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死なないだけで相当ダメージはある。まだ立てない彼女に手を貸して立たせてあげる。
「いいわ。少し認めてあげる。けど、凌は私のものだから」
「おいおい、俺は野郎には興味無いぞ」
どこか間違えている彼女に苦笑いを零す。
「クライム、もう平気よ」
そう言うと、元の部屋へと戻ってくる。
「それじゃ、明後日は死なないようにね」
「それはお互い様ってことだ。じゃ、これで失礼」
そのまま身を翻す。そこでふと気が付いた。
「……帰り道どうだっけ」
「…林さん、いる?」
「何か御用ですか、お嬢様」
溜息を吐いてから外に呼びかけると当然の様に人が入ってきた。一体何人雇っているんだろうか。
「この人を家に送ってあげて。凌の友達だから丁寧にね」
「かしこまりました」
促されてそのまま着いていく。帰ると、腹が減ってるにも関わらず食べる気力が湧かなかったからそのまま夢の中へと飛び込んでいった。
ピリリリ、ピリリリ
「もしもし」
不惑…凌の友達が帰った少し後、凌から電話がかかってきた。
『どうだった?ボクの言ってたこと、少しは分かった?』
ああ、やっぱり敵わないと思いながらも答える。
「うん。ホントにすごいね。…でも、凌は不思議に思わない?」
『って言うと?』
空とぼけたような言葉に嘆息して言葉を続ける。
「私たちの仲間の誰を取ってみても武器を二つ使える人はいなかった。加えてあの戦闘技術、ついでに即席で組み立てる作戦」
『まあね。それに関してはボクも同感』
明らかな違和感に凌も同意。何より一番気になることは―
「昨日まで一般市民だった人にあそこまで出来るとは、なかなか思えないよ」
『――』
電話越しでも凌が息を呑むのを感じる。大分前に聞いたことがあった。どんなイタズラでも、実行に移していたのは彼と聞いていたから。
「…彼は一体何なの?」
『それは―ボクにもわからない。ただ、友人としてはいい奴だよ。他人のために自分が犠牲になるなんて、ざらにあるからね』
「…それはさっき手合わせしてみて分かった気がするけど…」
どれだけ強気に言っても態度を変えず、他人を気遣う。
『だからね』
どこか決めたように息を吸い、
『あいつにどんな秘密があったとしても、親友として、信じ続けるよ。あいつはあいつだってね』
呆れるほど単純だけど、不思議と悪い気はしない。知らずの内に零れていた笑みの上に更に笑みを浮かべる。
「何か…知り合えて良かったかも」
『それは何より』
電話越しの苦笑いが伝わってくる。
「…凌」
『どうかした?』
「―ううん、何でもない。ちょっと気になったけど憶測で話すのは止めとく」
『…そっか。あんまり一人で気負ったり悩まないでね。ボクもいるんだから』
「ありがと。それじゃ、またね」
『うん、じゃあね~』
それを合図に通話を切る。
「凌だって暖かいのに…。謙遜するなんてもったいない」
でも惚れた弱みか、それすら愛しい。電話後の余韻は嫌いではない。
「…遠藤不惑…か」
謎のベール―出会って間もないから当然だが―に包まれた彼の生活。知らないことは納得行かないのが自分の性だ。
「時間は…まだあるかな」
呟いてからケータイを開く。電話帳から取り出したアドレスに一件のメールを送る。
「これでよし…」
明日の午後にでもなれば情報が来るだろう。
「…もうこんな時間だし…寝よ」
時計は十時を示している。健康を保つのは何よりも大切なことだ。そう思い、ベッドへと潜り込んだ。




