ひるぜん)物の怪の王にして百鬼夜行の主じゃ、お前が生きて居れば妾を殺しに来い。」


その言葉と同時に無門の脇腹に激痛が走る、見ると昼膳の鋭い爪が突き立てられていた。爪を引き抜くと無門の身体を無造作に投げ捨てる。


「それではな鬼の小僧よ、妾好みの良い男になれよ」


その言葉を最後に無門は意識を失った。


「フフ、ハハハ!これで終わりなの?つまらない実につまらないはさぁ起きてまだゲームは終わってないわよ?」無門の脳内に声が響き目が覚める。


強烈な脇腹の痛みと共に周りの地獄の様な惨状が目に入る。 


無門の傍らには刀を握り締めた腕だけが残されていて、父の身体のあった場所には血溜まりと肉片のついた骨だけが残されていた。


「父さん、母さん、皆」無門は激痛の中父の刀を取ると歩き出した。


「私はあの場所で待ってる、早く来て待つのは嫌いなの」再び声が響き導かれるようにあのお堂に向かう。


お堂に着くと扉が壊され中も荒らされていた。


だが無門は真っ直ぐお堂の奥に進む、入ったことは無いのに何故か声の主の場所が分かる気がする。


奥に進むと地下に続く隠し扉を見つけた。開けると地下に続く石造りの階段があった。


無門が一歩おりようとすると脚を滑らせ地下室へと落ちていった。「ここまで、、か」無門の激痛が全身に回る骨が砕け内臓に突き刺さり動けない。地下室は石造りになっていて何も置かれていない殺風景な場所だった。


だが部屋の中央には見たことの無い五芒星に円を描いた様な模様が刻まれていた。


無門の身体から流れ出た血が広がり五芒星の方へと流れていく。ドクン、ドクン、部屋中に心臓の胎動に似た音が響く。


見ると無門から流れ出た血が全て五芒星に吸われていく。ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。胎動と共に五芒星が赤く光出す。そして凄まじい光共に五芒星の中心に誰かが立っていた。


深紅のロングヘアーに漆黒のゴシックロリータドレス、陶器のように白い肌と西洋の人形の様に美しい顔。そしてあの女と同じ金色に輝く獣の瞳。この世の美を詰め込んだ様な可憐な少女が立っていた。


「貴方が私の封印を解いたの?」少女がコツン、コツンとブーツの音を立てながら近づく。


「お前は、、誰だ、、」無門が息絶え絶えに言うと少女の天使の様な無垢な顔が邪悪に歪み高笑いを上げる。


「アハハハ!滑稽、滑稽ね貴方そんな状態で私を呼び出すなんて本当に馬鹿ね!」少女は無門の髪を掴み持ち上げると無門の顔を見る。


「自己紹介がまだよね私の名は「ルカ」太古の昔お前ら鬼沙羅一族に葬られた悪魔、死にゆく貴方を看取る者よ」無門は力なく答える。


「俺はもう直ぐ死ぬ」それを聞きルカが馬鹿にしたように答える。


「ええ、そうね私がここに呼んでおいて申し訳無いけどこのままじゃ貴方は死ぬは」


「俺はまだ死にたくない」無門が歯を食いしばりながら言う。


「人間は何時も自分勝手ね、避けられない死から逃れようと神や私の様な悪魔に縋り付く。結局貴方もそんなつまらない人間と同じなのね」ルカが冷めた表情で小言を言う。


「俺はあの女を殺せればそれでいい!その為なら何でも差し出す!」無門の言葉を聞きルカの表情が変わる。


「フーン、今の言葉嘘じゃないのね?」


「え?」


「貴方は自分の為に生き残りたいんじゃなく、復讐の為に生き残りたいんでしょ?」ルカが真剣な眼差しで無門の目を見る。


「嘘じゃない、俺に差し出せる物は全て差し出すだからアイツを昼膳を殺す力が欲しい!」


無門の瞳につ映る深い憎悪と憎しみの色を見たルカの顔が恍惚に歪む。


「良い、良いわねその表情久しぶりに濡れてきちゃった♡」ルカは手を離すと無門に問う。


「本当に全てを捧げるのね?身も心も貴方の全てを捧げる覚悟があるのね?」


ルカの最終確認を聞き無門も迷わず答える。


「ああ、お前が何者かなんてどうでもいい俺は鬼沙羅一族を滅ぼした物の怪の王昼膳を殺したい!その為なら俺の全てを捧げる!だから力をくれ!」


「契約成立今日から貴方は私のものよ」


そう言うとルカは無門の身体を持ち上げ胸を貫く。


「ぐ、ガハ!」ルカは無門の心臓を引き抜くとそれを丸呑みにする。


「おやすみ次目覚めた時貴方は生まれ変わる」


ルカの声を最後に再び無門は静かに眠りについた。


「無門逃げて!」


「俺の息子を離せ!」


無門の目にあの光景が鮮明に写し出されていた。


父さん!母さん!皆!化物に引き裂かれていく同胞達の元へと走ろうとするが。


「何処へ行くんじゃ?お前はもう妾の贄逃がしはせぬぞ」昼膳が狐面をズラしながらこちらに立ち塞がる。


「殺してやる!」無門が立ち向かおうとするが腹部の激痛で倒れ込む。


「お前は無力だ小僧、お前には何も残らぬそこで大人しく見ておれ」昼膳の高笑いと共に無門が声を上げる。


「昼膳!」目が覚めるとルカの顔が目の前に写った。


「私が居るのに他の女の名前を呼ぶなんて失礼しちゃう」ルカが少し不機嫌そうに言う。


「俺は生きて居るのか?」無門はルカに膝枕をされた状態で身体をまさぐる。


「全部治っているよ君は私と契約したからね」


起き上がってみると傷が塞がっていた。


「私と契約した事で貴方の身体には私の魔力が流れている、そのお陰で貴方は不死身の体を得たの」その言葉を聞き無門は貫かれた胸を見る。するとそこには黒い何かの紋章が刻まれていて首の方まで伸びていた。


「それは悪魔の紋章私との契約の証、そしてもう一つ」


ルカが鏡を作り出し見せる。それを見た無門の顔が強張る彼の左目は真紅に染まった赫眼になっていたのだ。


「それは貴方の身体に流れる鬼の血と私の魔力が混ざりあって発現したもの、それを貴方達の先祖は鬼の目と呼んでいたは」鬼の力と不死身の力アイツを殺すには十分な力だ。


「そう言えば貴方の名前を教えて」ルカが無門に問う。


「鬼沙羅無門だ」そう言うと無門は立ち上がる。


「それじゃあ無門、貴方の目的を教えて」


「一族の仇を殺す来てくれるかルカ?」


ルカは笑みを浮かべながら言う。


「貴方はもう私の物よ貴方の復讐の果てを特等席で見届けて上げる。」二人は手を取り合うと地下室を後にした。


こうして少年は宿敵を討つべく復讐の旅へと出た。


第1話 完




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