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「来やがったな」
持っていた銃の安全装置を外す。照準を合わせて引き金を引く。砲身から飛び出た弾丸は一瞬でその靄を打ち破った。
「さて、どう出るかな」
ダブルアクションの利点を生かしてもう一発を撃ち込んでおく。銃弾に貫かれて苦悶の声を上げる。靄が徐々に形を成していき、巨人の姿に形成される。
「おーおー。マジな感じな状態っぽいな」
「普通こんな状態に初めてなったら動揺とかして余裕が無くなるはずなんだけど…」
呆れた様に溜息を吐く五十嵐さんに、リカッサを睨んだままで答える。
「だってこんなに面白い状態だぜ?緊張したらもったいないじゃねえかよ」
今にも笑いだしそうなのを必死で堪える。命がけほど面白いものは無い。そう常に自負してる自分にとってはこんなことが起こるのをずっと待っていた。めんどくさがりな自分が、これほど楽しいと思ったのは初めてだ。
「さぁ、どんどん楽しんでいこうぜ!」
今ある銃弾が無くなるまで撃ち込んでいく。リカッサの動きは緩慢で、銃弾の速度に敵う事無く被弾していく。
「ねぇ、要。いくらクライムの制御下とはいえ、こんなワンサイドゲームみたいになるものかしら…」
「…ボクにも、流石に異常に見えるね。ある意味、スイッチが入った状態?」
疑問を浮かべる二人と対象的に不惑は順調に攻めていた。
「これで終わっちゃ、つまらないで終わっちゃうぜ?」
そう言った瞬間、リカッサの動きが変わった。開けられていた間合いが詰められ、拳が振り上げられる。
「ヤベッ…」
―避けるんなら、左じゃなくて右の方がいいかもよ
ふと脳裏に浮かんだ言葉に従って右に全力で飛び込む。飛び込んだ直後、元いた場所には陥没するほどの勢いで拳が叩き込まれた。前転の要領で姿勢を直して剣の柄に手を当てる。
「こいつで詰み将棋だ」
一気に居合で振り抜くと、刹那の剣閃を残してリカッサの姿が消え去っていった。刀身を払ってから鞘へと納める。
「いやー、お見事」
パチパチと拍手を送る要に口角を上げる。
「こいつだけでいいのか?」
「充分。明日のはハードだからこのぐらいでってのもあるしね」
そこまで言ったところで視界が歪み、元の控室もどきに戻ってきた。
「さてと、今日この時間を持って、遠藤不惑を正式に迎え入れる。ようこそ」
「堅苦しいな…。大したことじゃねえだろ」
そう言うと要は肩を、困ったような表情を見せた。
「前にも言ったけど、人手不足だからね。手は多い方が助かる」
「多くなりすぎて絡まるなよ」
そう皮肉るといつもの苦笑いで誤魔化された。
「じゃ、問題は明日。朝の九時に学校の屋上ね。非常階段の鍵は開けておくから安心していいよ」
用件を言うだけ言ってとっとと出ていってしまった。忙しい奴である。
「私たちもそろそろ戻しましょう」
その言葉に頷き、残された二人で、店内へと戻る。するとなるべくなら顔を合わせたくない人物とはち合わせてしまった。




