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「…は―…。どいつもこいつも喧嘩っ早いたらありゃしねえな」


 口調すら変わった彼女の眼は本気だ。なら、引きうけない方が野暮だ。


「全く…。場所提供するこっちの身にもなってよね」


 嘆息してから指を鳴らすと、先ほど要を闘ったのと同じような場所にいた。


「時間は無制限。武器は何でも使用していい。知っての通りこの世界には死の概念が無いから」

「了解。細かいことはまぁどうでもいいや」


 教えてもらった通り想像して手を振ると、そこにはさっき使った剣と銃が懐にあった。剣を腰のベルトに差し、銃をしまう。


「じゃあ…開始」


 緩慢な動きで走ってくるのに対して迎撃の姿勢を取るべく柄に手をかけた瞬間、体が吹き飛んだ。


「相手に分かりやすい動きは愚かよ」

「チッ…」


 困ったことに飛んだ状態から体制を直すのは未だに出来ない。最悪視界だけでもと思った瞬間、落下中の腹部に衝撃が走った。


「ガハッ…!」

「この程度なのに、何で凌はこの人を評価してるの…?」


 起き上がる時に何とか姿勢を直して姿を捉えると、拳を振り抜いた姿勢のままそこにいた。手元を見てみるとさっきまでは無かったグローブがあるからあれが武器なのだろう。


「最接近戦相手かよ…。武器使うの気が引けるな」


 そもそも相手が女だ。一般の気持ちとして手荒なまねはしたくない。


「でもまぁ、やってみるか」

「…来ないならこっちから!」


 その場で拳を振り抜く。それに悪寒を覚え横に飛ぶと、さっきまでいた場所を何かが通り抜けた。


「えっと…拳圧?」

「正解」


 淡白に答えが来て再び拳圧が飛んでくる。それに銃撃してみると、甲高い音を立てて相殺された。


「威力はお墨付きってわけか」


 さっきの不意打ちの種も分かった。大方柄に触れた瞬間に拳圧で飛ばして、一気に距離を詰めて殴ったのだろう。


「武器が二つ…?」


 クライム同様に疑問符を浮かべる。その隙に銃を連射する。さばき切れないと見て迎撃を捨て回避に専念する。


「(なるほど、見切りが早い。この数だからな)」


 そう思いつつ連射のタイミングを崩す。一定で撃たれたものの調和が崩れたことにより何発か被弾する。


「大丈夫か!?」

「敵への心配なんて…侮辱!」


 銃口を見て一歩先の回避を取られる。何度も物語の世界に飛び込んだ経験からだろう。動きに無駄もムラも無い。だからこそ、策に掛かりやすい。


「そこ!」


 肉薄される。けど計算通りの動きだった。


「こいつで終いだ」


 足元に一発弾丸を撃ち込むと反射的に動きが止まった。それが詰み。


「ガハッ…!」


 上から降ってきた剣に身を貫かれ、五十嵐さんが倒れた。それを見て急いで剣を抜く。


「平気?」

「どう…して?」

「さっき飛ばされたときに剣を投げといたんだよ。手元にあったのは鞘だけ」


 ベルトの辺りを指差すと、そこには本当に鞘だけがある。真剣勝負で不意打ちみたいな真似はしたくなかったけど、このくらいしか思いつかなかったのが本音だ。


「…策士ね。即席でこんなこと出来るなんてね。凌の言ってたこと、少しわかったかも」

「…どんなこと言われてたんだよ…」


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