46ページ
一度区切って息を整え、内容を話し始める。
「まずこの伝承の鍵として、男の子と女の子がいるの。女の子は天狗。男の子の方は人間だったの」
そこまで言うと周囲に家屋が広がり、そのうちの一軒の前で二人が遊んでいた。
「な…何事?」
「不惑、気にしないでいいよ。少しずつ直っていく兆候みたいなものだから。風花ちゃん、続けて」
その言葉に促されて続きを口にする。
「その頃は、人間と天狗、その両方が等しく共存していたの。当然いわゆる種族間の争いとか軋轢なんかも無かった」
家屋がもう少し増え、人間と天狗が一緒に農作業をしたり、談笑をしたりしている。何とも普通の、日常に見える。
「けれど、その両方の間には暗黙の了解とも言えるべき掟があったの。お互いに、干渉しすぎないっていう、ね」
「…どういう事?」
雪ちゃんの疑問に疾風が答える。
「…恐らく混血を恐れたのだろう。それぞれの種族は共同的に何かを行いはするものの、恋情的な間柄になってはいけないというな。だからこそ互いの種族は純血だった」
その答えがあれば合点がいく。この周りの情景を見るに、早くて奈良時代、遅くとも平安時代だろう。親しく接せたとはいえ、神に等しいものと交わるのは禁忌もいいところだったのだろう。
「ところが、その二人は愛し合っていた。故に体を重ねて、遂にはその女の子は子供を孕んでしまった」
空に暗雲が立ち込め、雨が降り出す。それと同時、何故かリカッサも地面から三体ほど湧いて出た。いらんっちゅーに。
「不惑、雪、第二関門いくよ!」
要が突っ込んでいくのを銃でサポートしていく。
「ゴガガゴァァ!」
不意に現れた一体のタックルに要が散り屑の様に吹き飛んでいく。
「要!」
姿勢を直される前にそいつの足元を居合で切断して重心を不安定にさせておく。これで多少に時間稼ぎにはなるはずだ
「平気か、くたばったりしてないよな!」
「…っ!平気…まだ行けるよ!」
口の中の血を吐き捨て、再び攻め込む。銃でこっちも牽制しているから多少は攻めやすそうだが、いまいち決め手に欠いている感じが否めない。と、不意に現れた一体が要の横を狙ってる。なのにあいつは気付いていない―?
「要!左に一体いる!」
割り込む形で居合?それとも銃で遠距離?ダメだ、どれも間に合わない!
「…疾風よ、走れ」
風が吹いたのは一瞬。だがその一瞬のおかげで狙っていたそいつは吹き飛ばされた。
「サポート感謝!」
元の狙いに目を向け、振り下ろされた拳を避けてその腕を上って一気に飛び上がる。
「消えて!」
首元をV字に切り裂き、そいつは終了。さて、こっちも片付けなきゃな。
「悪いけど、そろそろ舞台から飛び降り自殺してくれよ」
拳の乱打や薙ぎ払いを紙一重で回避して間合いに入る。柄に手を当て、躊躇いなく一閃で切り裂いて消し去る。
「雪、そっちは平気?」
「うん。一体いたけど、小型だったから特に問題無かったよ」
「よかった。この後も敵が出てくるかもしれないから気をつけてね。じゃ、続きをお願いね」




